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青少年のネット依存と動機づけの考え方

2015-02-15 15:45:38 | ネット依存症
昨年から何回か依存症についてのセミナーに参加しました。
その中で、私が一番「なるほど」と思えたのが「動機づけ面接」の理論でした。
ちなみに、この「動機づけ」という考え方は
それまで「12ステッププログラム」なんかについては
反応が薄かったダンナが、ある程度理解してくれたのには
ちょっとびっくりもしました。

このところ子どもを持つ親御さんたちにとって
一番深刻な問題になっているのが「ネット依存」だろうということは
以前にも紹介したトリーさんの「ネット依存、スマホ依存から小中学生を
守るために」というブログなどを読むとよく分かります。

「子どもが勉強もせずスマホばかりやっている」「依存症なのではないか」
と心配し、悩んで解決法を探しても、私も前に書きましたが
「無理に取り上げたり、禁止するのはよくない」「ルールを決めて」
といったアドバイスくらいで、あまり役に立たないと
思われている方が多いかもしれません。

青少年のネット依存、スマホ依存に「動機づけ」の考え方を使うというのは
今のところは、医学的に実証されているわけではありません。
けれど、今から症例を集めて、臨床をやって、それから対処法を決める
なんて悠長なことをやっていたら、とても間に合わないと思います。

ですから、依存症の治療に、一定の効果を上げていて
家庭でもやろうと思えばできないことはない知識として紹介します。
一口に「依存」といっても、段階があります。
スマホの利用について、多少約束を守らなかったとしても
親御さんとの話が普通にできている場合は
おそらくそれほど心配することはないと思います。

けれど約束しても時間を守らない、夜遅くまでやっている
注意をすると返事をしない、反抗する、
何をやっているのか言わない、隠すなどという状況にある場合
親御さんは、どう対応すればいいのか、困り果ててしまうわけです。

「動機づけ」の考え方の基本は
「批判しない、怒らない、愛情が伝わる話し方をする」です。
依存症の人(クライアント)と治療者の関係では
対立したり、指示をするというアプローチは
クライアントの抵抗を助長して
より依存に向かわせる結果になることが分かってきました。

さらに以前は、クライアントの「止めたくない」という気持ちは
自分が病気だということを「否認」していると言われていましたが
「動機づけ」の理論では、このような状態を
クライアントは二つの気持ちの間で揺れている(やりたい、でもやめなければ)
「両価性」と解釈するようになりました。

そしてこの「やめなければ」とか「変わりたい」という気持ちを引き出すために
クライアントの気持ちに寄り添って、本人に自分で考えてもらう
自分で選択してもらうということなわけです。
批判をせず、怒らず、本人に落ち着いて考える習慣をつけてもらうのには
時間がかかります。根気もいります。

何より親御さん自身が、それまでの子育てのやり方や考え方を
大きく変えなければならない可能性があります。
更にこの方法が、全ての子どもさんに最適かどうかは分かりません。
ただ子どもさんが、親に対して心を閉ざし始めているような場合は
残された少ない可能性の一つとして
難しいですが、やってみる価値はあるように思います。


具体的には、スマホを使う時間などのプランを本人に考えてもらう。
例えば 平日だったら、いつ、どれくらい
    休日だったら、いつ、どれくらい
    夜はどこに置く。ひと月に料金はどれくらいまで。
などのきまりを、何パターンか考えてもらって
その中から、どれならうまくいきそうかを選ぶ。
一定期間やってみて、それでうまくいかなかった時は、
他のパターンに変えてみる。

というように、あくまでも「自分で考えて、自分で決めて実行する」
という習慣をつけていき、その結果についても批判したり怒ったりするのでなく
「それじゃあ、次はどうすればやれそうだと思う?」というように
親は建設的に、前向きで短い助言をするのにとどめ
本人が自分で考え、実行できる力を伸ばしていくことがとても大切です。

後藤恵先生の「動機づけ」のお話の中で、治療者、支援者とクライアントの間で
「命令されなかった」→「わかってもらえた」→「いい人だ」
という流れになって、お互いの関係性が円滑になるという部分などは
とても心に残りました。

夫婦でも、親子でも、先生と生徒などでも
一方的に指示をされるだけ、批判や叱責をされるだけという関係では
人は、豊かな人間性や人間関係を築いていくことはできないどころか
心を閉ざし、孤立し、次第に病んでいきます。
家庭が、家族が、そういう風になっていくのは、本当に辛いことです。

「ネット依存」の問題に限らず
小学校の高学年から中学時代にかけて
親が子どもに過度に干渉せず、愛情を持って見守り
必要な時は適切な助言をし、子どもの自主性をしっかり育てることは
その後の長い親子関係を良好なものにするために
とても大切なことだと思います。
長々と書きましたが、一番大切なことは「急がば回れ」です。
そして「北風と太陽」のお話を思い出していただけたらと思います。

トリーさんのブログ「ネット依存、スマホ依存から小中学生を守るために」を
リンクしました。トリーさんは、昨年ネット依存アドバイザーの資格を取られ
ご自身小学生、中学生のお子さんのお母さんでもあるので、ブログでより
具体的なアドバイスを発信されています。




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4 コメント

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こんにちは! (トリー)
2015-02-20 20:17:53
ご無沙汰しています。私のブログをご紹介&リンクしていただき、ありがとうございます!
いつもながら、依存症治療に対するりょうさんの説明がとても的確で、勉強になります。私自身は「動機づけ」についてまだまだ知識不足ですが、息子たちと理解しあおうとすると、知らず知らずのうちに「動機づけ」的な手法になるのだなあ、と感じています。
今やっていることが将来につながるようにと思って……おっしゃる通り本当に「北風と太陽」です(笑)。気長に頑張ります。
そうそう、少し前の記事に「寄生獣」のことを書かれていましたね。私も長男の影響で読みました。最初は「こんなもの読んで!」と怒っていたのですが、ついついハマってしまいました。でもグロいですけどね。。。。。。私はホラー系は大の苦手なのですが、物語のほうにグイグイ引き込まれてしまいました。
ありがとうございます! (りょう)
2015-02-22 07:57:25
トリーさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました!
依存症は、どの依存も、一人ひとり依存している段階も違うし、回復の仕方もいろいろあって「これなら大丈夫ですよ」と言えないのが悩ましいところですね。その中で、何か一つでも二つでも役に立つものがあればと思います。

私も二人育てましたが、すでに現役は引退で、どうしても理想論になってしまいますので、トリーさんが発信されているリアルタイムな情報は、とても役に立つと思って毎回読ませていただいています。

ニート生活で、映画と読書三昧なものですから、つい何やらかにやら好き放題に書いてしまって(笑)いつも反省はしているのですが、反省だけなら猿でもできるというやつですね。
これからもよろしくお願いします!
はじめまして (ちっぷ)
2015-09-02 14:27:26
ネット依存20歳の母親です
毎日何とかしたいと苦悩しネットや本を読みこちらにたどりつきました。原因は私なんだと理解したにもかかわらず自分を変えることの難しさに情けなく思う日々です

りょうさんのブログできっとできるそして息子のことから自分を解放してみるのも良いかなと思いました

思春期の関わりを悔やみ遅すぎたとつい落ち込み気味ですが:変えることができるのは自分と今;ありがとうございました

幸い息子は病院に行っていて主治医は関係性の後藤先生のように治療して下さっています
不安で仕方がない私でしたが息子ととの関わりを良い関係に努力しようと思います

りょうさんどうぞお大事によい日々を重ねられますよう
お祈りしています
ありがとうございます! (りょう)
2015-09-03 11:54:20
ちっぷさん、コメントありがとうございます!

息子さんのネット依存の問題にとても心を痛めておられることお察しします。
いつももう少し、筋が通って分かりやすいように書けたらと思っているのですが、力不足で申し訳ないです。それにも関わらず、とても嬉しい言葉をいただいて感激しています。

息子さんの依存の原因は、お母様だけにあるのではないと思います。広い意味では、今のような社会のあり方の色んな点に原因も問題もあります。ただそこを変えることは無理なので、最近は本人だけでなく、家
族のメンタル面の回復が重視されるようになってきて
少しづつですが、理解が広がってきたことが、とてもうれしいです。

そして私のことまでお気づかいいただき、本当にありがとうございます。どうかあまり無理をされず、ゆっくりと進んでいってくださいね。

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