トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

シルクロード音楽の旅 その①

2009-05-23 20:21:54 | 音楽、TV、観劇
 昨日、東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)で、3か国による公演が開催された。チラシには「シルクロード音楽の旅、青年アレキサンダー大王の道、ギリシャ、エジプト、ウズベキスタンの芸術家たち」と長い名称が見え、さらに民音創立45周年記念の文字もある。私は今回初めて財団法人「民主音楽協会」の名を知ったが、wikiには「池田大作によって設立された」と記されている。己を日本の国王と豪語した人物が、財団法人協会に“民主”を名付けるのはブラックジョークの極みだが、チラシの裏の演出家・藤田敏雄氏による解説で気にかかる箇所があった。以下は藤田氏の解説の一部抜粋。

-参考文献に目を通していくうちに、次の様なアレキサンダー論に出会ったのです。
アレキサンダーは、エジプトで<人類はひとつである>という啓示を得たと言われている」(アーノルド・トインビー博士)
当時においては、これは抜きん出た発想であった。ギリシャ文明ではギリシャ市民(ヘレネス)以外を、野蛮人(バルバロイ)と見なして差別していたのだから。以来、アレキサンダーは<人類を統一する>という<見果てぬ夢>に生きた。その夢が、彼をインドの果てまで連れていったのです」(池田大作博士)

 藤田氏が引用した文献は池田氏とトインビー博士の対話集と思われ、ほぼ学会関連本なのは確かだ。要するに通常の歴史文献ではないといえる。池田氏と対話したトインビー博士は経済学者であり、著名な歴史家アーノルド・J・トインビーの叔父に当たる。ただ、アレキサンダーがエジプトで得た啓示は「アレキサンダーの父は、死ぬべき者(人間)ではない」であり、つまり神の子ということだ。現代人なら“神の子”(クリスチャンは違うだろうが)など噴飯モノだが、古代は神官によるお告げは絶対である。そして、アレキサンダーの母も息子が幼少の頃から、お前は神の子だと吹き込んでいたのだ。母も若い頃祭司を務めたこともあり、古代の多神教時代に神の子は珍しくない存在だった。

 私もアレキサンダーに関する本は何冊か読んだが、“人類はひとつ”などは初耳だ。「世界を統一する」という「見果てぬ夢」に生きたのは明らかだが、これはアレキサンダーが滅ぼしたアケメネス朝ペルシア帝国の方が先んじている。欧米の史家には専制君主国と評価の低いペルシア帝国だが、アレキサンダーがやったことはアケメネス朝建国者キュロス大王を踏襲している。
「人類を統一する」という理念に、創価学会くささを感じる者は私だけではないだろう。ここに歴史を現代のスローガンに合わせ捏造、歪曲するこの宗教団体の手法を感じる。広告塔と化した御用文化人がそれを語る悪辣さ。新聞広告を見てチケットを購入したが、その際渡されたチラシで初めて学会関連イベントなのを知った。ただ、初めに学会関連公演会と知っていたとしても、シルクロードの言葉に弱い日本人の常として私は行っただろう。特にウズベキスタン音楽団の演奏が見たかったからだ。ウズベキスタンといえば、かつてのソグディアナソグド人の末裔でもある。見ておいて損はないだろうと。

 主催が学会財団なのは気に入らなかったが、公演そのものは期待した以上によかったので満足した。初めにドイラと呼ばれるタンバリンを大きくしたような打楽器による独奏が行われた。少しアジア風の顔立ちの奏者は3個のドイラを使っての技を披露する。テンポが速く軽快な音色で会場からは拍手。奏者はまだ21歳のウズベキスタンの団員。
 続いて司会と解説を務める館形比呂一(たてがた・ひろかず)氏が登場。会場で渡されたパンフレットに彼の年齢は書かれていないが、バレエ、モダン、ミュージカル等の数々の舞台に出演とある。日本人から見ても小柄な21歳のウズベキスタンの奏者と違い、すらりとした長身だったが、茶髪でいかにも軽そうに見えた。もしかすると、館形氏も学会員か?

 公演の一番手はギリシアのネリー・ディモグル民族舞踏団。まず、古代ギリシアばりに流れるようなひだの入った白いローブをまとった女性が登場、ギリシアの古代舞踏を再現する。古代の舞踏は神事でもあり、神に捧げられる行為でもあったにせよ、踊り手たちの笑顔の全くない仏頂面はいささか興ざめだった。背丈は日本人と指して変わりなかったが、ギリシア彫刻を思わせる端正な顔立ちの女性の笑顔なら、さぞ美しかったと思うけど。
 続いて男性団員による演奏会。私は今回初めてギリシアの音楽を聞いたように思うが、哀愁を帯びたメロディーは何処か中東風に感じられた。同じ地中海の国でも派手で明るいイタリア音楽と対照的で、何故違いがでるのだろう?ギリシア悲劇という物語はあっても、イタリア悲劇など聞いたことがない。やはり民族性の違いだろうか?
その②に続く

◆関連記事:「インド知識人と池田会長の対談
 「キュロス大王-ペルシア帝国の建国者

よろしかったら、クリックお願いします
   にほんブログ村 歴史ブログへ


最新の画像もっと見る