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病気がちな’たかぼん’の何気ない日常(備忘録)

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医学生理学賞 テロメア

2009年10月14日 | my favorite things
科学分野のノーベル賞の対象となるのは、

1.長らく未解明となっていた根本的問題の解決
2.非常に興味深い定理や法則の発見
3.非常に社会にとって有益技術などのな発見

のいずれかであることが多い。1.と2.は重なる部分もありますが。

物理学賞は1.と2.、複合の場合が多く、ニュートリノの発見の
小柴さん、中間子の発見(予言)の湯川さんなどはその例か。

化学賞はの場合は3.が多く、田中耕一さん(分析機器の発明)
や野依良治さん(不斉合成反応の発見)などはその例になるのでは。

医学生理学賞は1.と3.の複合が多く、日本では唯一の医学生理学賞の
利根川さん(免疫遺伝子のメカニズム)もその例でしょう。

で、今回のテロメア(及びテロメレース)についても、1.と3.
の貢献度が高いです。

1.の貢献では「DNA末端複製問題」を解明したことに対して。
3.の貢献では医学の発展、特に老化やガン化の解明につながった。

それではシロウトにもわかるように順番に説明していきます。
興味ない人もいるでしょうから、その人はこの辺で。


まずは1.の「DNA末端複製問題」から。
図にそって説明していきます。

図①
生物の設計図であるDNAは、向きのある二本の矢(→)が組み
合わさった一本の糸のような構造をしています。「DNAの二重鎖」
と呼びます。それぞれの鎖には、G、A、T、Cの四種類の文字があり、
その文字情報に設計図の情報が書き込まれています。図の点線の一つ
一つが、一つの文字をあらわしていると考えてください。
ごく簡単に言うと、GATTCGの文字列が、「腕を作れ」という
情報だということです。
※実際はこんな短い文字数じゃなくて、「腕を作れ」には数万の
文字数が必要です。

生物の体は、たくさんの細胞(人間では約100兆)からできていて、
その細胞の中にDNA二重鎖が1セットずつ入っています。

図②
細胞は分裂して数を増やすのですが、そのとき、DNA二重鎖も一緒に
1セットから2セットに増えます。増えるとき、まずは二重鎖が離れます。

図③
で、ここからがちょっと難しくなるのですが、矢(→)の反対側の文字
を書くとき、書き始めに、RNAという物質が使われます。RNAはDNA
の親類みたいなもので、ほぼ同様の働きをしますが、構造が若干違います。
なぜRNAから書き始めなければいけないかというと、それは、約30億前、
地球に最初に生まれた生物の設計図が、RNAだったからです(筆者の推論)。
「RNAワールド」という言葉を聞いたことのある人もいるかと思います。
最初のいくつかの文字を書く役目をするのが、プライマーゼという酵素です。
これは、原始の生物の名残の酵素だと思います。
二本の矢(→)のそれぞれの末端から、プライマーゼによってRNAが
作られます。

図④
最初のいくつかのRNA文字を書いたあと、酵素の引継ぎがおこります。
プライマーゼから引き継ぐのがDNA複製酵素というものです。
DNA複製酵素ははしっこまで合成を続けます。
青い点線は、新しく合成されたDNAをしめしています。

図⑤と⑥
最終的に、図⑤にしめした2セットのDNA二重鎖ができあがります。
ここで問題になるのが、赤の点線でしめしたRNAです。RNAはDNA
ではないので、RNAを分解する酵素で壊されてしまい、図⑥のような
状態になってしまいます。つまり、DNAの両末端の文字が失われて
しまうのです。これが、「DNA末端複製問題」と呼ばれるものす。


人の細胞は、一個の受精卵から、45-46回分裂して赤ん坊になりますが、
もしこの末端問題が解決しないと、設計図は1回の分裂ごとに、はじっこから
失われてしまうわけです。設計図が失われれば、当然、生物はできあがりません。

わかりやすく意訳してしまうと、読もうとした本が、毎日、最初からと最後
から、1ページずつ、破かれてしまうようなものです。どう読んでも、
全体を把握することはできなくなります。

この「DNA末端複製問題」を解決したのが、今回の3人、ブラックバーン、
グライダー、ショスタクです。解決方法にも、レトロポゾン
(エイズウイルスの酵素とか)が出てきたりと、いろいろと生物学的に
深いはなしが満載なのですが、専門的になるすぎるので・・・

簡単にいうと、DNA末端にはテロメアという特別なDNA配列があり、
そこにテロメレースという酵素が働いて、末端は短くならないのです。


次に「医学の発展、特に老化やガン化の解明につながった」ということを。

このテロメレースという酵素、実は我々のカラダを構成する大部分の
細胞では働いていません。なので、末端は少しずつ削られているのです。
人の細胞をとってきて、人工的に培養すると、ある回数以上は分裂しなく
なってしまいます。
死ぬわけではないのですが、それ以上は増えないのです。
年齢の若いうちは分裂できるけども、高齢になるとどんどん分裂能力
が弱まって、ついには分裂しなくなる。つまり、人はある意味、老化
して死ぬ運命が決まっている、ということが、このテロメア問題から
結論できます。
※わかりやすくするために、短絡的な説明になっていますが。

じゃなんで、人はずっと何代にもわたって生きてるかというと、
生殖細胞だけは、テロメレースが働いているからです。
いまはやりの、ES細胞とか、山中伸弥教授が発見したiPS細胞
でも働いています。

で、ガン細胞では、テロメレースがじゃんじゃん働いている
ことがわかってきています。それで、周りの細胞よりじゃん
じゃん分裂して、大きくなって悪さをするわけです。
テロメレースを標的とした制癌剤の開発なども進んでいます。

と、今回はちょっと複雑でしたが、わかった気になった人が
何人かでもいれば幸いです。

最後にひとつ、昨日の核のはなしにつながるものを。図3で
RNAがプライマーとなることを発見したのは、岡崎 令治さん
という日本の研究者で、1966年のことです。DNA合成について
は非常に初期の画期的な発見で、生きていれば、日本最初の
医学生理学賞をとっていたかもしれない人です。彼は、広島
での被爆による急性白血病で、44歳の若さで亡くなっています。
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