「白鯨」の第一人称の語り手であるイシュメールの名は、旧約聖書に出てくるイシュマエルに由来する。「聖書のイシュマエルはイスラエル人の祖とされるアブラハムが、その正妻サライの一時的な不妊のゆえに、サライの同意を得て奴隷女ハガルに子を生ませようとした。にもかかわらずサライが嫉妬して、ハガルにつらくあたるようになったので、それに耐えかねたハゼルが砂漠に逃亡して生んだのが、このイシュマエルである。サライが100歳になった時に、神のおぼしめしによって、アブラハムとの間にイサクという男の子が生まれたので、イシュマエルとハガルは再びアブラハムの家から追放された。そして、イシュマエルがアラブ人の祖に、イサクがユダヤ人の祖になった。」(「白鯨」 (八木敏雄訳)の訳注を読みやすいように改竄した。)