チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

2008年03月25日 20時31分06秒 | 小包第4期
210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

小包第4期 スロヴェニアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票

小包ラベル:Ljubljana 1 スロヴェニア語で表記されたラベル
オーストリア帝国時代のドイツ語で表記されたラベルとは全く異なる、新しいスロヴェニア独自のラベルを作って使用しています。
番号1996は、郵便局名とは全く紙質の違う別の紙に印刷されたものを使用しています。

料金手書き:
右上20 Krona切手の左側に22.40の記載、
中央右下に16, 4, 2.40, 22.40の記載

切手:
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119)
スロヴェニア2次チェインブレーカー60 para (Mi.128)
合計 5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar)

料金計算:
重量料金7 kg---4.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金622 K (155.5 D)---200 Dinar以下の代金引換、宛先住所での支払い有り1.0 Dinar
配達料金---0.6 Dinar
合計5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

左下の青紫インクの622, 6.10, 628.10の手書きの解析
(1)622: 代金引換金額622 K (155.5 D)に一致するため代金引換金額と推定。
(2)6.10: 代金引換金額を小包発送者に郵便為替で送金する料金と推定
小包第4期の国内郵便為替料金によると、
為替金額が100 Dinarを越えて200 Dinar以下の場合の料金は0.70 Dinar、
為替金額が50 Dinarを越える場合の郵便為替の受取人の住所での支払い料金は0.20 Dinar
合計 0.90 Dinar (3.60 Kronen)

これだけでは6.10-3.60 = 2.50 Kronenが、まだ不足しています。
郵便為替証書の料金が2.50 Kronenの可能性も無きにしもあらずですが、これではあまりにも高すぎると思われますので、この可能性はないと思われます。
現時点で最も可能性が高いのは、
(a)郵便為替の速達料金 60 para (2.4 Kronen)
(b)郵便為替証書の料金 0.1 Kronen (10 vinar)
合計 2.50 Kronen であると考えられます。
参考文献: Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 38/89, (1989),
Beilage Nr.2 DIE POSTGEBÜREN IN KÖNIGTRICH DER SERBEN, KROATIEN UND SLOWENIEN 1919-1922
付録No.2 セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の国の郵便料金1919-1920

消印: LJUBLJANA 1 24 III 21 -0 2b (LJUBLJANA 1郵便局1921年3月24日、消印識別記号2b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

注意:消印の文字の位置
ユーゴ型のローマ字とキリル文字の二文字表記の消印は、
①ヴォイヴォディナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
②ボスニア・ヘルツェゴビナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
③スロヴェニアでは、上側がローマ字、下側がキリル文字
となっています。
スロヴェニア民族はローマ字だけを使用し、キリル文字を使う習慣が全くないため、ローマ字を上側に配置していると考えられます。

このカバーの希少性の解説
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119, 発行数6万8600枚)のカバーの入手は困難です。
発行数が6万8600枚と言っただけではピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数6万8600枚の1次チェインブレーカー20 Kronaは、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が各々1万7400枚、3万1400枚も少ない切手です。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。


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