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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー若葉のころ27

2010年07月30日 | 投稿連載
若葉のころ 作者大隅 充
     27
 小学校二年生のとき、偶々隣の席の一番足の速か
った男の子に消しゴムを貸しただけでクラスですみ
れは、アキラが好きなんだと噂され全くそんな気も
ないのに学年が変わるまで嫌な思いをした覚えがあ
る。しかし誰でも経験することだが、そんな根も葉
もない噂をされたために給食当番や身体検査で横に
並ぶ度変な緊張をしてお互い架空の雲に足を取られ
て空へ舞い上がる孫悟空みたいに意識すればするほ
ど空っぽの筈の心がどきどきした。
 今マリエントの事務所に戻って帰り支度をしてい
ると支配人もコックさんもさっき起こった立ち回り
のことが触れてはいけない事件となって、私と職場
の人たちとの間でアキラ君のときに感じた空っぽの
猜疑心が渦巻いて気まずい思いで岬の水産科学館を
後にする。
 私は、車を運転しながら「今あの人の妹が言った
ことは根も葉もないウソです。彼女は勘違いして何
か気が動転したんだと思うの。だからどうか彼女の
言っていることは信じないで!」とどんなに説明し
て誰もこんな平和な町に起きたマジメと思われてい
た私のおいしい事件は、そうだよねとは取り合って
くれないだろうと諦める。
 私は、帰り道赤い夕日に染まりながら車の速度を
知らず知らずのうちに上げているとウミネコが突然
フロントガラスに当たって跳ね飛ばされて逝った。
一瞬大きな黒い傘が目の前にガバっと開いたように
視界が閉ざされてブレーキを踏んでウミネコが後ろ
へ飛ばされるとまたアクセルを踏む。私の車は空気
を抜かれた風船みたいに蛇行運転する。私はすぐに
気を取り戻し車線を直線に修正して前方を見るとガ
ラスの下の方に丸い血の塊が張り付いているのを目
の当たりにする。そしてさらに頭の上の方では、ウ
ミネコの群れが黒い雲となって旋回している。
 私は、後続車がいなくてよかったと冷や汗をかく。
もし車間間隔がなく後ろに車が走っていたら、あの
場違いなウミネコにぶつけられて蛇行運転したとき
追突事故を起こしたかもしれない。海風の風向きが
変わったからと言って急降下して私の車に突撃しな
くてもいいのに。何であの鳥は慌てていたのか。ま
ったく愚かなことだと窓外を覗くとウミネコの群れ
のさらに上空にオオワシが一羽赤い太陽を背に黒々
と舞っていた。
 なるほどそういうことだったのかと私は納得して
湾岸道路を下る。そして最初の信号で停車したとき
、急にあの輪竹由香というあの人の妹の鬼のような
形相が気になる。
 もしかして彼女は、輪竹さんのことを愛している
のではないか。私のことを「泥棒猫」と吐き捨てた
あの刃物のように尖った言葉の意味が言われている
うちにはわからなかったけれど、よく考えてみれば
あれは愛慾の言葉ではないか。手も握ったことのな
い私に対する彼女の嫉妬心から発している悲鳴だと
とれば納得がいく。あれは彼女が龍彦さんを愛して
いるから出る言葉。それもかなり深く思いつめた気
持から来ている。
 でも由香というあの女の子は、輪竹さんの妹のは
ず。それがどうして・・・・
 ひょっとすると由香という妹は血がつながってい
ないのかもしれない。輪竹さんの母は再婚したと言
っていた。その義母の連れ子だった可能性がある。
これは勘だ。
 邪推でも妄想でもなく事実であると言うことに少
しの戸惑いもない。私は今確信をもってそうである
に違いないと思う。
 あれだけの嫉妬心と憎悪をもって輪竹龍彦さんか
ら私のことを聞いたのか、何かの日記やメモでも見
たのか、兄と東北の地でデートをして付き合ってい
るというだけであれほどの攻撃性を帯びてしまうと
いうのは、どう見て普通の兄妹では考えられない。
何かがなければ決してあのような行為はできない。
 それは、愛する力のなせる技。愛する力があまり
にも強いために自分の愛の対象を奪いかねないもの
に対しては激しい攻撃をしてしまうのだ。私は、明
らかに輪竹由香という若く美しい娘が義兄の龍彦さ
んに深刻な恋愛感情を抱いていることを悟った。
 そんなおそろしい想念が私の頭の中でぐるぐる廻
りだした頃、八戸港へ辿りついた。
 しかしその夕焼けの港は、今までの港の雰囲気と
まったく違う。上空を何台ものヘリコプターが飛ん
でテレビの取材クルーが港湾宿舎や事務棟に群がっ
ている。桟橋には、海上保安庁の船がちょうど出港
しようとしている。
 嵐が街から去ったのにこの港には再び嵐が吹き荒
れているようだ。
 私は、いつもの習慣で港湾宿舎の龍彦さんの郵便
受けの名前を見るだけの巡礼で三脚とビデオカメラ
のバリケードに囲まれた宿舎前に向かう。そして若
い記者と思われる人に何かあったんですかと訊ねる。
その答えはこうだった。
「大嵐のあと北海道からのフェリーと海洋調査船が
衝突したの。海難事故!」
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千秋庵の北緯43度と小熊のプーチャン~シーちゃんのおやつ手帖145

2010年07月30日 | 味わい探訪
北緯43度…千秋庵の本拠地・札幌が北緯43度線
上に位置することから名付けられたお菓子。
ほんのり塩味が効いた、ヨーグルトが原料の軽
いお煎餅です。一缶1732円。

小熊のプーチャン…愛らしい小熊の顔のバター飴。
北海道産の純良バターをたっぷり使い、最良質の
有平飴に仕上げています。一缶630円。

コメント (2)
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