Hamlet

2005年02月27日 19時17分10秒 | Weblog
Hamlet
主な登場人物

亡霊 ハムレットの父の亡霊 Ghost of Hamlet's Father クローディアス デンマーク国王 Claudius
ガートルード 王妃、ハムレットの母 Gertrude ハムレット 先王の息子、現王の甥 Hamlet
ポローニアス 内大臣 Polonius レアティーズ ポローニアスの息子 Laertes
オフィーリア ポローニアスの娘 Ophelia ホレイシオ ハムレットの友人 Horatio
ローゼンクランツ ハムレットの学友、国王のスパイ Rosencrantz ギルデンスターン ハムレットの学友、国王のスパイ Guildenstern
フォーティンブラス ノルウェー王子 Fortinbras 旅役者たち ハムレットの依頼で劇中劇を演じる Players
墓掘り 道化 Gravediggers



あらすじ

デンマークのエルシノア城では、夜ごと、ものものしい警戒が行われていた。というのも、ノルウェーとの緊張が日増しに高まっていたからである。そんなさなか、衛兵の前に、先王ハムレットの亡霊が現れる。王子ハムレットは留学先から、新王の戴冠式・結婚式に参列するために戻っていたのだが、父王の死からまだ立ち直らないうちに、母の再婚である。もともとメランコリー気質のハムレットはますます陰鬱になり、自殺さえ考えている。そこに、父王の亡霊の知らせである。その知らせを受けたハムレットは胸騒ぎがしてならない。ハムレットはさっそく深夜、城壁に立つ。時刻どおり亡霊は現れ、ハムレットに向かって、現王クローディアスに毒殺されたときの模様を語る。

その日からハムレットは人間がすっかり変わってしまった。王は、いつもと様子の違うハムレットが気掛かりでならない。そこで、学友のローゼンクランツとギルデンスターンを呼びつけ、ハムレットの様子をうかがわせることにするが、ポローニアスは、王子の錯乱は、娘のオフィーリアに失恋したせいだと言いはる。ハムレットは、探りを入れに近づくポローニアスやローゼンクランツたちに、ときには狂人のように、ときには悩める若者のようにふるまい、尻尾をつかませない。

そこに旅役者の一行が到着し、ハムレットは、さっそく好きな悲劇のひとこまを聞かせてもらう。お気に入りの役者が、自分のことでもないのに涙を流し、声を震わせるのを見て、ハムレットは激しくこころを動かされ、父に復讐を誓ったくせに、なにひとつ行動できない自分を責める。王が手を下したというたしかな証拠を掴むべく、亡霊から聞いた殺害の場面を、王の前で旅の一座に演じさせることを思いつく。

恋わずらい説を捨てきれないポローニアスは、オフィーリアをハムレットに会わせ、その様子を壁掛けの陰から立ち聞きしようとする。そこへ王子が、生きること、死ぬことの疑問を自問しながらやってくるが、オフィーリアに気づくと、突然、彼女に向かって毒を含んだことばを投げつけて、走り去る。これを聞いていた王は、狂気の装いの奥に危険なものを感じとり、イギリスへ貢ぎ物の督促にやるという口実で、やっかい払いをしようと決心する。

王宮の広間は、これから芝居が始まるというので、華やいだ空気に包まれている。ハムレットはいつになく上機嫌で、オフィーリアをからかったりする。芝居の内容は、ハムレットがあらかじめ指図しておいたものだ。王殺害の場面になると、王はうろたえ、席から立ち上がり、恐れおののいてその場を去る。証拠を掴んだハムレットは、お祭り気分で歌まで歌い、今ならどんな残忍なことでもやれると言う。にもかかわらず、王妃に呼ばれて部屋へゆく途中、罪の懺悔をしている王を見かけ、剣まで抜いたのに、祈りの最中ではわざわざ天国へ送り届けるようなものだと、復讐を先延ばしにしてまう。

王妃の居間に入ると、ハムレットは母に向かい、情欲のとりことなって、神のような父を忘れ、見下げはてた男へと走ったことを責め立てるが、壁掛けの奥で物音を聞きつけ、王と勘違いして、ポローニアスを刺し殺す。それを聞いた王は、ハムレットを一刻も早くイギリスへやり、そこで暗殺させようと図る。

父を亡くしたオフィーリアは、正気を失い、歌を歌ったり、取り止めもないことを口走ってばかりいる。父の訃報をうけ、フランスから駆けつけたレアティーズを見ても兄と分からず、たわいなく人々に花を配る妹に、レアティーズは激しく取り乱す。そこへ、イギリスで殺されているはずのハムレットから手紙が届いたので、王はレアティーズを利用して、無傷で帰国したハムレットを葬り去ろうと企てる。ふたりが話している最中に、突然、オフィーリアの溺死が知らされる。

ハムレットは、墓地であたらしい墓穴を掘る墓掘りと話すうち、土から掘り出された昔なじみのヨリックの骸骨を見て、人間のいのちのはかなさを思う。墓は溺死したオフィーリアのものだった。妹の死骸を抱いて大げさに嘆くレアティーズを見て、ハムレットは、何万人の兄よりもオフィーリアを愛していたと叫び、つかみ合いの喧嘩になる。

宮廷に戻り、ハムレットがホレイシオに、船旅でのできごとの一部始終を話していると、レアティーズから剣の試合に誘われる。ハムレットは一瞬、いやな予感がするが、すべては天命と割り切り、試合に出かけ、レアティーズと腕試しを始める。この試合はハムレットを葬るため、王によって仕組まれたものだった。切っ先を丸めてない剣で刺されて、初めて策略に気づき、剣を奪って、レアティーズを刺し返す。そこへ、王妃が苦しみだし、ワインに毒が入っていることを告げて、息絶える。次には、レアティーズが、みずから剣先に塗った猛毒で死ぬはめになった、と告白し、王にこそ罪があると訴えて死ぬ。逆上したハムレットは、剣で王を刺し、毒杯を飲ませ、王を殺すが、すでにからだ中に毒はまわり、口も自由にきけなくなっていた。折しも、ポーランドから凱旋中のノルウェー王子を迎える砲声が聞こえる。ハムレットはホレイシオにあとを託し、フォーティンブラスをデンマーク王に推すと、息を引き取る。ハムレットの遺体が高々とかかげられ、弔砲とどろくなか、劇は終わる。

みどころ

『ハムレット』ほど批評家を悩ましてきた劇は類を見ない。毎年発表されるおびただしいほどの批評、論文をみてもそれが分かる。決定的な解決はありそうもない。にもかかわらず、というより、だからこそ、ひとは問いつづけるのだ。

だから、むしろ、はじめから人間の内面宇宙を問うことをテーマにした劇として見た方がすんなりと受け入れられるのではないか。しかし、人間の内面宇宙そのものが、すでに迷宮なのだから、ひとは永遠に問うことをやめられないはずだ。だから、『ハムレット』論も永遠に終わることはない。こうした堂々巡りが『ハムレット』の最大の魅力だ。すっきりとした答えがないと気持ち悪いというひとには勧められない作品だ。

しかし、この作品により、人類が初めて人間の内面と正面から向き合うことになるのだから、『ハムレット』が人類の精神文化に与えた影響は計り知れない。シェイクスピアもかなり力を入れて執筆している。ある学者の計算では、シェイクスピアはそれまでの作品で使ったことのない単語を約600語、この作品につぎ込んでいる。しかも、その多くは英語の歴史でも初めて使われる意味やことばだった。斬新な経験を表すには斬新なことばを必要とする。シェイクスピアは、人類がまだ経験したことのない宇宙を前に、その天才を振りしぼるようにして、新しいことばを生み出していったのだ。

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