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百田尚樹氏講演会

2018-09-17 21:40:12 | 世相(日本)

 今月15日(土)、仙台市で行われた百田尚樹氏の講演会に行ってきた。会場は江陽グランドホテル5階、日本エネルギー会議主催による特別講演で、タイトルは「日本はどうなる そしてエネルギーは!」。シンポジウムの公式サイトもある。

 百田氏はとかく問題発言で知られる作家であり、サヨクのみならず保守系の中にも批判的な方もいる。「極めてバカな煽動的ウヨク」と一蹴した人もいたが、講演会自体は思った以上に面白かった。
 私が今回の特別講演に参加したのは、何といっても参加費がタダだったから(女はタダに弱い)。タダくらい怖いものはないと言われるが、氏が昔何かのТV番組出ていた時、「面白い大阪のオッサン」という印象だった。どうせタダなら聞いても損はないと思い、会場に足を運んだ。

 さすがベストセラー作家の講演会だけあり、来場者が多かった。男性が中心と思いきや、女性も多かった。やはり中高年世代が大半だったが、30代らしき若い世代も来ていた。講演会での出だしで言ったことは、聴衆を笑わせた。「此処に朝日新聞は来ていないですよね?」
 続けて「河北新報は?何年か前に河北新報に悪口を書かれたので、河北にはあまりいい印象を持っていない」とのこと。河北の“悪口”なら私も憶えている。2015年7月8日付の21面全面を使い、批判というより個人攻撃記事を載せており、拙ブログでも取り上げたことがある。百田氏が河北を購読しているとは思えないが、“悪口”情報がいち早く知れるのがネット時代なのだ。

 百田氏の住む大阪も台風21号で大きな被害を受け、12時間停電となったそうだ。この時の体験から、ライフラインの中で電気は何よりも大事で、水道より電気の方が重要かもしれない、と述べていた。電気が使えないと水道施設も機能を停止、水道の浄化も出来なくなるという。車で移動するにせよ、ガソリンの給油もダメ。給油するにも電気が必要だからだ。
 主催が日本エネルギー会議ということもあるにせよ、百田氏は台風や大地震のケースを挙げ、いかに電気を供給できるエネルギーが大切であることが改めて判った、と。

 そして百田氏は先の戦争で原因になったのは、ズバリ石油という。もちろん石油だけでなく他にも要素が複雑に絡んでいるが、直接の原因は石油であると強調していた。戦争直前、日本は石油の8割ちかくをアメリカからの輸入に依存しており、全面禁油で石油供給を絶たれたことが、戦争の引き金になった、と力説している。
 私がこれまで読んだ百田氏の作品は、『海賊とよばれた男』『カエルの楽園』『戦争と平和』の3点だけだが、はじめに見た『海賊とよばれた男』が最も良かった。講演ではこの作品について、かなり時間を割いていた。

 戦後の日本が高度経済成長を遂げたのも、中東から欧米諸国よりも安く石油が買えたから、という。石油価格は半分近くは輸送費であり、日本は欧米よりも近道で中東石油を購入できたそうだ。私も含め、この事情を今回初めて知った来場者は少なくなかっただろう。
 エネルギーを安く大量に使えることは経済に不可欠であり、いかにエネルギーを確保するのかが大切であるか、訴える百田氏。当然氏は原発容認派である。尤も原発事故を危惧する人々、原発反対を唱えるオバサンの気持ちも理解できる、と言っていた。
 但し、原発停止という事態になれば旦那さんは失業しますよ、と強引な論法を使っていた。廃炉にでもしない限り、原発は停止しても危険性では変わらないことは、案外知られていないかもしれない。

右派論客安倍路線の旗振り役」と河北新報に評されたとおり、今回の自民の総裁選では対立候補を、「あきまへん」とこき下ろしていた。野党幹部も大阪弁丸出しで「アンタの頭が不思議なんや」「アホ」と存分に“悪口”を言う百田氏。それでも東北人からすれば大阪弁での悪口は漫才のようで、ユーモラスに聞こえてくるのだ。
 氏自身も認めているように、早口の大阪弁で捲し立てるため、少し聞き辛いこともあったが、これが関西人のノリなのか?講演会終了後、男性来場者が、「やはり大阪人らしい話だったね」と感想を言っていた。

 講演会で初めて知った話がある。東日本大震災時、宮城県にヘリコプターで救援物資を届けた米軍女性パイロットがいた。百田氏はその名を出していなかったが、検索したらその名が載っているブログ記事がヒットした。米空軍嘉手納基地(沖縄県)第33救難中隊に所属するベロニカ・コックス兵長(当時23)。記事の内容は百田氏の話と殆ど同じだったが、宮城県民でも知らない人が少なくないはず。
 百田氏は「このような話を朝日新聞や河北新報が報じてくれたらよいのに……」と漏らしていたが、社内クーデターでも起きて、上層部を一掃若しくは粛清でもしない限り、この種の話題は絶対報じない。尤もそんな気概のある新聞記者自体、存在しないが。

 近日出版予定の次作PRも忘れないのは、いかにも流行作家らしい。タダで聞いた割には有意義な内容だった。

◆関連記事:「カエルの楽園
戦争と平和(百田尚樹 著)
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2 コメント

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その1週間前に (のらくろ)
2018-09-29 14:59:12
>今月15日(土)、仙台市で行われた百田尚樹氏の講演会に行ってきた。会場は江陽グランドホテル5階、日本エネルギー会議主催による特別講演で、タイトルは「日本はどうなる そしてエネルギーは!」。シンポジウムの公式サイトもある。

その一週間前、9月8日(土)、定禅寺ストリートジャズフェスティバルに1泊2日で仙台へ出向いた。

ここで明かすのは初めてだと思うが、この4月に金沢転勤となり、仙台へのアクセスは小松ー仙台のANA便とした。なぜなら、小松空港は丸1日駐車しても500円なので、1泊2日なら1,000円の駐車料で済んでしまう。加えて、小なりとはいえ、数年前からANAの株主なので、年に1人2回片道分(言い換えれば1往復分)の株主優待券を持っていたので、新幹線で片路22,000円ほどのところ、16,000円余りまで出費を抑えられたから。

ただし、宿取りに完全に出遅れたため、仙台どころか宮城県内の安宿は全部予約済み。でもさすがに2年仙台勤務をした経験から、県境を超えてすぐの福島ならどうか…と当たってみたら、福島駅すぐのところに素泊まり4千円(本体)の宿がみつかり、一も二もなくそちらを予約。

当日は、仙台空港に9時前に到着し、すかさず仙台まるごとパスを入手(仙台空港では現金かSuicaでしか買えない)、アクセス線を使って10時過ぎに仙台入り。

大判のホチキス2点止め案内パンフを受け取り、「さてどこへ行くか」と旧ダイエー、現イオンのカフェで思案。
47会場あってもお目当てのフュージョン演奏ステージは、「東二番丁スクエア」にほぼ限られるので、そこを中心に土曜、日曜の予定を組み立てた。

で、演奏を見に行ったのはこれら↓
https://www.youtube.com/watch?v=6DbK9krYkEA
https://www.youtube.com/watch?v=8bje68Xd-08
https://www.youtube.com/watch?v=wJNgUqaCbnE
https://www.youtube.com/watch?v=_NjEIlMMTnU
https://www.youtube.com/watch?v=wVx_qG9oLOM
https://www.youtube.com/watch?v=3jpMvoFI1FU
https://www.youtube.com/watch?v=iGldt2XIdXo
https://www.youtube.com/watch?v=pO3QSCuffls
https://www.youtube.com/watch?v=71A3P-yg3x0

事実はあと2つ3つのパフォーマンス(1ステージ最大40分)を見に行ったのだが、他人が公式に動画としてアップしているのはこれだけ。

ところで、今回はごく小さなTの字型ワンポイントステレオマイクと数千円のボイスレコーダーで収録し、名古屋へ帰る高速バス車中などで聴いてみたところ、思いのほか良く録れていた(ただしネットアップは絶対しません。あくまで私的使用の範囲に限定)ので、CDに焼きなおして職場の年下女子(といっても中学生の息子を持つシングルマザー)に「聴くか?」と尋ねたら喜んで持って行ったが、翌日済まなさそうにだが突き返された。音楽の趣味というのはほんとに個人個人で違うなーと痛感した次第。
Re:その1週間前に (mugi)
2018-09-29 21:54:38
>のらくろ さん、

 9月恒例の定禅寺ストリートジャズフェスティバルに、来仙されていたのですね。今年は2日間とも雨天だったし、初日は私用があったため、私は行きませんでした。そして今年4月から金沢に転勤されたことも今回初めて知りました。
 それにしても、小松空港は丸1日駐車しても500円とは安い!株主優待券を持っていたとしても、飛行機の方が新幹線よりも安いとは意外でした。福島駅すぐの宿が素泊まり4千円とは、仙台では考えられませんね。

 ジャズフェスの動画のリンク、有難うございました!のらくろさんはフュージョンがお気に入りだったのですね。四君子というグループも初耳ですが、検索したら浜松北高新2年生の4人バンドだった。まだ高校生なのに演奏が上手すぎ。
https://twitter.com/4kunshi

 昔のカセット録音は雑音が酷かったですが、最近のステレオマイクやボイスレコーダーは質が向上しているようですね。仰る通り音楽の趣味は個人差があります。ある人にとってはグッドサウンドでも、他の人には単なる“雑音”。同年代でも違うし、あれだけジャンルの異なる音楽があるのも、そのためでしょう。