むじな@金沢よろず批評ブログ

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「中華民国」自ら「国旗」撤収したことを喜ぶ 中共・国民党・台湾人民の三すくみ関係突破口に

2008-11-05 02:52:54 | 台湾政治
陳雲林・海峡両岸交流協会会長が3日から台湾を訪問しているが、最初は訪問するなと思っていたが、訪問をめぐる「中華民国」馬英九政権の対応を見るにつけ、ひょっとしてこの訪問は台湾にとってプラス効果が大きいのではないかと思うようになった。
(写真は4日夜台北市立法院前での民進党の抗議集会で見かけたワンちゃん

■自ら「国旗」を撤収、没収して回る「中華民国体制」
というのも、馬政権がおそらく中国側に強硬に要求されたためか、過剰なまでの警備を行っているからである。
陳が宿泊する圓山ホテル8階以上は厳戒体制を敷き、さらに全館にあった「中華民国国旗」を撤収させた。さらに「国旗」撤収は陳が通行する道路と通行人にも適用され、「抗議」の意思表示として「国旗」を持っていた人は連行されたり、「国旗」を没収されたりしているのだ。

■自滅の道を歩む「中華民国」
しかし、これは台湾人にとって非常に喜ぶべきことである。「中華民国」自身が自己否定をはじめ、国際社会においてとっくに「中華民国」など消滅している事実をようやく認めたからである。
さらに、馬英九が自ら「総統」と呼ばなくても良いと宣言したり、「台湾と大陸は地区の関係だ」と発言したりしていること、馬政権の政権運営そのものがもはや国家政府としては破綻したものであることを付け加えるなら、もはや「中華民国」体制は自爆、自滅の道を歩んでいるといってよい。

■「中華民国」崩壊は、台湾市民社会の実体化につながる
これは、「中華民国」占領体制によって抑圧されてきた台湾市民社会にとって願ってもないチャンスである。私は必ずしもこれを「台湾共和国建国」につなげなくてもよいと考える。いな、できれば「台湾は台湾という名前の独自の政治実体 Taiwan is a taiwan」として、国民国家に代わる新たなモデル(一般名詞としてのtaiwan)としての新生台湾が登場すればいいと思うのであるが、建国するにせよ、新たな政治実体のモデルとなるにせよ、いずれにせよ、「中華民国体制」の解体が必要である。

■国民党政権になってよかった
これがもし民進党政権が続いていたら、民進党政権そのものが「中華民国体制」の手続きで成立した以上、そして抵抗野党として頑迷な「中華民国守旧派」の国民党が存在していた以上、「中華民国体制」の崩壊など望むべくもなかっただろう。
ところが、国民党が政権に復帰し、さらに中国共産党との交渉にのめりこんだことで、中共との闘争では常に敗れてきた国民党が自ら「中華民国体制」を否定・解体するという契機が生まれたのである。
しかも国民党内には誰一人、これに異議をはさむものがいない。
すばらしい状況ではないか!

■問題は民進党の一部にアホがいること
だが、恥ずべきことに、民進党の議員や支持者の一部が、「中華民国国旗」を持ち歩いたり、掲げて「抗議」を行っていることだ。これは頭が悪い。せっかく「中華民国」が崖から身投げしようとしているのに、民進党が「中華民国」をわざわざ崖から救い出す必要はない。まあ、おぼれた人間や困った人がいたら、助いの手を差し伸べるという台湾人の優しく、かつ、おせっかいな気質がそうさせているのだろうが、そんなことをしても国際社会では嘲笑されるだけだ。
国際的には中華民国なるものは1949年10月1日をもって消滅している。これを国連常任理事国として延命させたのは、経済力と軍事力に物を言わせた米国の横車のせいであった。

■台湾人には打倒できなかった「中華民国」を中共が打倒する
ところが、台湾は社会的に発展を遂げ、今では「中華民国体制」なしに、市民社会が独自に機能するまでになっている。
民主化と市民社会の成熟という客観的要素にもかかわらず、「中華民国体制」と国民党なる前世紀の遺物が今まで台湾で延命してきたのは、台湾人が買収と人情に弱いからであった。国民党は地方派閥を取り込むことで、台湾人を人情と金で縛り付けてきたのだ。
しかし、今回中共が直接台湾に乗り込んで、直接国民党政権と協議することになったことで、国民党と共産党の勝負となった。しかし1949年に国民党が共産党に敗れたように、国民党は共産党と交渉したり競争したら、絶対に勝てないことは明らかである。
中国人同士は陰謀や策略で勝負する。そうなれば、かつての蒋介石、今の馬英九に代表されるオツムの悪い国民党は、聡明で狡猾な共産党の術策にはひとたまりもない。
映画「色・戒」の評価を見てもわかるように、どうみても馬英九は馬鹿で、中共のほうが的を射ているし、中共のほうが学習能力も高い(とうか馬には学習能力がそもそも欠如している)。
だから、ここで、中共に国民党を打倒し、「中華民国」の息の根を止めてもらうのがよい。

■中共は台湾人が苦手
そうなれば、台湾人民や民進党が中共と対峙することになるが、陳水扁政権のときに中共が台湾への対応で相当難儀したように、あくまでも策略を展開したがる陰謀集団の中国共産党は、台湾人を相手にするのが苦手である。
国民党はもともと腐敗集団で、金がすきだから、金の使い方がうまかったが、中国共産党の場合、今でこそ経済発展で金を扱うようになったが、元来が共産主義で反金権思想が強いこともあって、金の扱いは下手である。だからこそ、余計策略や陰謀に傾斜する。

ところが、台湾人は天真爛漫で騙されやすいように見えて、実は中国人が得意とする「宣伝戦術」は通用しない。そもそも他人の話を聞いていないし、聞いていてもすぐ忘れるし、そもそも言語表現なるものを信用していない。だから、台湾人にいくら中国共産党が策略を使ってもまったく歯が立たない。台湾人は能天気に立ち向かってくる。
こういう相手は中国共産党は苦手だ。

これを歴史的に見てみよう。共産主義がインテリや若者をとらえた時期にも、台湾では共産主義=ボルシェヴィズムはあまり浸透しなかった。むしろ台湾のインテリは社会民主主義かアナーキズムに傾いたほうが多かった。1980年代後半の民主化過程でも、韓国では大量にボルシェヴィズムやその地方的変種のチュチェ思想に傾斜する若者が多かったのに対して、台湾人では左翼思想としては社会民主主義や、アナーキズムの現代版というべき左派リバタリアニズム(緑の党など環境左派)が受け入れられた。
要するに、チンピラ+商売人的気質である台湾人には、「一貫した鉄の思想体系」なるものは受け入れられないのだ。そうなると中国共産党は台湾人には手も足も出ない。
だから、中国共産党が国民党や「中華民国体制」を打倒した後、台湾人が中共と対峙することになっても、台湾人はまったく恐れる必要がない。梃子摺るのは中国共産党のほうなのである。

要するに、台湾人、国民党、中共は、三すくみの関係にあるのだ。

以前の中共なら、もっと知恵があって、三すくみを熟知していたから、「中華民国」を黙認することによって、「中華民国」を使って、台湾人を押さえつけるという方法をとっていた。それもまた「中華民国」が生きながらえた理由でもある。

■中共による「中華民国」打倒を希望
ところが中共は最近、なにを土地狂ったのか(こちらとしては御の字なのだが)「中華民国」すらも徹底的に抑圧し、封じ込めるようになった。そして今回の陳雲林訪問でも、「中華民国」に関するものが目に触れないように要求するにいたった。
おそらく急速な経済成長による自信過剰が招いた判断ミスだろう。しかもその経済成長ももはや実態としては崩壊しているのである。

今回、中共が「中華民国」と国民党を打倒する動きに出たことは、台湾人を「中華民国」の束縛と重圧から解放させる効果をもたらすであろう。台湾人には絶対に「中華民国」体制を打倒できないが、中共ならできる。しかしその中共も台湾人を相手にすることは大の苦手であり、取り込む術を知らない。

だから、今回の陳雲林の訪問と、それに対応した「中華民国」体制の自己否定の動きは、台湾の将来にとってプラスだといえる。

■馬英九を「先生」と呼ぶほうが実態に適っている
ついでに中共側に希望を述べておくと、6日午後の陳雲林と馬英九の会談では、陳は絶対に馬を総統などとと呼んではいけない。「台湾地区指導者」とも呼んではいけない。「先生」の呼称を堅持すべきだ。
実際、それは台湾の民意にも合致する。今の台湾人民の絶対多数は、もはや馬英九を総統とも指導者とも見ていない。政府の役人ですら、馬英九を馬鹿にしている。だから政府の仕事の効率や士気は全面的に低下し、「中華民国」政府はもはや脳死状態だ。
だから、陳雲林が馬英九を単に「先生」と呼ぶことは、実態に適っている。
「中華民国」体制はそうして死亡を宣告される。

■民進党は民意を把握し浮揚の契機をつかむべきだ
ところが、ここでも民進党の一部は愚かな判断を示している。「総統という立場と呼称で譲歩すべきではない」と要求しているが、おろかなことだ。まだ自分たちが「中華民国体制」で総統になろうとたくらんでいるからに他ならない。だから今の民進党は、馬英九と国民党の不人気の受け皿になりきれないで、低迷から抜け出せないのだ。

しかし、民進党もそのうち目覚め、浮上するきっかけをつかむだろう。その兆候はほのかながら見えている。
ひとつは、3日夜から始まり、6日までの予定立法院前で行っている座り込み抗議集会で、群衆の多くが「中華民国国旗」ではなく、台湾人旗を掲げていることである。
一部には「中華民国国旗」を掲げているのもいるにはいるが、ほんの一握りだ。

「中華民国」の警察が、「中華民国国旗」を没収して回っているのを見て、民衆は気づいているのだ。もはや「中華民国」は自滅していると。

また、6日午後に台北賓館で予定されている馬英九と陳雲林の会談に照準を当てて、同建物周辺を取り囲む抗議行動を計画している。そのための道路使用申請が台北市政府から不許可となったが、民進党は不許可であってもあくまでも決行する意気込みを示している。
もはや体制としては破綻している「中華民国」の地方政府が許可しようがしまいが、意味がないからである。

台湾市民社会が頭をもたげている。それは必ずしも中華人民共和国のメンツと衝突する「国民国家」を志向していないがために、中国は反対できない搦め手からの攻めである。21世紀になって国民国家以外の主体が台頭している中で、台湾市民社会が突きつける新たなモデルと試みに、国際社会はどう対応するのだろうか。
台湾社会を代表していない国民党政権の一部だけと「協議」して、悦に入っている陳雲林はいずれピエロとなるであろう。いや、「中華民国」体制をめちゃめちゃにしてくれたという意味では、同時に台湾人にとって「恩人」でもあるんだけどね。

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