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白と黒の革命 -松本清張 著

2005-06-25 22:14:24 | 読書/中東史
 イラン大統領選は保守強硬派のアフマディネジャド・テヘラン市長が地滑り的な大勝で終った。
 イラン・イスラム革命を描いた松本清張の本を思い出したが、私がこの本を読んだのは1979年に出版されてから20年以上も経てからだった。しかし、革命が起きた当時のイラン社会が丹念に書かれていて、イランに浅学な者でも楽しめるストーリーだと思う。

 あの革命が起きたばかりの頃のホメイニは無名の存在だったらしい。識字率さえ高くない国ゆえ一般民衆は彼について詳しい情報も知っていなかったが、シーア派特有のこの世の終末に救世主が降臨するという教義も背景にあったのか、パリから帰った彼を熱烈に歓迎した。帰国後早々この狂信的指導者はイスラムの名において国を統治する。職場に進出していた「裸の女たち(チャドルをまとわぬ者をホメイニはこう呼んだ)」など真っ先に解雇され、前パーレビ国王関係者は文官、軍人問わず裁判なしで多数粛清。が、前政権でも罪に問われぬ役職があった。以外にも秘密警察のサバクの連中は処刑されるどころか、革命政府に仕えて更に不満分子の摘発に精を出したそうだ。

 イラン(アーリア人の国の意味)は国名と裏腹に多民族国家で、中でもクルド人はイスラム革命政権に弾圧されたらしいが、結局どれほどの犠牲者が出たのかは未だに知れない。絶対的指導者となったホメイニは市民代表と会う際も鷹揚にうなづいていたので、政敵のサダム・フセインは「法衣をまとったシャー(国王)」と皮肉ったとか。

 イランにも知識人はいたが、彼らは日和見主義で付和雷同型、力もないと松本清張は辛辣に書いていたが、あながち酷評でもないだろう。今回の選挙を見ても改めてそれが見せ付けられた気がする。

 ホメイニ体制はイスラム革命と呼ばれているが、私にはイスラム型ファシズムとしか思えない。非寛容性、攻撃性、拝外主義、イスラムへの強要、個人の自由の否定、活動家集団による法の枠外での暴力行使・・・これらがファシズムでなければ、なんと呼ぶのか?
 しかし、ヒトラーのように民主主義からもファシズムが生まれるのだ。

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4 コメント

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Unknown (舎 亜歴)
2006-03-20 00:44:07
今回の選挙では知識人や学生などは投票をボイコットしています。ともかく、選挙はあってもシーア派聖職者の承認がなければ立候補もできないようでは民主主義にはほど遠いですね。
Unknown (Mars)
2006-03-20 19:41:19
こんばんは、mugiさん。



識字率ですが、字が読めるものからすれば、たかがですが。でも、本当に、字が読み書きできるということは重要だと思います。日本の統治下にあった韓国・台湾は、日本の政策がよかったか、悪かったかは分かりませんが、文字が読めない者は多くなく、それに反して、現在も成長を続けている国では。洋の東西を問わず、統治下(人によっては植民地下)の異人種に対し、学問を推奨した日本は特異ですね。



>しかし、ヒトラーのように民主主義からもファシズムが生まれるのだ。

これもある意味事実でしょう。ローマにおいても、身主主義→衆愚制→独裁政に変更したのです。そのことにおいて、一部のもののみ批判するのはおかしいと思いますが。

日本を独逸と比較して批判するものに、このことを理解している物は皆無だと思います。



日本の統治下だった国では、漢字を捨てるそうですが。文字を捨てること自体が自殺行為である(日本においても、日本語を重要視しないのも同様ですが)ことに、何故、理解できないのでしょうか?

コメント、ありがとうございます (mugi)
2006-03-20 21:42:21
>舎 亜歴さん



イランに限らず中東諸国では民主主義は根付かないような気がします。イスラムの教義自体が民主主義と相容れないし、欧州も中世は民主主義などなかった。他のアラブ諸国でもまっとうな選挙をすれば、イスラム原理主義政党が躍進しますから。このような政党が政権を取れば、また独裁をはじめる。
日独比較 (mugi)
2006-03-20 21:43:56
こんばんは、Marsさん。



植民地で異民族に対し学問を奨励し、学校建設に積極的だったのは日本くらいです。イギリスなどインド他の支配国に軍施設は作れども(負担は現地人)、学校建設はまず熱意がありませんでした。



古代ギリシアもはじめは王政でしたが、民主主義→衆愚制→アレキサンダー登場→ヘレニズム→ローマ支配に変化しました。

日本と独逸の比較例ですが、ファシズム体制下で心身障害者を前者は施設に収容しても殺害しませんでしたが、後者は国家の役立たずと始末さえしたほどです。ユダヤ人より早くドイツ人の心身障害者を“最終的解決”にしたのを、ドイツを持ち上げる者は知っているでしょうか?



自国の歴史を妄想と捏造で覆われている日本の統治下だった国では、何が自殺行為か理解も出来ないのかもしれませんね。

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