亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

書き進むうちにドル建て価格新高値更新(上昇は複合要因)

2011年03月24日 23時46分27秒 | 金市場

昼間SMM市況メールに書いたが、NYコメックスの金価格(中心限月)は通常取引の終値ベースで過去最高値に。背景は、北アフリカ・中東情勢にユーロ圏でのソブリン・リスクへの関心の高まり。すでにここでは北アフリカ・中東問題は、従来感覚の地政学的リスクで片付けられるような問題ではないので、金価格への影響も一過性ではないとしたが、報じられているような経過をたどっている。今回のリビア攻めについては、当初から米国の“腰の引け方(?)”が目立っている。したがって多国籍軍の攻撃が一定の効果を見た後に、何をどうする?という方向性が(伝えられているところでは・・というか、伝えられていない)見えてこない。そもそも、チュニジア、エジプトと来てさらに流動化するこの地域の動きは、米国プレゼンスの後退すなわち言われるところの多極化に向けた新たな勢力争いという側面がある。積極的に前には出てこないがフランスやイタリア、英国などこの地域における旧宗主国が微妙に絡みたがるのは一定の地歩の維持を考えてのことだろう。「NATOに指揮権を」と報じられていたが、そもそも安保理決議でドイツは反対で評決では棄権していたのでNATOとして動けるのか。昨日はシリアで反体制派と政府軍の衝突が伝えられたことも刺激要因となった。シリアはこの時間にも緊張が高まっている様子。

 

ユーロ圏についてはポルトガルがいよいよEUの支援下に入るか否かという問題だ。こちらは入ったとして市場では織り込み済みといえる。ポルトガルは時間の問題とされてきた。以前から国債の大量償還を控える4、5月のポルトガル、スペインが山場と目されてきた。23日ポルトガル議会は、政府の提出した財政再建に向けた追加緊縮策を否決。少数与党をバックにしたソクラテス首相が辞任を表明し、一気に政局は流動化したことが引き金を引くことになりそうだ。ポルトガルの10年既発債は利回りが8%に迫るところまで売られており、このままでは市場が引導を渡すことになりそうだ。ギリシャ、アイルランドと7%を超えてから支援要請まで1ヵ月もたなかった経緯がある。

 

さて今週初め21日に「再び落ち始めた米住宅市場」として、当日伝えられたばかりの米中古住宅販売件数の落ち込みについて取り上げた。米国の住宅市場についてはケース・シラー住宅価格指数が昨年後半から下げに転じており、直近で一番新しいデータ(12月)では、20都市のうち11都市にてバブル崩壊以降の最安値を更新となっていた。それもあり弱いであろうと思い見ていたら21日発表の中古住宅販売件数が488万戸と前月比9.6%の減少となった。販売価格の中央値は15万6100ドルでこれは前年同月比で5.2%の下げで02年2月以来の低水準となっていた。前週発表の住宅着工件数も落ちていたこともあり、そこで21日はここのタイトルを「再び落ち始めた・・・」とした。

 

・・・で昨夜の2月の新築住宅販売件数だが前月比-16.9%で年率で(なんと)25万戸で。この統計が今の形で発表され始めた1963年(昭和38年)以来の最低水準となった。価格をみたら販売の中間値が20万2100ドルで前月比13.9%の低下。これ前月比で過去最大の下落率となる。米国の住宅ローンのうち37%がローンの残債が時価換算の住宅価格を上回る・・・つまり物件を売って完済できない状態にあるというデータを見たことがある。この状態をアンダー・ウォーター(Under Water)と呼ぶがまさに水面下水浸し状態を表す。この状態のなかで、再び住宅価格の下げが目立ち始めたとすると、益々状況は悪化することになる。もちろん改善されたとはいえ8.9%という雇用環境の悪さと密接につながった話でもある。差し押さえ、競売物件の増加が新築住宅の価格競争力を削いでいる。差し押さえの背後には、雇用の問題がある。一度職を失うとなかなか仕事が見つけられない状態が続いており、諦めてパートタイマーになる人々も多い。本日21時30分に発表された、米国の週間ベースの失業保険新規申請件数は38万2000人とほぼ予想に沿った線だったが、耐久消費財受注の数字が悪かった。プラス予想のところマイナスに。来週はケース・シラー住宅価格指数の発表がある。

 

おっと、いまドル建て価格が新高値に進んだ。

 


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6 コメント

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金しか過剰流動性の受け皿は存しない? (Kファン)
2011-03-25 01:05:20
原油、穀物などは投機で買い上がれば批判が巻き上がる。よって、投機筋も案外とコワゴワ買っているのではなかろうか?
誰もがなるべくは「庶民の敵」呼ばわりはご免こうむりたいだろう?
貴金属も白金族は自動車、銀は太陽光発電と実需が多く伴う。最も、自動車急減速懸念の白金族はパッとせず、原発見直し機運で銀は投機相場の様相だ。

金は買い上がっても誰も困らない・・アバウトに言えばそうだろう・・勿論、実需もあることはあるが比較的投機筋が買い集めても実需者、庶民から批判はされないようだ。

ポルトガル問題でユーロもイマイチ、ドルは買いたくないとなれば消去法で金しか残らない。
ここはいっきょに1,500ドル突破と行きたいところだが・・?
伝聞ですが (ささやか)
2011-03-25 07:27:00
数年前の伝聞ですが、米国の貸家は光熱費込みの家賃だそうです。(低所得者層は電気など光熱費別払いの家を借りる)
オイル価格の上昇は老後の資金設計として貸し家を持っていたベビーブーマーにとって打撃かもしれない、と思ってました。(現在は変わっているかもしれませんが)

こがねむしさんへ
中国市民の塩の買い占めパニックはもう終わったのですね。現地場情報ありがとうございました。
ささやかさん (こがねむし)
2011-03-25 11:00:18
最初の1日だけだったようです。
その後、豊富にあるとの情報で沈静化したそうです。塩の効果はよく知りませんが

こちらこそ「 大地の咆哮」、参考になりました。
アメリカの消費行動の不思議? (Kファン)
2011-03-25 13:05:20
住宅は投売りしても、自動車は購入する。
確かに、住宅より自動車は格段にチープだが・・?

それとも、自動車の購買層は比較的高所得者層なのか・・?住宅ローンの苦しみのない・。
とにかく、住宅失って自動車を買う場合でもなかろうが・・?
よくわからんな・。
自動車買うくらいなら投売りされた住宅を買う方がわかりやすい?
自動車などの短期の消耗品ですよ。
リビア? (ナニユエ)
2011-03-25 22:36:00
本日 義援金振り込んできました。関西在住でのうのうと暮らしている負い目も少しマシ。無理筋リビアはいずれ米国もドロドロに入っていくものと思います。いまはoilが高く ドルも高くなっていますが もうすぐドロドロと、、、そーいう筋書きと思っています。今回の大震災で大事と思った3K 家族 健康 かね。 うまく儲けられれば義援金 part2も是非行いたいです。
Unknown (GUN)
2011-03-26 09:11:15
都会に住んでいると、わからないのでしょうが
田舎の広大な土地に住むと車は必需品で、贅沢品ではないですよ。

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