トーキング・マイノリティ

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仙台空襲を誘導したスパイ? その①

2010-09-06 21:41:39 | 仙台/宮城
 河北新報には毎月末、「KAHOU ひまわりクラブ」という付録が付き、先月末で№294を数えている。中には郷土史コラムとして「仙台万華鏡」が掲載されており、執筆者は石澤友隆氏。8月末の「仙台万華鏡」には仙台空襲時の異聞として、「生き続ける“スパイ誘導”説」を石澤氏は書いている。この異聞は私もコラムで初めて知ったが、冒頭の紹介文を除き、以下その全文を紹介したい。

-仙台空襲では、いろいろ語られながら今もってわからないことがある。「スパイの存在」もその一つである。先日、八木山市民センターに招かれて地域の戦時の話をする機会があり、参加者から「空襲下、愛宕神社(太白区向山)のそばにあったプールで電灯を盛んに降って、敵に位置を知らせていた人がいたというが本当か」と質問されて私は答えられなかった。
 偶然と言おうか、それから間もなくして宮城野区にお住いの女性(79歳)から、「空襲の夜、県庁の高いところから空に向かってピカッピカッと、照らしている者を目撃しました」という手紙を頂戴した。拙著『7月10日は灰の町-仙台空襲と戦争中の話』を読まれた方で、お便りは発行元の河北新報出版センターを経由して届いた。「スパイのことを話したら殺されると思い、長い間誰にも話さず今まで生きてきました。これは本当の話です」とあり、匿名を条件に詳しい話を聞くことができた。

 仙台空襲は昭和20年7月10日午前零時過ぎから約2時間余、123機のB29爆撃機が3機から5機編隊で25回にわたり仙台市中心部を焼夷弾ナパーム入り焼夷弾、ガソリン弾、集束爆弾で攻撃した。約2万戸が焼失、死者千四百~千六百人、負傷者千七百人、被災者のほとんどは戦争と直接関係のない一般市民であった。
 手紙の主、A子さんは県庁北側の北一番丁、日本赤十字病院内の看護婦養成所(2年間)一年生で、寄宿舎生活をしていた。「従軍看護婦になって、お国のために働きたいと師範学校への進学をあきらめて昭和20年3月、故郷の現大崎市から受験、定員50人に十倍以上の応募者がありましたが、運よく合格しました」

 7月9日夜は一度警戒警報が発令されたが解除になり、11時近くに再び警報が発令されている。A子さんら一年生は警報とともに病院の病棟の中庭に造られた防空壕に避難した。その後、北一番丁側で大声を上げている者がいる。以下はA子さんの話。

病院の前は県庁です。日赤病院の数人の男性職員が県庁のとがった屋根(バルコニー?)に向かって、『スパイの馬鹿野郎やめろやめろ』と何度も叫んでいました。私はスパイということが分からず見ていたら、光を空に向けてピカッ、ピカッと照らしている者がいたのです。後で知ったのですが、B29を誘導する合図だったということです。寄宿舎に戻ろうとしたのは10日午前零時過ぎ、すぐ空襲警報が鳴り、防空頭巾をかぶって救急袋を肩に防空壕に入り、壕内でしゃがんだ時、雨のような音がしました。後でガソリン弾であることが分かりました

 焼夷弾が次々落ちてくる。A子さんは防空壕から外に出たら、病院も寄宿舎も猛火に包まれ火の海である。友だちとも離れ離れになり、非常時の際の集合場所である台原(だいのはら)へ向かい、夜明けにやっとたどりついた。病院は全焼、看護婦1人、看護学生3人、患者12人、付き添い人 2人の合計18人が焼死している。

 現在八木山(太白区)にある仙台日赤病院は、大正13(1924)年、内科、外科の診療所としてきた北一番丁で開業した。太平洋戦争中は木造モルタル2階建て1,883坪の建物に7診療科を持っていた。昭和20年3月、横須賀海軍病院仙台赤十字病院と改称されて海軍の附属になり、主として戦闘などで負傷した軍人の治療にあたった。
 当時の外科医長・佐藤保男医師は、「海軍の患者は応急措置のまま横須賀の海軍病院から列車で送られてきた。レントゲン室で毎日のように弾丸の摘出手術をした。患者は3百数十人いた」と『仙台赤十字病院誌』に書いている。仙台駅に患者が着いても病院まで運ぶ自動車がない。看護婦や看護学生らが駅に出迎え、4人ひと組になって担架をかついで歩いて運んだ。A子さんはそう語り、『病院誌』にも同じような記載が見られる。
その②に続く

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