MSX研究所長の日常

80年代を駆け抜けたオールドパソコンMSXの研究の日々を綴ります。

時代はいかせ男を求めているのか

2005年07月16日 02時14分12秒 | MSX
Yahoo!オークションでMSX2版「韋駄天いかせ男3・戦後編」が18,000円にて落札されるという異常事態が起きました。私がヤフオクで買ったときは2,000円だったのに!一体何が起きたのでしょうか。

ファミリーソフトから1989年に発売されたこのゲームソフト、正直ゲームと言っていいのかどうかも怪しいようなシステムの上にMSX史上のみならずゲーム史上で1・2を争う発狂ストーリーが乗っかった怪作です。いつかはレビューしようと思うものの、あまりの一般性のなさの前にどういう切り口で紹介したものだか悩み通しています。第一「いかせ男」レビューをする前に、もっとメジャータイトルをキッチリ押さえないといけませんねそうですね。

ザッと解説しますと、言葉だけで人をイカせる(=絶頂に導く)ことのできる「いかせ男」の歴史と人生を描いた一大巨編であります。なんせパッケージで3作(+TAKERU専用で1作)もあります。プレイヤーのすることは、相手をイカせうる言葉の組み合わせを選び、ゲージをMAXにすることだけ。ストーリーは勝手に進みます。このストーリーがなんの分岐もない一本道なのですが、特に「戦後編」は終戦の混乱期の中をもっと混乱したお話が突っ走ります。チカンに励む復員軍人をイカせることで女学生を救い、飢えた少女の手から納豆が無限に出るようにするなど「いかせ男」の活躍が描かれます・・・と文字で書くと意味不明ですが、本当にそうなんです。もちろんゲームをやっても意味不明です。ちなみに最後はいかせ男が○○○に拉致された後、戦争が勃発してしまいます。89年当時としては信じられない斬新さです。

これに味わい深いグラフィックとオッペケペーな音楽が乗っかって、すっかりカオスの世界が展開します。そして何より凄いのは、セーブ機能がないことです。パスワードセーブもありません。買って一気に終わらせるしかないのです。まあ2時間くらいで終わるのですが、定価なら6,800円出してその日のうちに終わらせることが前提というトンデモないゲームソフトです。よくこれでマスコミに叩かれなかったと思いますが、こんなソフトを欲しがる変態は極めて限られたためか現在ではちょっとしたレアソフトです。かろうじて「ディスクステーション8号」に「人生の意味」の体験版が載ったことがありますが、それ以外で見たことのある人はほとんどいないでしょう。もともと需要がないので値段もつかなかったんですが、まさか定価の3倍近くになろうとは思いませんでした。

ちなみにフツーに遊んでみたい方は、プロジェクトEGGでパッケージ版の3作は発売されているので(各700円)、無理にパッケージを探す必要はありません。

韋駄天いかせ男~麦子に逢いたい~
韋駄天いかせ男2~人生の意味~
韋駄天いかせ男3~戦後編~

3作ありますが、一番デキがいい(というか狂いっぷりが最高な)のは文句なしに「戦後編」です。家庭用のゲームには刺激が足りない!というアナタ、いかがですか?

しかし一番笑えるのは、メーカーの名前が「ファミリーソフト」というところでしょうか。ファミリーは昔からちょっとヘンなゲームをよく出していましたが、この「いかせ」は人気もないのにシリーズが続いたことも含めて「どこがファミリーなんじゃ!」と思わず言わずにはおれません。それでも淘汰の激しい業界でしっかり今もある所が大変不思議なメーカーです。