まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

漫画の絵とストーリーを、真空パウチするように書きとめました。
【ファイアパンチ】【カラダ探し】など

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亜人 ネタバレ 目次

2017年10月09日 | 亜人

【原作】三浦
【漫画】桜井画門
【連載】goodアフタヌーン

【ジャンル】残酷な世界で生きる、超人、殺人



FILE0:中村慎也事件

FILE01:発覚とその後の行動について
FILE02:1日目、深夜の事象について
FILE03:逃走と脅威について
FILE04:尋問と協力者について
FILE05:発現と組織について




FILE6:心機一転
FILE7:003
FILE8:blindness
FILE9:キルタキュラー
FILE10:中村慎也事件



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亜人1巻-05「発現と組織について」 ネタバレ

2017年10月09日 | 亜人
 
田中は、”黒い幽霊”を操るのに長けてはいなかった。救出された後、佐藤から”黒い幽霊”の使い方をレクチャーされただけだ。
佐藤は、ゲームに例えて説明した。
「ゲームは100個命があれば、100回生き返る事ができる。しかしゲームに裏技はつきもので、もし命を2コ同時に使ったとしたら、あぶれた命はどうなる?そんなイメージだよ、君もコツさえ掴めばすぐだ。」


”黒い幽霊”は「人間ぶってやがった・・・ワケか・・・」とつぶやいて、女を見た。
そして、「知ってるか?亜人は大きな肉片を核に、散らばった肉片を集めて再生する。だが遠くに行き過ぎた肉片は回収されず、新しく再生される。もしそれが頭だったら?ゾッとするだろ!オイ!!」と言いつつ、再度女の頭を狙ってその手を振り上げたが、女は動じなかった。

田中の”黒い幽霊”の手が女に届く前に、その手は”もう一つの黒い幽霊”によって止められた。
その女、下村泉が亜人であるなら、田中同様に”黒い幽霊”を出せても不思議はない。




田中は少し躊躇した。
”黒い幽霊”同士で戦うことなど、想定外でそんな対応方法を教えられてはいないのだ。
だが、自分が操るコレの精神的な中枢は”頭部”にある。その証拠に自分の視野はコレの頭部とリンクしている。
であるなら・・・敵も頭部を破壊すればいいのではないか、と考えた。

泉も、”黒い幽霊”同士で戦うのは初めてで、考えていた。
下村泉が出した"黒い幽霊"は、田中のそれより頭がいびつに三角である。
(クロちゃんを出すのはいつぶりだろうな・・、そんなことより、アレをどうすればいい?人の形をしているのなら、やはり戦うべきは・・・。)

泉が考えている最中に、田中が先に動いてクロちゃんの首を切断した。
だがクロちゃんは、しゅるしゅるとすぐに首を元に戻した。千切れた肉片をくっつけるのは得意なようだ。




今度はクロちゃんが、相手の頭部を拳骨で殴ると、相手の頭部の一部がボロボロと破砕してなかなか再生しないかった。
と同時に、クロちゃんの拳も砕けたまま再生しなかった。

視野が狭くなりつつも戦況を確認していた田中と、泉がほぼ同時に悟った。
"黒い幽霊"同士の戦いで、拳での打撃が有効なのだ!!







クロちゃんは、残った方の拳骨で再度相手の頭部を撃ち抜いて、頭部を木端微塵に打ち砕いた。
相手はフラフラと膝をつくと、頭部のみならず上半身の形を喪失して床に倒れ、惨めに蠢いていた。










田中の視界もそこで完全に途絶えた。
田中は、やはり”黒い幽霊”の弱点は頭部である事をこれで確信した。切っても意味はなく、打撃による粉砕が有効であるデータが手に入り、「ククク、勉強になったぜ」とほくそ笑んだが、それは泉には知る由もないことだ。




クロちゃんは両手の拳を失って、泉の前に立っていた。泉は「ふう」と大きく一息ついて、落ち着いて周りを見渡した。警備員の遺体が2つ転がっている。
「事後処理に特別版を呼ばなければ。でもここに戸崎さんがいなかったのは幸い、それにあの娘も守れた」とベッドを見ると、彗理子の姿はそこにはなかった。

ただ、先程まで閉まっていたはずの、ベッドの横の窓が開いている。
そこで気付く。あいつは囮で、もう一人・・・おそらく帽子の操る"黒い幽霊"がいたのだ。
元から彗理子を奪うという作戦はまんまと成功されたのだ・・・!!すぐに戸崎さんに連絡しなければ・・・!





その頃戸崎は、政府のお偉いさん達に亜人の現状について説明していた。
「002番の研究所襲撃の時の防犯カメラの映像から、”別種”の存在が発覚。去年の中村慎也事件も、別種が原因とわかりました。」

そう言って皆に見せた画像では、研究員が不可解に、突如首が吹き飛んで殺されていくシーンが映し出されていた。
お偉いさんは「ちょっと待て、”声”はどうなった?」と聞いた。

亜人の声は、「擬死反射」で説明がついていた。
擬死反射とは、自分より優れて強い相手に対する防衛反応で、筋肉の緊張状態が継続して動けなくなる。これは耳栓をするという手段で防衛できる事、亜人と親しい人間、亜人を亜人と認識していない相手には効果が薄く、驚異でない事が確認されていた。


戸崎が「今、考えるべき事は・・・」と本題に入ろうとした時に、泉からケータイに電話が入った。
戸崎は目の前のお偉いさん達よりも、泉の報告を優先させた。
戸崎にはわかっていたのだ。泉を病院に向かわせると、そこで帽子らと鉢合わせになるであろうことが。






その頃、山中の誰も使っていない廃屋に潜んでいた永井圭も、”黒い幽霊”を見ていた。
カイは、カイの祖父の住む九州の限界集落に行って潜伏すればいい、と言ってから買い出しに出かけていた。
圭は考えたが、九州といえども『亜人』を気にしない人達がいるとは考え難い。
(あ・・・でも人間てところは都合がいいかもしれない。殺しちゃえば生き返ることすらできないんだからなぁ・・・。)



自分は人間ではない・・・。圭は、河原で自分で思いっきり切った首を確認してみたが、傷一つな修復されているのだ。
「僕が・・・亜人か・・・?まぁさっきから、こんなのが見えてるぐらいだし・・・そうなのかもしれない」





圭は目の前の"黒い幽霊のようなもの"に動揺することなく、非常に落ち着いて考えていた。
半日死ぬような思いをしてきたので、幻覚を見たとしてもおかしくない。だが、頭は冴えている。
追われるようになってから、一人で落ち着いて考え事が出来るのは、初めての事だった。




まず考えるべき事は、これからすべき事。どうすれば捕まらずに生活していけるのか。
・九州行きは危険すぎるし、人間を信用するのは却下だ。
・逃避行は人間には危険すぎる為、カイはここまでだ。
・移動手段は、バイクになる。運転できるようになるまで何回こけても自分は大丈夫だが、バイクが壊れるだろう。
・山を下りずに、餓死と再生を繰り返しつつこの山で生きるのは・・意味がない。
どう考えても一人で生きていくのは不可能に近いのだ。日本に亜人は3人・・・。

そこでケイはふと思った。
いや、もっといるはずだ。隠れている亜人、生き残り・・・・もしかすると亜人のコミュニティがあるかもしれない。
それに接触出来ればわかるハズだ、人間からバレずに生活していける場所や方法が。




圭はカイが寝入ったのを見計らって、カイのポケットからケータイを抜き取ると、荷物を持って小屋を出た。
亜人のコミュニティがあるとして、連絡方法はやはりインターネットだろうと考えた。
自分のケータイは電波を見張られているはずなので、逃亡生活にはカイのケータイが必要だったのだ。


ケイは山道を進みながら、カイの眠る小屋を振り返った。
「カイにだけは本当に感謝しなくちゃな・・・。ここまで・・・本当に・・・ありがとう。」





ケータイが必要な理由はもう一つある。亜人の方でも僕に連絡を取りたがっているだろう。そしていずれある人物に到達するのだ。

そんな事を考えながらカイのケータイを見ていると、不意にケータイがピリリ!と着信音を鳴らしたので、ケイは驚いた。
着信はケイの妹、彗理子からだった。僕とカイの繋がりを唯一知る人物。

しかし、妹からとは信じるわけにはいかない状況に、ケイは電話に出ないまま、この電話が人間側か、亜人側かの様子を見ていた。
着信音は音声メッセージへと切り替わり、男の声で「君は黒い幽霊を見た事があるかい?」と喋った。



ケイにはわかった。亜人側からケイへのメッセージである事を。
ケイはすぐに電話に出て「永井です。あなた達は亜人ですね」と聞いた。
声の男は「ああ、いかにも。永井君、移動手段はあるかい?」と聞いてきた。接触の指示だ。




電話を切った佐藤と田中は、永井圭との待ち合わせ場所に車で向かっていた。
佐藤は運転中の田中に話しかけた。
「どう思う、田中君。小さい頃からアレを無意識に出せていたというから有望株ではあるが、まだ半日だからねぇ。いろいろ見極めないと」
そう言った佐藤と田中の車のトランクには、手を後ろ手に縛られ、猿ぐつわと目隠しをされた永井圭の妹が監禁されていた。






電話を切ったケイは、カイの乗っていたバイクを運転して、亜人が指示した場所へと向かいながら考えていた。
亜人のコミュニティには、大きく分けて2つのタイプがあるだろう。
1つはひっそり暮らすタイプ。そしてもう一つは物騒な事をするタイプ。
ケイはまあそれも仕方ないだろうと思った。殺されて当然な人間は多いから。

だが、もしその物騒な事が被害がおよぶべきでない人物に及んだ時は・・・その時は「殺してやる」とケイはつぶやいた。
ケイは知らない。自分の背後にピタリとあの”黒い幽霊”が張り付いて一緒にいることを。








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亜人1巻-04「尋問と協力者について」 ネタバレ

2017年10月09日 | 亜人
帽子と一緒にいる男「田中」は、国内2体目の『亜人』だった。
だったというのは、国に逮捕監禁されていたのを、帽子が助け出していて、今は「002」ではないからだ。

帽子は、002を助け出す時、002田中に言ったことがある。
「亜人が不死身程度のつまらない存在・・・そう思っていのか?君は。もっと耳を澄まし、目を凝らすべきだったな。亜人として祝福を受けた時に。私が教えてあげよう、だから助けに来た、田中君。」




帽子の男、佐藤は、厳重な警備の施設にたった一人で侵入し、その場にいる警備や職員達を皆殺しにして、「亜人・002田中」を救出して行ったのだ。戸崎の言う「亜人は人間に害をなさない」という説明はウソである。





下村泉は、永井圭の身辺調査の為、妹「彗理子」の入院する病室にいた。
彗理子は朝から刑事の訪問を受け、そしてまた「亜人管理委員会」の訪問を受け、うんざりだった。
ある日突然兄が『亜人』だと言われ、一夜にして「亜人の妹」となり、これから先どうなるのもかわからない。

「なんで私がこんな事に・・・!」と荒れる彗理子に、下村泉は「それはあなたが永井圭の妹だからです、彗理子さん」と事実をつきつけた。




彗理子は「キモイ・・・、自分が人間だとカン違いしてたヤツが家族にいたなんて、キモすぎる」と血縁のある兄妹の関係を否定した。

泉は「私は親族が亜人だった人を知っています。私に、その人の苦しみを推し量ることなど到底できません・・・。ですが私はその人や、あなたのような人をこれ以上増やしたくはないのです。だから亜人の事をもっと詳しく知りたいのです。
どう生まれるのか、完全に不死なのか、本当に人間ではないりか。どんな些細な事でも結構です。
何か人と違ったことなどありませんでしたか?」
と静かに聞いた。




泉のその言葉に、彗理子は落ち着きを取り戻して、幼い頃の・・・些細な疑問を口にした。
昔、飼い犬が死んだとき、兄がおかしな事を言ってた事が印象に残っていたのだ。
日暮れの誰もいない土手で、兄は『彗理・・逃げて・・・幽霊が来る。いや、出てる?』と言っていた。
彗理子が振り向くとそこには誰もおらず、兄は宙を見て、宙に向かってしゃべっていた。







その話を聞いた泉は興奮気味に「永井圭が!黒い幽霊を見たと言ったんですね!」と確認したが、彗理子は「は?黒かは知らないですケド」と否定した。




泉は、思わず自分が口を滑らせてしまった事を後悔して恥じた。
戸崎さんに「冷静に対処しろよ」と言われていたのに、やってしまった・・・。

泉が反省している間、彗理子は”あの頃”を思いだしていた。
あの頃は兄さんとカイさんとよく遊んだ・・・・、カイさん・・・。
彗理子が兄の協力者がカイであるに気付き、それを泉に言おうとして泉を見ると・・・泉は突如口と腹から血を噴き出し、苦しみもがきながら体が宙に舞った。




彗理子や、警備の警察官には見えなかったが、泉には自分の腹を掻き破ったのが”黒い幽霊”であることが見えていた。



”黒い幽霊”は、続けざまに警備の人二人を瞬殺した。
警官達は殺される寸前に”黒い幽霊”を目にしたが、あっと思った時にはすでに殺されていた。



一人は”黒い幽霊”に壁に押し付けられて死んでおり、死体を持ったままじっと彗理子を見ている。
"黒い幽霊"を見た彗理子は、あまりの恐怖にそのまま気絶した。




”黒い幽霊”はそっと彗理子の上に覆いかぶさると、その長く恐ろし気な指で彗理子の頬をさすった。
「恐がらなくてよかったのに・・・ククク」




病院の外にいた田中も、”黒い幽霊”を通じて同時にその病室内の惨事を見ていて、笑いが止まらないというように、大きな声で笑っていた。佐藤の言った通り、"黒い幽霊"を意識でコントロールして使えば何でも出来る事が愉快だったのだ。

だが田中は、驚くべきものを"黒い幽霊"を通じてみた。
先ほど殺したはずの「亜人管理委員会」の女がじゅわじゅわと音をたてながら起き上がってきたのだ。
おまけに「あなたは・・そこをどくべきだ」と命令してくるではないか。
「亜人委員会」に亜人が人間ぶって混ざっていたとは。







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亜人1巻-03 「逃走と脅威について」ネタバレ

2017年10月09日 | 亜人
6月16日 3時39分
帽子の男は、自宅のPCで亜人に関する資料を閲覧していた。
そこに映し出されたのは、「亜人002・田中」の人体実体の様子を写した写真の数々だった。
「死んでも死なない亜人」の研究の為、拘束された002田中は、幾度となく残酷な殺され方を繰り返し受けていた。
モルモット以下の扱い・・・。






帽子の男は「変えねばならない、この流れを。教えてやらねばならない、人間達に。」とつぶやいた。





【7月24日】
亜人捜査官の戸崎は、永井圭の自宅で、永井圭の母親・・・だった人に事情聴取していたが、特にこれといった成果は得られなかった。
永井圭の母親は「申し訳ありません・・・息子・・・いえ永井圭が人間じゃなかったなんて・・・」と謝った。
ある日突然、自分の息子だと信じていた身内が「亜人」だと知った家族のショックの大きさは、戸崎にも理解できた。

戸崎が、永井圭の自宅を出る頃には、山中で「亜人・永井圭」の"声"を聞いたという女性の証言者の事が伝わっていた。
永井圭は、協力者1人と、バイクで神奈川方面まで逃走している事までが掴めていた。

その話の途中、戸崎は永井圭の自宅に集まる野次馬の中から、"ある男"を見つけて、持っていたミントスを落とした。
泉もその方向を見ると、そこに帽子の男が立っている!!!。泉は声にならない程驚いて、男を追おうとしたが戸崎が止めた。
そして、泉に落ち着くように言うと、携帯で緊急メールを打った。






緊急
帽子と思われる存在を、永井圭宅付近で目撃。
特別班の出動を請う。ただし冷静かつ慎重に行動するよう
最悪の事態、その状況だけは避けねばならない。


打ち終わると戸崎はミンテアを拾って、泉を朝食に誘った。
泉はわかっていた・・、2人だけでどうこうなる状況ではない。

ただ・・・・・、戸崎さん・・・この状況は既に・・・・。
泉は、その言葉を呑み込んだ。


【7月23日 3時46分】
一方その頃、男達をふりきったカイと圭は、山道をバイクを飛ばしてひた走っていた。
朝日が昇りだしたのを見て、カイが「キライだな、太陽ってのは自分勝手で・・・いつも偉そうに上から見下してやがる。」とつぶやいた。

カイは、山の中の隠れ家を目指していた。
カイの背に捕まった圭は考えていた。
(そこへ行けば"とりあえずは"落ち着けるだろう・・・その後はどうする?どうすれば僕は安全になれるんだ?)

そう考えている矢先、すれ違ったバイクがUターンして、二人の乗ったバイクを追いかけてきた。バレたのだ!!!
そのバイクは、カイのバイクより性能がいいらしく、追いついてきた。
カイが提案する。
「ケイ、声は使えるか?体を動かなくする!!叫ぶ時、俺の耳を塞げ!それで防げるかはしらねーが向こうだけコケれば勝ちだ!!」

そう言っている間にも、バイクの男に並ばれた。
「わかった!やろう!」と答えた圭だったが、躊躇した。
(いや、まてよ・・。この速度でこけるこの人、死んじゃうんじゃ・・・・)



そう考えていると、バイクの男は高速で走るカイのバイクを蹴り倒した。
相手はこちらが死んでもいいと思っていたのだ。





圭は(なんてことを・・・死んだらどうするんだ!!カイが・・!!)と思ったところで意識が飛んだ。
気がつくと、河原に投げ出され、骨折と流血で体が痛かった。だがそんな事よりカイが心配で、カイを探していると、カイは体を水中に半分つけて動かなくなっている。死んだのか・・・!?しかしすぐに助け出さないと、窒息してしまう、と駆け寄ろうとしたところを、バイクの男に思いっきり顔面を蹴り飛ばされ、蹴られた痛みに圭はうずくまって呻いた。

圭は体が痛んで動かなかったが、なんとか声を絞り出して男に言った。
「救急車を頼む・・・・あっちは人間なんだ・・・」

だが男は「あいつ死んだのか?でもよ、自業自得だよな、亜人なんかと一緒にいたんだからよ」と言って救急車を呼ぼうとはしなかった。
その言葉に、圭は衝撃を受けた。



僕のせいなのか・・・、僕が逃げなければ・・・・こんなことにならなかったのか・・・・!?僕がカイに助けを求めなければ。

・・・いや、それでも。こいつさえいなければ・・・カイは無事だった。こいつ・・・コイツさえ・・・
どこかで"黒い幽霊"の声が圭に同調していた。「コイツさえ いなければ」




圭が憎しみに囚われそうになるよ一瞬早く、死んだと思っていたカイが男を石で叩きのめした。
カイの頭からは血がダクダクと流れていたが、カイは「死んだフリだよ、こんなん痛くともなんともねー。よしこいつのバイクで逃げよう」と先を急いだ。



だが圭は、もうこれ以上カイを巻き込む事は出来ないと思って言った。
「カイ、足が折れて立てないというか、その、もうダメじゃないかな?一緒にいたらカイだって、やっぱり人と亜人が一緒にいることは・・・」とまで言ったところで、カイが言葉を挟んだ。
「ケイ、お前は人間だよ。少なくとも俺はそう思ってる。だからお前がオレ以外誰も知らない所に逃げれば、お前は人間のままだ」




圭は答えなかったが、違う・・と強く思った。
もう充分にわかっていた。これまでの出来事でとことん自分が人間ではない事を思い知らされた。
「もういいよ、カイ。なんでそこまで・・・」と言うとカイは淡々と「だって、友達だろ?」と至極シンプルな答えを返した。




圭はそれ以上の説得は辞めた。置いてけと言っても、カイは聞いてくれそうもない。
カイを、本当に変な奴だと思った。
だったらどうする?カイを危険に晒さない為に、今はどうすればいい?考えろ、一人の・・・亜人として。





思いついた答えは、自分が亜人であると言う事だった。
圭は、男が投げ出したナイフを拾い上げると、自分の首の頸動脈を切った。




一旦意識を失ったが、やはり思った通り生き返った。生き返ったと同時に損傷した部位もきれいに修復されていた。






日の高い日中のある公園で、帽子の男は新聞を読みふける男に、独り言のように話しかけていた。
「向こうは恐れているようだ、私や中村慎也のような事件が再び起こることを。だから大きな行動はとってこない、それは私達も同じだがね」

先日、永井圭宅の前で亜人捜査官にわざと姿を見せて、その反応は確認済だ。

新聞を読み終えた男は帽子の男に返事した。「で、佐藤さん。これからどうするんだ?」
佐藤と呼ばれた帽子の男は「道・・・を示してやらねば、彼に。まずは永井圭と合流する事だ、手伝ってくれるかい?田中君」と聞き返した。







その男は、国家によって拘束、実験台とされていたはずの、「亜人002・田中」であった。

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亜人1巻-02「1日目、深夜の事象について」ネタバレ

2017年10月08日 | 亜人





永井圭は、カイの運転するバイクの後ろに乗って考え事をしていた。
(なんでこんな事になったんだ・・?それは僕が『亜人』だから。
捕まるとどうなるんだ?きっと本当に”不死身”かを調べらる為、何度も何度も殺されるはず・・・。
それだけは嫌だった。トラックに轢かれた時、ほんの一瞬、いや一瞬より長く痛かったんだ、すごく・・・!!!)

その痛みを思いだした圭は、ゾクッとして身震いした。

圭が思いつめているのに気付いたカイは、圭に声をかけて、今夜の逃亡ルートを説明した後、「『亜人』って世界に何人いんだっけ?」と圭に聞いた。
圭は昼間の授業を思いだして「えっと47人かな?」と答えるとカイは「なんだ47人”も”いるのか。たいして珍しくもねぇな」と言って笑った。



拍子抜けした圭は「ありがとうカイ、少し気が楽になったかも」と言うと、カイは「そりゃよかった」とあっさりしたものだった。

世間の騒動を知らない圭は「本当にそうかも、意外と世間は騒いでないのかも?頑張れば逃げ切れるのかも?」と楽観しだした。だが世間は、新しく発見された『亜人』騒ぎでもちきりであった。



7月24日午前0時02分
永井圭の自宅前は、詰めかけた報道陣でごった返していた。
その家に、厚労省の亜人担当のキャリア、「戸崎(とさき)」が、若い女の秘書を連れて捜査に入った。
戸崎は、ミンティアを大量に食べる癖のある細いメガネをしたインテリ風の男だ。




戸崎は現場の捜査官に指示を出した。
亜人の動きを止めるのに最有効とされる「非致死性麻酔薬」の準備と、しかしそれを極力使わずに捕獲したいと。
「貴重な研究対象ですから、できるだけニュートラルな形でいただかねは・・」と凄む戸崎であった。



その頃、、逃亡中の永井圭はおしっこをする為に、止まっていた。
当たり前の事なのに、自分でも「亜人」になってもおしっこは普通に出ることに感心した。
少しでも立ち止まると考えてしまう。
(あの時トラックに轢かれさえしなけば・・・。いや待てよ、亜人は一度死んで初めて亜人になるのか?それとも最初から亜人なのか・・・)

そんな事を考えていると、突然暗闇から飛び出してきた2人組の男に圭は捕まってしまった。
男達は、この人気のない山中で少女を暴行しようとしたいたが、亜人の賞金1億円ゲットに喜びいさんで女を手放して来たのだった。抵抗する圭の首を、男達は力いっぱいに締めた。
どんなに力を入れても「亜人」は死にはしない、とタカをくくっての事だったが、圭は苦しんで気絶した。
いや、死んだのかもしれない。とにかく圭は動かなくなってしまった。


殺されながら圭の目からは涙がこぼれていた。
(なんで・・・なんでこんな事になったんだ・・・僕は悪くなのに・・・みんな死んじゃえ・・)




絶命した圭の頬を、”黒い人のようなナニカ”の手が優しく包み込んだ。
「なんで・・・?なんでって・・・そりゃあ・・・」





圭は生き返った。どのくらいの時間が経過したかはわからない。

目を覚ますと、自分を助けようとするカイが、男達にバットでぼこられていた。
圭はカイを助けてこの場から逃げようと、”声”を発してみた。
下校中、人混みから逃亡した時のアレだ。




すると思った通り、男達の体は硬直して動かなくなった。
同時にカイの体も硬直したが、圭がカイに「逃げよう」と声をかけた途端にカイのみ硬直が解け、二人はバイクで逃走した。
圭はまたも暗闇の中に”黒い人のような何か”を見た気がして驚いた。でもそれがナニカはわからないし、本当に見たのか幻覚なのかもよくわからなかった。




圭を乗せたカイのバイクは、追っての男達の車を踏切で振り切って逃げ続けた。
男達は1億円の賞金を逃がすまいと、閉まった遮断機を破壊しながら踏切に突っ込んできた。
だが、そこでピタリと動きを止めた。運転者の男の体が硬直して動かないのだ。
助手席の男は、死の直前に”それ”を目にした。
”黒い人のような怪物”が、運転席の男の体を掴んで動かないようにしているのを!!!
そしてソレは「死ん・・・じゃえ・・お前ら・・・全員・・・僕は・・・悪くないのに」と喋っているのを!!!




男達の車は、走行する電車に激突して爆発炎上した。
その爆発を見ながら圭は思った。
(さっきのでハッキリした。亜人の声には人の動きを止める作用があるらしい。)

カイも考えていた。
(なんであの時、俺だけがすぐに動けたんだろうか・・・)

二人は思う。まだ何かあるんじゃないのか?亜人てのは・・・・と。
実際、圭は亜人についてほとんど何も知ってはいなかった。






亜人の張本人である永井圭より、亜人研究者の方が「亜人」に詳しかった。
国内2体目の「002亜人」は、国内で何度も何度も殺されて、果てしない拷問のような実験を繰り返されてデータを集められていたからだ。




永井圭の自宅捜索に入っていた戸崎は、現場の警察に説明していた。
「亜人の声には注意してください。蛇に睨まれた蛙のように身動きがとれなくなります、が、人体に影響はなく耳栓をすれば防げます。亜人は声以外であなた方に影響する事はありません。亜人に危険性はない。それは絶対です」と。

警察官達から離れて、下村泉と二人になった戸崎は付け足した。
「(亜人に危険性がない。)永井圭が別種でないかぎり。」




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亜人1巻-01「発覚とその後の行動について」ネタバレ

2017年10月08日 | 亜人





日時不明、某研究所




7月23日、午前7時01分

永井圭は、医者になる為の勉強に励む平凡な高校生だった。
平凡と言い切れないのは、国立医学部模試で全国1ケタの成績をとる程優秀であることぐらい。




登校中も勉強に余念のない永井圭に、友達は「夏休みまで勉強漬けとはお医者様志望は大変だねぇ」と皮肉を言った。あえて反論もしないが、なんで皮肉を言われなきゃならないんだ、と永井圭は思った。
僕は立派な人間になる為に努力しているだけなのに・・・。
とはいえ、「交友関係」も無難に大事にしくおくことにして、気持ちを納めた。

登校途中のコンビニの前で、「カイ」が一人で座り込んでいるのが見えた。
カイは自分に気付いて手を振ってきたが、圭はそれを無視した。
「知り合いか?」と聞かれて「まさか、変な人だね」と返事しておいた。カイと知人だと知られたくはない。





学校では、「亜人」についての講義があったが、圭は受験に必要がないと判断して受験勉強を続けた。
先生は「亜人」の話を続けていた。
亜人が世界で初めて確認されたのは、圭達が生まれた年、今から17年前だった。
それはアフリカの戦場で「神の兵」と呼ばれる軍人だったが、米国が拿捕し、それが人間の形をして人間でないもの、、、すなわち『亜人』である事が確認されたのだ。

亜人の特徴で民間人が知る事は、決して死なない事と、独特の声を発するという事ぐらい。
現在までに発見された「亜人」は世界で46体。日本では2体
ただ、人間なのか亜人なのかは、「死ななければわからない」のだから、まだ発見されていない亜人はいるはずだと、先生は説明していた。死ぬはずの所で死ななければ、それが「亜人」である、と。

その時生徒の渡辺が質問した。
「亜人を発見、捕獲した時の莫大な賞金はどうなるのですか?」
先生は「狩猟の獲物のように所有権を・・・」と言うのが耳に入って、永井圭は驚いて思わず声をあげた。
「あの、亜人って人間じゃないんですか?」




先生もクラスメート達もは?という顔をして「当たり前だろ?」と言った。
亜人は、人間に似た形をしているが、人間ではないナニカなのだ。


下校中、圭は幼い頃の事を思いだしていた。
小学生の頃、ペットショップで買ってきた子犬が早々に病気で死んだ。
悲しくて泣きじゃくる妹の前で、母が「不良品を掴まされたわ、あのペットショップ訴えてやろうかしら」と愚痴っていた。




その後、妹と僕の二人で、子犬の死体を土手に埋めに行ったが、妹は泣き止まない。
「お兄ちゃん、なんでこの子死んじゃったの?不良品だと死んじゃうの?なんで?」と聞いてくる。

妹は小さい時から病気がちで、そんな自分と病死した子犬を重ねて泣いていたんだと思う。
僕も思った。
「そういえば、なんで死ぬんだろう、別に死ななくても・・・」と。







その時だった。
ふと気づくと僕の背後に”黒い人のようななにか”が立っていたいたのは。
その黒い何かは、僕が言った言葉をぎこちなく復唱していた。
別・・・・に・・・・死・・・・」




妹をかばって「誰?」と聞く僕に、その”黒い人のようなもの”は「だ・・・れ・・・」と繰り返してその不気味な手を僕のほほにそって当てた。




そこまでしか思いだせなかった。
どうして今それを思いだすのか、何かを忘れている気がして考え事をしながら歩いていて、僕はトラックに轢かれた。
トラックに引きずられた僕の肉体の下半身が千切れ、肉がズタズタになって・・・死んだ。




死んだ・・・はずだった。
だが永井圭は、損傷した肉体が「じゅわじゅわ」と音を立てて修復しながら立ち上がってきたのだ。
永井圭自身も信じられなかったし、周囲の人間も驚愕した。
高校生永井圭は、国内3体目の『亜人』だったのだ・・・!!と。




その驚愕の事実を引きながら遠めに見る人々の中から、友人の渡辺が進み出てきて「友達だもんね」と言って手を差し伸べてれたが、僕はその手をとることはなかった。渡辺達が昼間に言っていた言葉を覚えていた。
「研究、賞金、ステータス、亜人は人間じゃない」「利用価値」・・・、だめだ、捕まれば一生研究に使われる!!!

発狂しそうな気持ちは、僕を無意識に叫ばせていた。
その声は、亜人の特徴である『独特の声を発する』に値するのかもしれない。
その声を聞いたその場にいた人々は、体が硬直したように身動きがとれなくなり、その隙に永井圭は逃げた。
逃げる宛てなどなかったが、とにかく人気のない方へと逃げた。





その頃、下校中のカイは警察に「永井圭を知っているか?」と尋ねられて、ケイが亜人だと疑われている騒動を知った。カイは「知らない」とすっとぼけて警察をやりすごすと、ダッシュで家に帰り、大急ぎで逃亡に必要な物を鞄に詰め込みだした。
カイは、ケイを助けなければ、と思ったのだ。

森へと逃げた圭は、ケータイを取り出したが、躊躇した。
誰に助けを求めればいいんだ?家はダメだ、先生もダメ、学校の友達もダメ・・・どう思い返しても、自分の身を危険に晒してまで圭を助けてくれるような人物は思いつかなかった。

カイ以外は。
カイとは子供の頃、毎日のように虫取りしたりして遊んでいた。
だけど、ある日母親に「あの子とはつきあうな、立派な人間になりたいのなら友達を選べ」と言われて絶縁したきりだった。酷く一方的な縁の切り方をし、今朝も手を振るカイを無視した。

それでも圭はカイに電話して、助けを求めていた。
カイは普段通りに落ち着いた声で電話に出ると「わかってる、助けるよ。どこにいる?」と言った。




どこに・・・。場所を言って大丈夫なんだろうか、と不安が圭の頭をよぎって黙ってしまった。
そんな圭の気持ちを察するように、カイは言った。
「ケイ、俺は大丈夫だ。」




圭はその声に促されるように「昔、カブトムシを捕まえた木の下」だと場所を伝えた。
それでカイならわかるはず。カイは一瞬の躊躇もなく「すぐ行く!」と言って電話を切った。




カイが到着する前に、森に隠れていたケイは、亜人捜索中の警察官に圭は見つかった。
すでに圭を人間扱いしていない、賞金に目が眩んだ警官に捕まる事は絶望であることを、圭は悟った。
自分はもう人間ではないのだ・・・!!!

圭を追う警官を蹴り倒したのは、駆け付けたカイだった。
それからカイと二人、必死で逃げた。追いつかれてたまるか・・・追いつかれてたまるか!!!
そう思いながら逃げる圭は、森の暗闇の中で”黒い人のようなもの”を見た気がした。
だけどそれが何かを確認する暇もなく、逃げた。







7月23日午後19時47分
永井圭は、協力者カイの用意したバイクに乗って逃亡を図っていた。
カイの背に捕まりながら「あの、僕って・・・やっぱ人間じゃないのかな?」とカイに聞いた。
カイは「そのへんは興味ねーわ」と答えた。





少年2人の逃走劇に対する追っ手の数は凄かった。
いまだ解明されず、各国が競うようにして研究する「亜人」の国内3体目が発見されたのだ。
国家の威信をかけて、他国に奪われる前になんとしても確保する必要があった。
警察権力総動員で、「亜人」確保が急がれ、日本は再び「亜人」騒ぎでもちきりとなった。








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亜人-00「中村慎也事件」 ネタバレ

2017年10月08日 | 亜人


その生物は死なない。
その生物は亜人と呼ばれている。
その生物は一度死ぬまで、自分が亜人だと気づかない。



ある雨の日、中村慎也は乗っていたバイクで転倒し、右腕が千切れる大怪我を負ったが、失ったはずの右腕がじゅわじゅわと音をたてて再生したことで、自分が「亜人」であると知った。









自分の目の前に、自分の右腕が落ちている、という状況を呑み込むのは難しかったが、そんな事を言ってられる状況ではなかった。
自分が亜人だとバレるとヤバイ。
幸い、事故現場は誰にも見られていないので、このまま証拠隠滅してしまえば、今まで通り人間として暮らしていく事ができるはず。
一瞬、誰かにみられているような気がしたが、周りを見渡しても人影はない。
中村慎也は、自分に「落ちつけ、冷静になれ」と言い聞かせながらバイクなどの証拠隠滅の作業を行って、逃げるように自宅へと帰りついた。


自宅に帰った中村慎也は、いくらか落ち着いた頭で亜人の事をインターネットで検索した。

「亜人」とは1990年代に発見された新しい生物である。
その生物は、死ぬ事ができない。(死んでも生き返る)
現代まで世界で45体発見され、研究が進められているが、不死のメカニズムは解明されていない。

最初の亜人は、戦場で発見された。
あらゆる学説を覆すこの事実は、世界中をパニックを陥れた。

だが研究により亜人は不死である事以外、人間と変わらないことが判明。
危険性がないとされ、人類進化の為の貴重な研究材料とて見られるようになる。
一部では、亜人を捕獲して国や闇に売る行為も横行したと言われる。これを「亜人狩り」と呼ぶ。


ここまで読んで中村慎也は、自分もバレればこうなるのか・・・と想像してみた。
死ぬ事が出来ないまま、何度も殺されて永遠に実験動物として扱われ・・・死ぬことなく永遠にその生活が続く・・・。



考えただけでゾッとして、絶対にバレるわけにはいかない、と思って、水を一気に口に流し込んだ。
落ち着け・・・。
死ぬ以外にバレることはない・・・、証拠は隠した・・・、残る問題は持ち帰った「自分の右腕」の処分だけ・・・。
「自分の右腕」の処理を悩んでいた時、友人の祐介が大学を休んだことを心配して家までやってきた。

中村慎也は、冷静を装っていつも通りに出たが、祐介の顔を見ると、無意識に涙が流れていて、祐介にポケットティッシュを手渡された。





祐介は「何かあったか?いったい何年お前の友達やってっと思ってんだよ」と心配してくれた。祐介とは小学校からの腐れ縁だ。祐介の言葉に、慎也は全部を打ち明けてしまおうかと思ったが、恐ろしいイメージが頭をよぎり、言えないでいた。


この頃の中村慎也の精神は、ギリギリだった。
突然自分が世界で46体目の亜人だと知ったのだ、その大きな秘密を一人で抱えるのは難しかった。

バケモノが人間のように生きていくことは不可能なのか・・・・とネガティブにもなったが、諦めるわけにはいかなかった。
「右腕」さえ処分すれば、俺は人間だ・・・。




右腕の処分場所を探して、慎也はリュックに「自分の右腕」を入れて街に出た。
いつもの光景、誰も自分が亜人で、右腕を運んでいるなんて思いもしないだろう・・・。大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・と自分に言い聞かせていた。だが、歩道橋の先に何か・・・・黒い幽霊のようなものがユラリフラリしながらこっちに向かってくるのが見える。




その黒い幽霊は、慎也の顔面前までくると、「・・さえ、隠せば・・」と呟いているのが聞こえた。

慎也は弾かれたように、黒い幽霊が来た方の逆へと走り出した。
ヤバイ・・俺はもうおかしくなってる、やっぱり人間のフリなんて無理なんだ!たすけて・・誰か助けて・・・!!!と心の中で叫びながら。

無我夢中で入る慎也は、自分が車の前に飛び出していることにも気づかなかった。
「あっ!」と思った時には遅かった。
その時慎也が感じたのは、死ぬ恐怖ではなく、バレる恐怖だった。



呆然とする慎也を引っ張って間一髪助けてくれたのは、祐介だった。
祐介は、命を賭して慎也を助けてくれたのだ。




二人は人気のない高架下へ移動して、慎也が落ち着くのを待った。
慎也は祐介に全部打ち明けてしまおうか・・・と悩んでいた。祐介なら味方になってくれるかも・・・。そんなわけなくても、このまま一人で抱えていると自分の精神がもたない・・・、祐介に売られたなら、もういっか、とまで考えついていた所で、突如大勢の男達に囲まれた。





男達は、慎也が亜人であること、そして慎也の顔を知っているようだった。
どうして・・・?戸惑う慎也に、男達は「亜人である証拠」のバイクヘルメットを見せた。

ヘルメットに何か証拠がついていたのか?でも顔は無傷だったし・・・・、と考えたところで心臓が大きくドクンと脈打った。
無傷であることがおかしいのだ。
男は「こんなものを忘れるなんて、さすが化物だよ」と言うと、ヘルメットのカバーをパカリと開けて中を見せた。




そうだ、あの時、自分は首ごと千切れて"一回死んでいた"のだ。
「あの時、頭が生え変わっているのにきがつきもしなかったなんて・・・化物以前の問題だ。俺はとっくに俺ですらなかったんだ」



人間であるなんておこがましい事だった、自分が自分でなどなかったのだ。祐介を巻き込んで悪い事をした、と思った時だった、木戸と呼ばれる男が慎也に向けて銃を撃ったのは。
ショックを受けて涙にくれる慎也を、祐介がその体でかばった。




自分の腕の中でズルズルと死んでいく祐介を抱えて、慎也は呆然とした。亜人の自分をかばって、人間の祐介が死んでいく・・・。
意識を失いつつも祐介は、最期の最期まで慎也を心配してくれていた。
「しん・・・や・・・に・・・ろ・・・」
その声はあまりに小さく消え入りそうで、慎也に届かなかった。

祐介の息が止まった時、祐介の体から自分が生き返った時と同じような"黒いじゅわじゅわ"が立ち上り、それは黒い幽霊のようなものを形づくり、そしてその幽霊が慎也に言った。
「しん・・や・・・・にげろ」
それだけ言うと、黒い幽霊は消えた。






そこで祐介がこの世にもういない事を悟った慎也は、激しい憎悪に体を震わせた。
「お前ら・・・全員・・」




だが、中村慎也は何一つ武器を持っておらず、亜人対策のプロである木戸は躊躇なく「実験動物ごときが手間かけさせやがって」と慎也の額に銃を撃ち込み、続けざまに何発か体に撃ち込んだ。
慎也の遺体は、血と涙を流していた。



政府の男達は中村慎也の再生前に拘束しようとしたが、その前に無数の"黒い幽霊"に襲われた。
男達の目にもはっきりとその怪物は見えていた。



その怪物は「殺してやる」と喋ると、容赦なく男達を切り裂いて全員をあっという間に殺し続けた。


木戸は興奮気味に銃を"黒い幽霊"に向かって撃ちながら、「聞いてねぇぞこんなの!!亜人は不死身以外人間と同じハズだろォ!!まさか・・・中村慎也は『特別な亜人』なのか!!?やった!!大きな功績だ!!」と喜んだのも束の間、ソレに殺された。
銃も効かないソレらは、人間が敵うものではないのだ。
男達を全滅させると、"黒い幽霊"達は同時にボロボロと粒子状になって消えていった。ソレは祐介の体から出たものと同じだった。












再生した中村慎也は、自分を守る為に死んだ祐介の遺体の傍に立って、祐介に(すまない・・・でも・・・お前のおかげで・・・)とその死を悼んでいると、祐介の体の傍に小さな小さな"黒い幽霊"が1つ残っていて、小さな声で「にげ・・ろ・・・しんや」と喋ってからサラサラと消えた。




それが祐介の意志だ。慎也は祐介の"想い"をしっかりと受け止めた。
「ああ、わかった」



それからの中村慎也の逃走に迷いはなかった。
幸いにも、事件に中村慎也の事は一切報道されなかった。政府は、中村慎也がまたアレを起すのを恐れているのかもしれない。
結局、亜人の事についてはよくわからなかった。自分が通常の亜人ではないらしいが、そんな事はどうでもよかった。

中村慎也はタクシーに乗ると「運転手さん、安全運転でお願いしますね。命は一つしかありませんから。」(基本的に)と告げたという。その後誰も中村慎也の行方は知らない。

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