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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局ー4-

2008年04月04日 | 投稿連載
  こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
       4
「記念撮影なんだから、しっかりしなさい。純ちゃん。」
と母親の佐藤沙織は、小学五年生の純の頭を撫でた。
「ライトが眩しいのかしら?」
カメラから離れて春は、少年の前に跪いて、純の目線で声
をかけた。
純は、母親の手を払いのけてしゅくしゅく泣くばかりだった。 
「純ちゃん。もう泣かないの。病気だから仕方なかったのよ」
声は、小さくなって収まったようにみえるが純の肩は、
小波のようにシュクシュク震えて甦る悲しみが絶え間
なく続いていた。
「すいません。そちらのせいではないんです。三日前に
買ったばかりのチワワの子どもが死んじゃって・・・。
ぶり返すんです。悲しみが。この子。」
「そうだったの。やさしいのね。純くん。」
春は、思わず涙に汚れた少年を抱きしめた。
少年の涙のシミがまだ乾かない濡れた頬が春の豊満な胸に
押しつぶされそうになった。
「いつでもその子犬ちゃんは、純くんのことを空の上
から見守っているよ・・・アメリカインディアンは悲し
みは分かち合えば半分になるって言うのよ・・・
私もいるからお母さんと三人で3分の一ね。」
春のその声が、シャーマンの呪文のように響いて落ち着
いてきたのか、純少年は、春の胸に揺すられながらヒク
ついていた悲しみの痙攣が止まった。
「よかったね。お姉ちゃんに抱っこしてもらって・・・」
母親がそう言いながら純の頭を撫でると、少年は春から
離れて、涙を拭いた。
そしてなんだかぽおっと雲に乗ったみたいな気分で顔
を赤くした。
春も外れたブラウスの三つ目のボタンをはめながら
立ち上がって、輝く笑顔を母子に注いだ。
「有難うございます。」
母親が頭をさげて、とんでもないと春は目の前で手の
ひらを振った。
そのとき。スタジオの白いドアのガラス窓からふたつの
バラとふたつの覗いている顔の四つの目とぶつかった。
犬飼健太と水野ハルだった。
ハルは、深々とお辞儀をして、健太は、心持ち少年が
羨ましいといった顔をして口をポカンと開けたまま
大きく手を振った。
「ちょっと待って貰えますか。」
「はい」
春は、母親沙織に一声かけて大股にドアの方へ歩き
出した。
「家族写真?撮るんすかですか?健太さん」
ドアを開けて、健太とハルが並んで同じバラの花束を
もって立っているのを見て春は、ポートレートに健太
がお婆ちゃんを連れてきたとてっきり思った。
「違う。違う。なんでこんな、バァバァと。」
「ごめんなさいね。バァバァで。」
「違うの?」
「今日が春ちゃんのカメラ屋が開店だっつうんでお
祝いの花もってきたんだぜ。」
「ああ。有難う。わざわざー」
健太から花束を受け取った春が今度は、ハル老婆の
方へ顔を向けて、?って表情をした。
「私も開店祝いです。水野ハルといいます。あなたのお
祖父ちゃんの半次郎さんの知り合いです。」
「お祖父ちゃんの?」
「はい。すみません。本当はその花、半次郎さんに
渡そうと思って買ったの。」
「お祖父ちゃん亡くなりました。」
「さっき花屋さんでそれを聞きまして。」
「ツルさん!」
「まあ、立派なアトトリさん。」
「画材店じゃなくフォト・スタジオにしちゃったんです」
「素敵ね・・・」
見回すハルからバラの花束をとって春の持っている自分
のものといっしょに受付の方へ健太が持っていく。
「花瓶ない?オレ、いけてやるよ。」
「花瓶?うーん、あったかな。」
と春も受付の方へ行ってカウンターの下からディスプレー
用の花瓶を取り出す。
「あった。」
「ちょうどいいじゃん。さすがアメリカ帰り趣味がいい」
流しで水を入れてカウンターの上にバラを入れて
健太が飾った。
「有難う・・きれいよ。」
「いやいや・・・・」
しばらくの間華道家のような渋い顔でバラを眺めながら、
得意そうに健太が立っている。
ハルがその落ち着ききった健太とスタジオで仕事途中の
春の気持ちのズレを察して、
「お客さんがお待ちでしょ。」
「ああ。そうそう。ごめん。健太さん。また後で・・・」
助かったと春は、急いでスタジオの中へ駆け込んだ。
「わかったよ。ここで待ってるよ。」
受け付にどっかと腰を下ろした。
閉まったスタジオの白いドアが再び開いて、
「水野さん。ちょっと待っていてください。すぐに終
わりますから・・」
と春が顔を出して告げた。
「はい。どうぞ。お仕事してください。」
「ごめんなさい。」
春は、スタジオのドア再び閉めた。
ハルは、店舗の写真が飾られたショーケースのある
スペースへ歩いて長椅子に座った。
店内が急に静かになった。
受付の怪しい目付きの健太と長椅子の上品な老婆が
目線をカチカチと行き場なく合った。
微笑むハルに健太は、つまらなさそうに言った。
「お婆ちゃん、ネコさんのこれ?」
右手の小指を立てた。
「はい。」
ハルはすずしそうな顔をして言った。
健太は、カウンターの脇にあるキッズローブの祝いの
花束のネームプレートを手荒に裏がした。
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八景島とモンドール~シーちゃんのおやつ手帖42

2008年04月04日 | 味わい探訪
♪港のヨ~コ 横浜 横須賀~♪なんて、宇崎竜童さんの唄じゃないですけど、
今日は横浜と横須賀のお菓子をご紹介。
八景島シーパラダイスのクッキーは、とにかく形が可愛いのでお土産に喜ばれます。
横須賀の海軍カレーに因んだカレー風味のお菓子は、ちょっと食べるのを躊躇しま
すが、食べてみると意外に美味しいのでお薦めです。
 
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