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有人潜水調査船 しんかい 6500 (安田征策)

2012-09-01 03:01:01 | SHIP ~ 艦船・船舶

有人潜水調査船 しんかい 6500
 【 キット概要 】

 深海潜水機能を重視した特異なスタイルを持つ潜水調査船は、水の中で作業を行うという大前提から密閉性の高い構造となっており、船でありながらどことなく宇宙船的なフォルムを連想させてくれるため、完成した時には非常に模型映えのする魅力的なアイテムと思います

 ハセガワの「しんかい 6500」は1/72スケールで潜水調査船独特のフォルムを再現、その大きさはコレクションに最適です
 同時期に発売されたバンダイ版のキットは、1/48スケールというほぼ倍サイズの大きさとなっており、内部に電飾ギミックや船内内部構造の再現など、大きなモデルゆえのキット単独でアピール点を盛り込んでいる事と比べて、1/72スケールの潜水調査船(現在は該当キットはありませんが…)を並べたり、ジオラマへと展開可能なサイズであるといった点で、このスケールならではの作り方・楽しみ方を思い浮かべることができます
 また、ハセガワ製の「しんかい 6500」は、サイズが小さな分パーツ数を抑えて設計されているため、比較的簡単に組めそうですから、週末モデリングや初心者向けキットとしてのポジションに位置させることができるでしょう

 さて、箱を開けますと、「しんかい 6500」のパーツの成型色は実物と同じように船体部分がホワイト、船首の上部構造物と船尾の垂直安定板はオレンジとなっています
 船体上面の色が異なっている箇所(おそらく乗員のステップが可能な部分の表示)には大判のデカールが付属。
 そして、垂直安定板にはデカールの貼り付け位置のモールドが有りますので、ハセガワとしても初心者向けキットとしての位置付けとしていると想像できます
 パーツ各部の取り付け部分には大きめのダボが付いていますので、確実に形となるように工夫されています

 最近のキットはパーツ数が多すぎるきらいがあり、初心者が手軽に製作し完成の楽しみを味わうことができるキットが少なく、ベテランモデラーでも多くのパーツと「常に」格闘していると疲れてきますので、簡単に模型の魅力を味わうことができる、このような内容のキットが新製品で発売された事は喜ばしい事と歓迎します



 【 「しんかい 6500」の組立て 】
 いつもはAFVばかり製作している私です、今回はいつもと違う気持ちで気楽に製作を楽しんでみたいと思います
 組立説明書に従って順調に組み立てを進めていったのですが、船体上下の接合で少しひっかかってしまいました
 船体部の主要部分が上下分割式となっているのですが、操縦席上部の箇所に隙間が発生します、船体部内側のダボを切り取って対処することも考えましたが、他の場所に影響しそうです
 そこで、この隙間の部分に0.3mm厚のプラ板を挟み込んで隙間部分を埋めています
 「あれ?」と思ったのが船尾の垂直安定板です
 この部分は本体と左側下部との分割式となっています。この接合部分には少なからず隙間が出てしまいます
 パーツがついていたオレンジのランナーを溶かして埋めるという方法も考えましたが、今回は塗装しますのでラッカーパテで整形しています
 せっかく成型色をオレンジとしたのに非常にもったいないなぁ…と思いました(一体成型もしくは左右分割のパーツとした方がよかったのではないでしょうか)
 全体が組み上がった後に塗装を行っていますが、前方の覗き窓は内側がシルバー仕上げとなりますので、このパーツは塗ってから装着しています(このパーツの精度は良好で、接着剤なしでも固定できます)



 【 「しんかい 6500」の塗装 】
 日頃からAFVモデルばかりを製作しているため、原色系の塗装はほとんどすることがなく、まして光沢仕上げで塗装することはまずありません
 今回塗装に入る前に実船の写真を見てみると、調査船という任務の特性上でしょうか?少なからず汚れていましたので、綺麗に仕上げるのではなく、光沢のある船体が少し汚れているという、AFVモデラーの経験を活かした表現を目指してみました

 サフェイサーで下地を整えてから光沢のホワイト(X-2)をエアブラシで塗装、ベースとなる塗装にはタミヤのアクリルカラーを使用してエアブラシで塗装しています
 ラッカー系塗料よりも隠ぺい力が高いアクリル塗料ですが、なかなか下地を隠ぺいすることができず、5、6回吹付けを繰り返しました
 塗料を確かめてみると、ホワイト(X-2)は、フラットホワイト(XF-2)よりも顔料成分が少なく、その代わりクリアー成分が多いのに気付きましたので、一度フラットホワイト(XF-2)で塗装してから、その上にホワイト(X-2)、もしくはクリアー(X-22)を吹いて、グロス仕上げとした方が早くて塗膜も薄くすることが出来たかな、と思います

 船体上部の塗り分けは、上記のように薄いピンクのデカールが用意されていますが、自分がイメージする色調と異なりますので、マスキングして塗り分けています
 マスキングによる塗装は必ずといっていいほどはみ出しなどのミスが発生するものです、私でもリタッチして修正することは常にありますので、マスキング塗装を行う場合には1度や2度のはみ出し程度でくじけないで下さい

 基本塗装が完了したら、極めて薄く溶いたブラックでシャドー吹き、ホワイトの部分のシャドーは極力控えめとして、うっすらと陰影が強調される程度としています
 次に船体上部の塗り分け部に、薄めたホワイトでハイライト吹き、これは褪色表現を兼ねたものですが、あくまでも控えめとして「よく見れば分かる」程度としています

 このシャドー吹きが終了した後、デカールを貼ります
 シルバリング対策としてデカールの余白部分をトリミングしたのですが、実際に貼ろうとするとデカールの薄さに当惑しました
 「しんかい 6500」のマーキングは比較的単純であり、何とか貼り付けることができましたが、このデカールの薄さは強度不足のためにトリミングをしないで貼る方がよいかもしれません
 デカールが薄くても隠ぺい力があれば良いのですが、これも今一つ…
 デカールが乾燥した後、クリアーで表面をコート、全体のツヤを統一します



 次いで、今回の塗装のポイントであるエナメル系塗料によるウォッシングを行います
 雑誌掲載作例などの場合、墨入れと汚し(ウォッシング)は別の塗料で行うのですが、今回は気楽に素早く作ることを目的としているので、このウォシングで両者を兼ねることとしました
 ウォッシングに使用したのは、タミヤのエナメル塗料のフラットブラック(XF-1)とフラットブラウン(XF-10)、少し濃いめに溶剤を混ぜて塗り、綿棒などを使用して丹念に拭き取って行きます
 エナメル塗料は光沢面では定着が弱いですが、完全に拭き取ることはできず若干の塗料が残ってくれますので、これを逆に利用してわずかに残るエナメル塗料で汚れを表現しました
 実船の汚れ方を表現するために、綿棒で拭き取る際、綿棒を動かす方向を垂直方向とし、塗料が垂直に流れるように残すのがポイントです
 このウォッシングによって、船体自体は光沢なのに対して、汚れ自体はツヤ消しとすることができました
 「エナメル塗料のベタ付きが嫌い」という人もいるかもしれませんが、拭き取っていますから、そのようなことはなく、触っても手の跡が付くということもありません
 当初に目指した塗装表現に沿ったものとなったので、自分では満足しています



【 作り終わっての感想 】
 ハセガワ製「しんかい 6500」のキットは、プロポーション、雰囲気共に「しんかい6500」の魅力をスケールモデルとして表現しており、高く評価できると思います
 船体前方に装備されている「バスケット」は肉厚な表現で、上部に装備されている「アーム」も一体成型のパーツで固定されていますが、「年齢層を問わずに楽しめるキット」という視点から見ると、この表現でも正しいと思いますし、気になるユーザーはディテールアップポイントとして腕のみせどころとなるでしょう

 ただ、実際に製作してみて気になった点は、「ハセガワらしい」「ハセガワ」流のフォーマットがまだ強く残っているのではないか?という点です
 「潜水調査船 しんかい 6500」というタイトルは、子供やビギナーも手に取ることが想像でき、ハセガワさん自身もこれを想定して、パーツ数をできるだけ少なく、色分けされたパーツで、デリケートな部分は一体成型のパーツとして割り切るなどの工夫をされているのですが、パーツ上のボルトやパネルラインなどの凹凸モールドは、飛行機キットと同様の表現をされており、塗装によって消えてしまうほどの「弱い」ものとなっています
 作例では、ウォッシングによって凹凸感を強調していますが、実際にはほとんど消えてしまうような状態です
 エアブラシ塗装でこの状態ですから、筆塗りやスプレー缶塗装では、せっかくパーツ上に施した凹凸表現が消えてしまい、非常にもったいないです
 もし「塗装無しでも完成できますよ」というコンセプトを貫くとすれば、垂直安定板のパーツ処理がネックとなってしまいますので、思い切って一体成型のパーツの方がよかったのではないかな?と思います
 また、前方の覗き窓はクリアパーツとなっていますが、表面周囲にはボルトのモールドがあるものの、その内側にあるべき塗り分けラインが彫刻されていません
 非常に細かな部分ですので私はルーペを使って塗り分けをしたのですが、ここにはラインとなる彫刻が欲しかったです
 また、後方の航海灯(?)などを塗装するのは、繊細な筆さばきが必要で少し難しいと感じるかもしれません
 スケール感に沿った繊細なモールドというのはハセガワさんのキットに見られる特徴でもあり、美点でもあるのですが、対象年齢層が幅広いアイテムについては、どこにポイントを置くかを、もう少し冒険をされてもよかったのではないかな?と思いました
 とはいえ、どんなキットにも難しく感じる点や「?」と思う点はたくさんあります
 成型技術などの過程を知らないとわからない、見当外れの意見となってしまうこともありますので、私の考えを鵜呑みにするのではなく、実際に手に取って確かめてみて下さい

 製作時に迷う点が少なく、組立てるだけでしたらそれほど時間もかかりません、なによりも内容と比べて価格が安いです
 総合評価としては、これからプラモデルを始める方や小学校高学年の方にも充分おすすめできる内容となっています
 四方を海で囲まれた日本だからこそ必要とされ、持てる技術を結集して建造された「しんかい 6500」のプラモデルの製作、ぜひ一度チャレンジしてみて下さい



【 製作概要 】
 ・ スケール : 1/72スケール
 ・ 製作時間(期間) : 約10日間
 ・ 使用キット : 有人潜水調査船 しんかい 6500 (ハセガワ サイエンスワールドシリーズ No.SW001)

モデル製作 : 安田征策
サイト管理 : HOBBY SHOP M's PLUS


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