旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

映画『ライムライト』

2006年12月27日 23時32分40秒 | Weblog
       バスター・キートン





過去の名声から転がり落ちてゆく老コメディアン。老いという現実が彼に悲しみもたらし、観衆を沸かせることができなくなっていることに悩む。

老コメディアンの助けで心の病を克服した若きバレリーナは、ついにプリマとしての名声を得る。老コメディアンに仕事はない。若きバレリーナは老コメディアンにプロポーズをする。彼は固辞する。

若きバレリーナの口利きでピエロの役をもらう老コメディアン、ピエロ役は不評で、彼はいつしか若きバレリーナの前から姿を消す。

そして再会。若きバレリーナと知人たちの助けで舞台に立つ老コメディアン。観衆の前で笑いをふりまいたあと心臓発作で倒れる。舞台で舞う若きバレリーナの姿を見つめながら老コメディアンは静かに息をひきとる。

テーマは老いと愛であろう。

ありふれたストーリーであるが、老コメディアン役を喜劇王チャップリンが演じているので妙なリアリティーがある。しかし、ライムライトのチャップリンは、老いて醜く、その口元は不気味である。

最終章で、老コメディアンの相方が演じる立ち振る舞いが強く印象に残った。バイオリンを奏でようとする老コメディアンの伴奏をする老ピアニスト役である。

目の前に置いた楽譜を何度も何度も台からずり落とすのであるが、ずり落としては台に置き直し、落としては置き直す。その様が実に滑稽なのである。

一生懸命やろうとするがうまくいかない。それでもなんとかうまくやろうとしてまたとちる。表情がないというのに骨太の演技である。

後で調べたら、アルコール中毒で自滅しかかった、かのバスター・キートンそのひとであった。