「日本文学の革命」の日々

「日本文学の革命」というホームページを出してます。「日本文学の革命」で検索すれば出てきますので、見てください

『若者はなぜ3年で辞めるのか』

2006-11-12 18:19:59 | 日本文学の革命
『若者はなぜ3年で辞めるのか? ― 年功序列が奪う日本の未来』という光文社新書の本を読んだのだが、これが結構おもしろかった
著者は大企業の人事部で働いていた人間で、今は会社を辞めてライターになっているのだが、長年人事部で働いてきただけあって企業の現実というものがよく見えるのだろう
今の企業や日本社会がかかえている問題を鮮やかに解きほぐしてくれている

今 日本全体に垂れ込めている「閉塞感の正体」は何なのか
なぜ新卒離職者が急増しているのか、ニートやフリーターが増えているのはなぜか、なぜ社会の格差が拡大しているのか、あるいは昨日のテレビでやっていたような(ついついつられて6時間も見てしまった)「教育亡国」といわれるほどの教育問題が発生しているのはなぜなのか
その「正体」をこの本で見極めようとしているのである

ではその「正体」とは何か

それが「年功序列制」であり「昭和的価値観」なのだと著者は言う
日本人が戦後当たり前のものとして信じてきたこの「価値観」が、時代に合わなくなり事実上崩壊しているのにもかかわらず、今でも日本社会の中に牢固として存在しており、それが現在の様々な弊害を引き起こしていて、このままでは日本を沈没させかねない状態をもたらしているのだというのである

終身雇用制や年功序列制などのいわゆる日本型経営は、もう過去のものだと思われているが、どうしてどうして今でも「老いたリヴァイアサン(社会の怪物)」のように日本社会の中に息づいていて、日本社会に君臨しているそうだ
それが今 自らを維持するために暴走していて、様々な問題やどうしようもない「閉塞感」をもたらしているのだという
著者の言葉を引こう

「…つまり、個人が安定を手に入れるために、皆で力を合わせて作ったシステムがリヴァイアサンだと言えるだろう
 実はまったく同じものが、この日本にも存在している
 それは、企業内に年功序列というレールを敷き、安定性と引き換えに、労働者に世界一過酷な労働を強いている。そのレールから降りることを許さず、一度レールから外れた人間はなかなか引き上げようとしない
 それは、自分に適した人材を育成するための教育システムも作り上げてきた。小学校から始まるレールのなかで、試験によってのみ選抜されるうち、人はレールの上を走ることだけを刷り込まれ、いつしか自分の足で歩くことを忘れ果てる。最後は果物のように選別され、ランクごとに企業という列車に乗り込み、あとは定年まで走り続ける
 そう、それこそが「昭和的価値観」の正体だ
 彼と、彼が作り上げ、維持してきた年功序列制度は、実に優れたものだった。誰もが安定して長い期間働くことで技術力が蓄積され、日本製品は世界の市場を席巻した
 横並びで詰め込み方の教育システムは、均質で従順な労働者を大量に供給し、彼らは長時間労働に文句も言わず、年功序列企業の原動力となって馬車馬のように働いた
 いまの日本を形作ったのは、まさしく年功序列制度だと言っていい
 だが、成長の時代が終わり、年功序列制度が崩壊の危機に瀕すると、リヴァイアサンは暴走し始める
 本来は「誰もが幸せになるために、ちょっぴり権利を与えた」はずのリヴァイアサンは、自らを延命させるためだけに、若者を搾れるだけ搾ろうとし始めたのだ
 派遣社員の拡大、新卒雇用の削減、年金保険料の引き上げ、すべては社会の発展のためではなく、リヴァイアサン自らが生き延びるためだ
 歪んだ格差は、少子化となって社会全体を危うくし始めている
 …これらの叫びは、私にはまるで、老いたリヴァイアサンの断末魔の叫びに聞こえる 」

かつて日本に繁栄をもたらしたものが、今や時代に合わなくなり、未来を築けないようになり、逆に日本を衰亡させようとしている
しかし人々の意識はいぜんとして「昭和的価値観」から抜け出せないでいて、いまだに決められたレールの上を走り続けている
このギャップが「閉塞感」と様々な問題をもたらしているのであり、それを敏感に感じ取っている若い世代が、いまレールから降りようとし始めている
それが「若者が3年で会社を辞める」理由なのだそうだ

「家族、特に昭和的価値観が堅持されていた時代に成人した世代の人間も、会社側以上に保守的だ。彼らはなにはともあれ定年まで勤続することがもっともお得で、社会的なステイタスも得られ、最大の幸福を生むと信じて疑わない
 若者自身も、そういう教えを受けて育ってきた。他人より少しでも偏差値の高い大学を出て、なるたけ大きくて立派だと思われている会社に入り、定年まで勤める。夜遅くまで面白くもない作業をこなし、疲れ切っては猫の額のような部屋に寝るために帰る。そして日が昇るとまた、同じような人間で溢れかえった電車にゆられて、人生でもっとも多くの時間を過ごす職場に向かう…
 それこそが幸せだと教え込まれてきた
 だが少なくとも、それだけで一定の物質的、精神的充足が得られた時代は、十五年以上昔に終わったのだ。その証拠に、満員電車に乗る人たちの顔を見るといい。そこにいくばくかの充足感や、生の喜びが見えるだろうか? そこにあるのは、それが幸福だと無邪気に信じ込んでいる哀れな羊か、途中で気づいたにしてももうあと戻りできないまま、与えられる草を食むことに決めた老いた羊たちの姿だ」


じゃあ どうすればいいのか
著者はまず第一に「働く理由を取り戻せ」という
「年功序列システムは、人間本来のバラエティある(働く)動機群を眠らせ、無個性で単純な歯車にしてしまう」
この「自分はこれをやりたい」という「働く動機」を取り戻し、働くことの意義と喜びをふたたび取り戻すことが大切だというのだ
別にアウトサイダーにならなくても、企業内でも十分それはできるという
「それぞれの内なる動機について少しだけ考え、アクションを起こせば、企業の変革をプッシュすることになる。ひいては、社会全体の変革にもつながってゆくだろう
 明るい未来とは本来、人から与えられるものではなく、自分の手で築くものであるはずだ。その自覚を促すことこそ、本書の意図したところである 」


今の日本社会を考える上で、実にためになる本だ
興味を持った方はぜひ読んでみてください
『本(レビュー感想)』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
« 「鍵」 | トップ | 絶望ののちの歓喜 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

日本文学の革命」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事