もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記⑭ ・・・・・ さざんか

2015-01-09 12:34:39 | E市での記憶
おじいちゃんの庭には
サザンカの木が一本ある。

母屋の近くに立ってるから
花が咲くと、すぐわかる。

でも、この木にいっぱい花がついてるの
アタシはあんまり見たことない。

咲いても、いつもほんの少しだけ。
(アタシがちゃんと見てないのかなあ)


「花は、いちりん、にりんって数えるんよ」って
オダさんが教えてくれた。

いちりん、にりん・・・って
なんか可愛い。鈴の音みたい。

「雪囲い」の竹とワラ縄の間から
緑の葉っぱの蔭になって
花びらがちょっとだけ見えてる・・・

そういうときのサザンカは
雪にこんもり覆われてる庭で
たった一つの「紅い」色。

どんなに小さくても、よく目立つ。

咲いたばっかりのサザンカは
「いちりん」って感じがする。

でも・・・

ほんというと、アタシは
サザンカ、好きかどうかわからない。

花が咲いて、時間がちょっと経つと
花びらは茶色っぽくなって
そのうち下に落ちてしまう。

その色はもう「紅」じゃなくて
もっとナマナマしい
気持ち悪いような色。

たま~にしか見ることないけど
カンゴフさんがノーボンに
取り替えたガーゼ載せて運んでるとき
あんな色してる・・・気がする。

白い雪の上に落ちた血が
時間が経って固まった・・・

そんな感じがして
アタシはサザンカのこと
好きになれないんだと思う。

なんだかお侍さんたちが
木のそばで斬り合いしたみたい・・・

でも、こんなこと誰にも言わない。
ヘンな子って思われるから。


アタシは、夏のサザンカの方が好き。

一年中、葉っぱは緑で
ピカピカ光ってる。

花のついてないサザンカ見て
「いちりん」だけ咲いたときのこと
思い出してるときが、たぶん一番
アタシは好きなんだと思う。



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