トーキング・マイノリティ

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心霊と恐怖の仕掛人・中岡俊哉~昭和オカルトの舞台裏~

2022-05-20 21:40:36 | 音楽、TV、観劇

 5月19日放送のダークサイトミステリー「心霊と恐怖の仕掛人・中岡俊哉~昭和オカルトの舞台裏~」は、面白いというより懐かしかった。昭和49(1974)年7月に刊行された中岡俊哉の『恐怖の心霊写真集』(二見書房)はベストセラーとなり、'70年代にはこの写真集を見たティーンエージャーも多かっただろう。NHK_PRでは番組をこう紹介している。

「怖えー!」「すげー!」かつて子どもたちは《心霊写真》で大盛り上がり!放課後の話題を独占した心霊写真集の作者・中岡俊哉とは何者なのか?
 怖いのにやめられない!読者を夢中にさせる驚きのテクニックとは?心霊作家の原点は少女雑誌?恋とオカルトの意外な関係?打倒ユリ・ゲラー!中岡が挑んだテレビ超能力対決の行方は?時代の空気をとらえメディアと共に心霊ブームを生み出した作家の、知られざるふしぎ探求の人生に迫る。

『恐怖の心霊写真集』は好評だったのでシリーズ化され、心霊写真集シリーズを解説した記事もある。私も中学校の側の書店で『恐怖の心霊写真集』を立ち読みしており、「怖えー!」「すげー!」と感じつつ、見ることを止められなかった子供の1人だった。トップ画像はシリーズ第一作目で、二作目までは見ている。
 尤も写真集の中には疑わしいものもあり、被写体の側の林の茂みには人物の顔らしい影が写っていても、心霊写真には見えなかった例も少なくなかった。こじ付け写真に感じた子どもは結構いたかもしれない。

 番組にゲスト出演していた近畿大学文芸学部の前川修 教授の話では、これはシミュラクラ現象という。3つの点が集まると人の顔と認識してしまう脳の働きがあり、今となっては中岡はこの現象を利用していたとしか思えない。

 ただ、本当に怖い写真も多かったし、特にショッキングだったのは、『恐怖の心霊写真集』の最後に載っていた絵。有難いことにこの絵について解説した記事もあり、アメリカ人の女流画家が『霊示』を受けて描いた油絵という。この絵は不思議なことに毎夜のように変化を続け、アメリカでは、変化する霊体の絵として有名とか。私が見た時は中学生だったが、やはりトラウマ画像だった。
 
 1974年の日本は空前のオカルトブーム元年と言ってよく、映画エクソシストが公開されたのも同年だった。ユリ・ゲラーの影響で超能力現象も話題となったし、ТVを見ながらスプーン曲げにトライした少年少女も多かったはず。実は私もその一人だったが、どう頑張ってもスプーンは曲がらず、超能力には興味を無くした。
 オカルトブームは'70年代に突如始まったものではなく、'60年代から既に下地は作られていたのだ。中岡は60年代に少女フレンドに実話恐怖小説を寄稿しており、雑誌『小学○年生』にも実話恐怖小説が載っていた。日本ばかりか、欧米やアジア諸国まで小説の舞台になっていたのはなかなか手が込んでいる。

 一大ブームとなった心霊写真だが、間もなくそれを悪用する者も出てきた。貴方には幾つもの悪霊が憑いているとして、高価な壺などを買わせる、いわゆる霊感商法が行われるようになった。中岡は霊感商法にはひどく怒っていたそうだ。
 四半世紀近く前、職場の上司から甥が霊感商法に騙され、30万円もの壺を買ったという話を聞いたことがある。年代的に上司の甥と私は近いはずだが、なぜ霊感商法に騙されたのか、詳しい理由は聞いていない。

 中岡は2001年に胃がんのため死去する。享年74歳。死の前、彼は著書を除き、執筆のために集めた資料を全て破棄するように家族に指示したという。息子は資料の悪用への危惧と見ていたが、真相は結局謎なのだ。中岡の名は知らずとも、『恐怖の心霊写真集』という本を知っている方は多いだろう。

 心霊写真より前からUFOも話題となっており、こちらの仕掛人は矢追純一オカルトブームの中でも心霊写真よりも長寿だった。最近はТVでオカルト関連番組を放送することは殆どなくなり、ブームはやはり昭和で終わったのだ。
日本中がどうかしていた!スゴすぎる昭和のオカルトブームをふり返る」という記事は、昭和レトロに精通するライター初見健一氏へのインタビューが載っている。初見氏のこの意見は意味深い。
ばら色の未来を想像するのも、人類滅亡を空想するのも子供にとってはどちらも『面白いこと』なんです。ネガティブなものをなんでもかんでも規制する風潮って、なんだか気持ち悪いし、怖いですよね。まあ、当時はどう考えてもやり過ぎでしたけど(笑)

 当時オカルトに夢中になっていたのは子供ばかりではなく、大人も関連番組を夢中になって見ていたのだ。主婦向けのワイドショーにはオカルト特集が組まれ、ゴールデンタイムでもオカルト番組がよく放送されていた。ТVの黄金時代にはオカルトはエンターテインメントだった。大人も子供もこぞってオカルトに夢中になれる、良き時代だったのかもしれない。

 ブームが去った後、日本人がオカルトに無関心になった訳ではない。特集番組はなくなっても、オカルトはアニメ、ゲーム、漫画に多大な影響を与えており、現代のサブカルチャーはオカルトで溢れている。

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コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鳳山)
2022-05-22 23:09:53
中岡俊哉、懐かしい。オカルトはインチキが多いし信用はできないんですが、かつてのムーの愛読者としては超自然的な力はあると思うんですよ。沈む船からはネズミが逃げ出すと言いますし、まだまだ化学では解明できないものがあるのでしょう。
鳳山さんへ (mugi)
2022-05-23 21:34:28
 心霊写真や超能力にはインチキが目に付きますが、ムーでもこれらを取り上げていました。青少年は学校でオカルトの話題に熱中した時代。

 今から見れば、日本中がオカルトブームだった頃の昭和は平和だったと感じます。
Unknown (牛蒡剣)
2022-05-23 22:54:14
今やムーがコロナワクチン陰謀論に物申して
「バカ言うな」とたしなめる時代ですからねえ。
ムーや愛読者の方が色々耐性がついているのかもしれません。
牛蒡剣さんへ (mugi)
2022-05-24 22:45:35
 ムーがコロナワクチン陰謀論に物申していたことは知りませんでした。検索したらちゃんと記事がありましたね。

 新型ゆえにコロナワクチンを危惧するのは分からなくもないですが、陰謀論をこじらせた挙句、接種会場に押し掛ける反ワク団体はキチガイ沙汰といか言いようがありません。逮捕されたメンバーもいますが、中高年世代だったとは驚きました。
http://2nf2.rdy.jp/19/1649471661/

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