亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

過熱相場の反動、NY金は7年ぶりの大幅下落

2020年08月12日 17時44分10秒 | 金市場
8月11日のNY金は大幅反落となった。7月22日に終値ベースで節目の1850ドルを突破して以降8月6日の終値ベースでの過去最高値更新(2069.40ドル)まで200ドル余り駆け上がった金市場。その間に、まったく見られなかった下落局面が、にわかに起きることになった。NYコメックスの通常取引は前日比93.40ドル安の1946.30ドルで終了となった。

先週末7日の41.40ドル安の後、週明け10日は取引途中で買い上げられたものの2060.80ドルが戻りいっぱいとなり反落。11日の取引は、アジア時間は前日終値をやや下回る水準で横ばいで推移。ただし、午後に入り売りが先行する流れが強まり、ロンドンからNY時間に向かってそれは続いた。NYの早朝に2000ドルを割れると下げが加速し、目立った抵抗もなく水準を切り下げながら相場は進行。結局、通常取引終了後の時間外取引時間中もさらに売られることに。

通常取引終了時の下げ率は前日比4.6%で、これは2013年6月20日の6.4%以降で最大のものとなる。当時は、前日発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文が、量的緩和策の段階的縮小(Tapering)を示唆し、それに反応したものだった。つまり、大きな金融政策の転換を映して売られたものだった。世界的に株式市場も大荒れで、時の米連邦準備理事会(FRB)議長の名前をかぶせバーナンキ・ショックと呼ばれた。

一方、11日の急落に関しては、こうした政策変更など流れの変化を明確に示すものはない。過熱相場の中で自律的に(利益確定売りという)巻き戻し(un-wind)が発生し反落したところに、生まれた流れを加速させることで利益を得ようとするモメンタム系のファンドのAIロボットトレードが集まり、投機的攻撃を仕掛け、一方通行的な下げをもたらしたと思われる。

つまり売り自体は一過性のもので、現時点でここまでの金上昇の構図を変えるものではないと思われる。11日は、株式市場などでロシアのワクチン開発成功のニュースなどがはやされ、一時株価が上昇。先日流れていたゴールドマンサックスのレポートなどから、もともとワクチン開発への期待が高まっている米国株式市場は、こうしたニュースに乗りやすい地合いになっているとみられる。そこに、このところ下げが注目されていた米長期金利(10年債)が反発上昇(債券価格下落)し、ドルも買われるということが起きた。海外メディアでは、こうした流れを金市場の下落の背景としているが、まったく無関係とは言わないものの、11日の急落は、やはり過熱相場が一巡した後の崩落というイメージで、やっと訪れた調整局面という捉え方をしている。

ワクチン期待で押し上げられた株価は、引けにかけて急速に上げ幅を削り、主要指数はすべてマイナスで取引を終了した。共和党マコネル上院院内総務が、先週7日に追加策の協議が物別れに終わって以降、話し合いはしていないと発言。前日のムニューシン財務長官の、「週内に決着しそう」という楽観論との温度差の違いを嫌気したもの。また、この日の米長期金利の上昇だが、今週は米国財務省が過去最大規模の国債入札(=国債発行)を予定していることから、米債市場独自の需給悪を見込んで売られた結果の利回り上昇とみられる。総額は1120億ドル(約12兆円)にもなるからだ。つまり、メディアが挙げる下げの背景は、当たっていないと思う。

一本調子の下げになったのは、落ちるナイフを素手で握り取る者はいないわけで、落ちてから拾うことになる。当面は8月7日の取引時間中の高値2089.20ドル、終値ベースで6日の2069.40ドルを節目とする調整局面入りで、下値メドはまずは心理的な節目の1850ドル程度となりそうだ。その下は1810~1830ドルか。1900ドル割れは、今回の相場に乗り遅れた投資家の買いも入るとみられる。
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