
ニックの父はアマチュアヴィオリストで、弁護士で、最後は判事をやっていた。ニックが子供の頃から、毎週金曜日ゲストを招き、室内楽を楽しんだ。お父さんは音階もエチュードも練習せず、調弦すら怪しいことが多々あった。ニックが、お父さん、練習しないことを自慢するのは皆に迷惑ですからやめて下さい、と、ある時諌めたらしい。自慢の息子と一緒にシューベルトやベートーベンを弾いていたその時のままの弦が張られてあったが、昨日ニックが調弦していてD弦が切れた。私がちっとも練習しないからお父さんが大笑いした、みたいに感じた。