トーキング・マイノリティ

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実写版ベルばら

2018-06-04 21:10:08 | 映画

 行き付けのビデオチェーン店に置かれていたので、デジタルリマスターのベルサイユのばら実写版DVDをレンタルして見た。原題:Lady Oscar、全編フランスロケで、フランス政府からベルサイユ宮殿の撮影を特別許可されたことでも、1979年3月公開時に話題を呼んだ。しかし、作品への評価は散々、「総制作費10億円に対して配給収入9億3000万円と振るわなかった」有様。
 この作品は以前ТVで見たが、オスカル役のカトリオーナ・マッコールにかなり違和感があったし、何よりも原作と違い過ぎるラストにがっかりしたファンが殆どだったろう。久しぶりに見直しても駄作としか思えないし、アマゾンのデジタルリマスター版でも低評価が目立つ。

 それでも少女時代に夢中になったベルばら。週刊誌連載時からリアルタイムで見ていた世代には懐かしい思い出があり、語らずにはいられない。実写版で最も違和感があったのはオスカルだが、ロザリーも別キャラ同然だった。違和感がある理由は幾つもあるが、役者たちのスレンダーとは言えない体型だけではなく、ヘアスタイルの違いも大きいように感じた。
 DVDケース写真と異なり、実写版オスカルは長いブロンドをリボンで後ろにまとめている。軍務を就くのに長髪は邪魔になるし、リボンでまとめた方が清楚な印象がある。だが豊かなブロンドをなびかせていた方がビジュアル的には様になるのだ。これでは原作のようにブロンドの髪をひるがえせない。

 一方、ロザリーは原作と違い髪(金髪ではなくブルネットだった…)をリボンでまとめていない。さらにどう見ても少女とは言えない顔立ちで、可憐さがなかった。原作よりも外交的だったし、これでは春風ロザリーよりも蓮っ葉ロザリーじゃ?と言いたくなる。清楚なオスカルに蓮っ葉娘ロザリーだけで口あんぐりだが、髪型の違いだけでここまで印象が違ってしまうのか。但し、その他の重要キャラ、アンドレマリー・アントワネットフェルゼンには特に違和感がなかった。

 ストーリーの違いでファンが一番戸惑ったのは、ラストでオスカルはバスティーユ襲撃で参戦もせず死ななかったこと。アンドレは死ぬが、オスカルを庇ってではなく、兵士の発砲から逃れようとして背中を撃たれて絶命なので格好よくない。バスティーユ陥落で狂喜する群衆の中、はぐれてしまったアンドレを探し、1人さ迷うオスカルを映して幕だから、結末に怒ったファンは多かったはず。
 主人公がラストで死ぬ漫画は多いが、このような物語は日本人好みなのだろうか?尤も'70年代はそんな作品が多かったが、今の漫画は見ていないため不明だが違ってきたのか?



 バスティーユ襲撃前日、2人が結ばれるのは原作通りだが、場所はオスカルの豪華な部屋ではなく納戸である。上の画像がそのシーンで、使われなくなった家具などが置かれ、蜘蛛の巣までが鮮明に映っている。いくらなんでも此処で?と思ったが、この納屋は2人の子供時代には隠れ家的な遊び場でもあった。実写版では相応しかった場かもしれない。

 原作と違うシーンで、戸惑うよりも笑いたくなる場面もあった。ドレスを着たオスカルがフェルゼンと踊るのは原作通りでも、前者はちゃんと後者と話している。自分はオスカルの従姉妹と自己紹介、彼女は貴方を愛しています、と伝えるだ!やはり西欧人は愛の告白が大事なのか。むしろ何も告げずに去った原作版の方に、西欧人スタッフは違和感を覚えたのかもしれない。

 もうひとつは、オスカルと父ジェルジェ将軍との対決。准将まで昇進した原作と違い実写版では大尉止まりだったオスカルだが、群衆への発砲を命じた上官の命を拒絶、反逆者として捕らわれる。そのことで父の怒りを買うのは大体同じだが、父の成敗を敢然として受け入れようとした原作と違い、父娘は剣で戦っている。
 そこでアンドレが助けに…というのは原作通りにせよ、彼は剣でジェルジェ将軍に勝っている。実写版アンドレ、強すぎる。剣も銃もオスカルに及ばないという設定が替えられたのも、西欧人好みなのやら。そのためか、実写版は全編アンドレの男らしさとオスカルの女性的な面が強く表れていた。

 実写版最大の見どころはベルサイユ宮殿。広大な庭園は一見だけでも素晴らしいが、目玉はやはり鏡の間。見事なシャンデリアが数多く吊り下げられた鏡の間に集う王侯貴族たちは、華麗な歴史絵巻さながら。キャラやストーリーは不出来だったにせよ、世界遺産の宮殿が映るシーンだけは見応えがある。フランス政府もよく許可したものだ。今ではベルサイユ宮殿の映画ロケなど考えられないだろう。
 バブル以前、ベルサイユ宮殿を舞台とする映画を制作した日本人スタッフがいたことも驚く。興行的には大失敗だったにせよ、これほどの気概を持った映画人は今では昔話となった。



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