トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ロボット 10/印/シャンカール監督

2012-07-07 21:10:39 | 映画

 久しぶりにインド映画が劇場で見られた。主役は『ムトゥ 踊るマハラジャ』でブレイクしたラジニカーント。共演は94年ミス・ワールドに輝いたインドの女優アイシュワリヤー・ラーイ。「ワケわからんが面白い」のコピー通り、期待した以上に面白かった。チラシのストーリー紹介はこうある。
天才工学者バシー博士が生み出した高性能ロボット、チッテイ。人間の心を持ったチッテイは、博士の恋人サナに恋をするのだが…。恋に破れ、悪徳工学者の手によって冷酷なターミネーターと化したチッテイは、破壊の限りを尽くし街をパニックに陥れる。世界的な危機をも引き起こしかねないこの暴走を止める術はあるのか!?

 インドは世界で年間映画製作本数が最も多い国だが、この作品は37億円という国内史上最高の製作費が費やされ、これまた国内史上最高のヒットを記録したという。米、英、韓でも公開され、興行収入が百億円を超えたそうで、世界的にもヒットしたらしい。
 やたら歌と踊りのシーンが挿入されるのがインド映画の特徴であり、この作品にもふんだんにそれが出てくる。『ムトゥ』と同じく音楽はA.R.ラフマーン。インドの歌は哲学的な歌詞があるのもよいが、「キミは蜂蜜の中の刺激的なワサビ」の箇所にはえっ?と思った来場者もいたはず。ちゃんと日本語のワサビと言っているのだ。ワサビはまかさインド原産と思いきや、wikiによれば日本原産とのこと。蜂蜜レモンは日本でも好まれているが、ワサビ入りの蜂蜜とはインド人の味覚は摩訶不思議(※インド人にも、日本人の味覚は理解不可能かも)。

 優秀でも工学者という人種はオタク傾向にあるらしい。研究に没頭すると恋人からの電話にも応じず、研究室に籠りロボット開発にひたすら専念する。恋人へのプレゼントも光物やブランド品ではなく、科学者の著書やヒンドゥーの聖典、脱毛用の電気シェーバー等、何とも ソソラれないモノばかり。ケチ故ではなく、単に気が利かないのだ。
 また、インドの階級制を感じさせられたシーンがある。研究所では研究員に飲み物を運ぶロボットがおり、所長にはコーヒーを持ってきても第二クラスには水だけ、第三クラスとなれば“セルフサービス”。映画特有のフィクションかも知れないが、あの国なら実際にありえる。

 汚職で悪名高いインドの警官だが、無免許運転と駐車違反を犯したチッテイにカット(賄賂)を要求するシーンがあった。ロボットのチッテイはスラングが分からず、カットと言われ側にあった刀で手を出した警官の手のひらをカットと斬り付ける。
 どの国にもならず者はいるが、ならず者集団が棍棒や曲刀のような武器を携え、チッテイを襲おうとする場面も決して映画特有の誇張ではない。宗教対立時にその類の武器が使用されるのも珍しくなく、見ただけでインドの曲刀はよく切れそうだ。

 バシー博士は高性能ロボットを軍事目的用にも開発しており、インド軍本部に認可を求めようとする。SFにロボット兵士は珍しくないテーマだが、近未来には本当に実戦配備されることになるのだろうか?
 だが、ロボットに兵士がやれるならテロリストも同じなのだ。バシー博士の恩師だが悪徳工学者は、大量生産したロボットを死の商人やテロ組織に売って大儲けすることを画策していた。爆弾テロをするロボットなど、映画でも背筋の凍る想いにさせられる。

 ヒロイン役のアイシュワリヤー・ラーイはインドのトップ女優、その美貌に魅せられた日本人も多いだろう。キュートでもあるが、碧眼なので私的にはインド女優らしく感じられない!では、インド女優とはどんなタイプ?と問われれば、やはり『ムトゥ』のヒロイン、ミーナが典型的なインド美人だと思う。日本の雑貨店でも売られているヒンドゥー教の女神のブロマイドから抜け出た様な女性であり、本当に絵のような美女がいるものだと感心させられた。



 歌と踊り満載でハッピーエンドというのがインド映画の定番であり、この作品もその例に漏れない。もちろん社会派映画も作られているが、娯楽作が大半と言われる。このような作品が量産されるのも現実はそうでないためなのか、前向きな人生観によるのか…



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