まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

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進撃の巨人 13巻 第54話-2 「反撃の場所----壁の上の交渉」

2014年05月04日 | 進撃の巨人


リヴァイ班は、拉致されたクリスタとエレンの囮の後を追って、誘拐事件の犯人をあぶり出し、捕まえた。
普段、巨人相手に戦っている調査兵団にかかれば、”普通の人間”は簡単なものだった。



犯人は、ここ「トロスト区」の流通を束ねる「リーブス商会」の会長ら3人だった。
当初リーブス商会の会長は、自分は下働きだととぼけたが、ミカサが会長の顔をよく覚えていた。
この男は、トロスト区に巨人がなだれこんで来たあの日、内壁への避難通路を自分の荷物で塞いで、ミカサに殺されかけた男であった。







リヴァイは、リーブス商会の会長一人を「交渉の場」へと連れて行った。
そこは「トロスト区」を一望出来る壁の上であった。会長の腰掛ける壁の下には、”あの日”巨人が壁に穴を開け、そしてエレンと兵達の犠牲で穴を塞いだ跡がはっきりと確認できた。



兵か指導者しか上がることの出来ない壁の上から街を一望した会長は、タバコを取り出して一服しながら言った。
「ここは俺の町だぞ?トロスト区前門、いや、元前門か。もしくは人類極南の最前線・・・あの世とこの世の境目。おっかねぇが稼げる・・・いい街だった。」
拉致した相手の親玉である、人類最強の兵士に連れてこらたのだ。会長は今まさに、あの世とこの世の境目に腰掛けている。

リヴァイも真っ直ぐに街に目を向けたまま、「俺達はこう呼んでいる。人類が初めて巨人に勝利した場所。そして・・・人類の無力さを証明する場所。巨人に空けられた穴を巨人の力で塞いだ。いろいろ試したが結局、人類じゃ到底及ばない話だったわけだ。もちろん巨人の力だけで塞いだわけじゃない、数多くの兵士が命を投げ出した。その他にも幾重にも重なる奇跡の連続で、あんたの街は今ここに、かろうじてある。
その奇跡がエレンだ、あんたが連れ去ろうとしたもんはそれだ。」
と言った。

眼下では、エレンが塞いだ穴の補強工事をする兵達と、壁周辺の警戒にあたる兵達がせわしなくうごめいていた。


会長は「説教は勘弁してくれねぇか、老いぼれの体に堪える」と飄々としていた。いつここから突き落とされても、拷問を受けて殺されてもおかしくない状況で、会長は取り乱すことはなかった。

リヴァイは会長の横に腰を下ろすと「中央憲兵との交渉内容と、あんたらの目的を知りたい」と本題を切り出した。
会長はリヴァイを見ずに街の方を向いたまま、「交渉?そんなものはない、命令されて従った。俺らの目的は『すべてを失わない為に命令に従う』だ」と答えた。

質問に対して簡潔な答えだったが、会長は言葉を続けた。
「しかし夜襲も拉致も失敗した。俺らリーブス商会は全財産を何らかの罪状で王政に没収され、従業員とその家族は路頭に迷う。おまけに俺と数人の部下は口封じの為に、事故にあって死ぬだろう。」

街の経済を左右する程の大物商人である会長は、自分の立場や、守るべきものすべき事、その結果がなんたるかがよくわかった、度胸の据わった男だった。その男が「一ついいこと教えてやるよ旦那、中央憲兵(やつら)は頭が悪い。普段巨人相手に殺し合いしてるような調査兵団(やつら)に、俺らチンピラが何とか出来るわけがねぇってんだ。バカだね、やつらは」と言って豪快に笑い飛ばした。
会長は、中央憲兵からこの命令が来た時点で、そこまで当然のこととしてわかっていたのだ。



リヴァイは、隣に座ってタバコをふかすこの男を見ながら、口を開いた。
「そんな馬鹿共に大人しく殺されていいのか、会長?」
これには会長も少し驚いて「あ?バカだが人類最高権力者共だ。お前らだって服すら着れないバカに食い殺されてんだろが」と言い返す。
リヴァイは「なるほど。だが俺らは巨人を殺すことも出来る。巨人と同じだ、どうせ死ぬなら試してみればいい。」とけしかけたが、会長は険しい目で「だめだ」と即答した。
「なぜ?」と聞くリヴァイに「失敗して死ぬ部下が増えるだけだ」と答えた。
今なら、自分と数人の部下の命だけで済む。
会長は、自分が実行犯になることで、大勢の部下の命を守る選択をする男である。部下の命は自分の命より優先されるべきものだ、試してみるなどという危険な賭けに部下達の命を懸けることは出来ないのだ。

だがリブァイは「気にするな、どの道同じだ」と、その心配を一蹴した。
「トロスト区・・・あんたの街は崩壊寸前だ。一時は巨人に占領されて壊滅状態、だがその割りにまた人がいる。それは壁の作業兵と、巨人襲撃に備える兵がいるからだが、そこにリーブス商会が、人と仕事を結びつけているのも大きい。しかし、このままではリーブス商会が消滅し、この街はとどめを指されて完全に機能しなくなる。その場合、路頭に迷うのはあんたの従業員だけでなく、兵士を除く街の住民すべてがその対象だ。一体何人が冬を越せるだろうな・・・、確かに憲兵に殺される方が楽かもしれん」

会長は忌々しそうにリヴァイの示す未来に同意した。
「ああ、そうなるだろうな。お前らがエレンとクリスタをよこさねぇせいで、人がゴマンと死ぬだろう。それで?この街の住民を餓死させねぇためなら、人類の奇跡をくれるってのか!?」とリヴァイにくってかかった。会長には、救ってやりたくても、試したくとも、兵士と違ってその選択肢も武器もないのだ。

気を荒げる会長にリヴァイは表情一つ変えずに「その通りだ。エレンとクリスタをお前らにやる」と断言した。




さずかにこれには会長は驚いて目を穂見開き、同時に後ろで聞いていた104期兵達も驚愕した。
自分達の任務は、エレンとクリスタの保護のはず!!!特にミカサは、エレンを手駒に使うチビのこの横暴な意見に我慢ならなかった。




しかしリヴァイは、そんな事に構わずに”3つの条件”を受け入れるよう会長に提示した。
「1つ、リーブス商会は今後調査兵団の傘下に入り、中央憲兵や王政、法に背くこととする。」


「2つ、リーブス商会は、調査兵団を心の底から信用すること」


”信用”という馬鹿げた言葉に、会長は歯を噛み締め両手の拳を握り締め、精一杯自分を抑えて反論した。
「信用だと・・?そりゃ俺ら商人の世界じゃ冗談を言う時にしか使われねぇ言葉だぞ?」

リヴァイは会長の目をしっかりと見ながら淡々と「商人?俺は今あんたと・・・、ディモ・リーブスと話をしている。あんたの生き方を聞いてるんだ。あんたはどんな奴だ?あんたの部下と街の住民を死なせて敗北するか、人類最高の権力を相手に戦うか。どうせ正解なんかわかりゃしねぇよ、あんたの好きな方を選べ」言った。リヴァイがいつも口にするリヴァイの信念である。



会長は頭のきれる男だ。この選択の答えを出す前に、最後の条件を聞いた。条件を全部聞かずに答えを出すなんてヘマはしない。
リヴァイは「おっと失礼した。3つ目だ。今後リーブス商会が入手した珍しい食材、嗜好品等は優先的に調査兵団に回せ。紅茶とかな。」と提示した。




これで決まりだった。
会長は、いやディモ・リーブスは目を閉じて「あんた商人よりも欲が深いらしい」と口元に小さな笑みにこぼすと、「気に入ったよ」と右手をリブゥイへ差し出した。
リヴァイも「あんたは頭がいい」と右手をリーブスに差し出し、二人の手はしっかと握られた。



交渉成立である。



エルヴィンがどこまでこの計画を練っていたのかはわからない。リヴァイがどこから、この計画を遂行していたのかもわからない。もしかすると54話の前半、リブァイが山からトロスト区へ下りる際に「合流場所」へ行くと言っていて、合流とは、リーブス商会との合流だったのかも??思ったりしました。

「進撃の巨人」の世界を一気に変えうる重要な「交渉」の場が、トロスト区を見渡す壁の上であった、というのはとても象徴的な風景だと思います。
この交渉には、”街の風景”が必要不可欠だったことが、じわじわ~と伝わってくる。

この壁が、初めて巨人の侵入を大きな敗北を許した壁であり、人類の第一歩を示す壁であり、あの世とこの世の堺であり、互いの信用の約束を結んだ場でもあり、物語の重要局面を支える壁なのだと思います。

この「交渉成立」の小さなうねりが、その後の大きなうねりを生み出し、未来を紡ぎだすことが出来た重要な局面でした。
部屋で大人しく待つエレンとクリスタの”記憶”が蘇るのも、ここの交渉が成功したことがきっかけとなっていく。

あの日、壁の穴の前で人々の命を軽く扱う強欲な男だと思われた会長は、話してみると、街を、街の人々の事を思う頭のきれる男だった。
彼は、ここに至るまでに何度も命を投げ出す覚悟が出来ている。
調査兵団と契約し、中央憲兵や王政を裏切ることは、いまだかつてない程ギリギリのラインでの、命の維持であることはわかっていたと思います。
命を懸けた会長の、その”命の使い方”の決断なのだ、と思います。

エルヴィン団長の交渉はその話の順が絶妙でしたが、リヴァイ兵長の”交渉”もまた、緩急と話の順番や言葉のチョイスが絶妙だと思います。
とはいえ、リヴァイが一瞬黙って、会長の言葉から会長の”人柄”を見抜いたその瞬間に、交渉は成立していたのだと思います。

あと、小柄だから若く見えるが、実はそこそこ歳をくっているリヴァイを「旦那」と呼ぶあたり、さすが大物商人です。
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