口は災いの"素"

音楽テクニカルライター布施雄一郎のポジティブなネガティブ語録/独り言編

すべて素晴らしすぎる

2021-10-27 23:00:00 | 仕事


高橋幸宏さんが80年代前半に発表したソロ作品に光を当てた入門編コンピレーション盤『GRAND ESPOIR(グラン・エスポワール)』。そのCD/LPライナーノーツで楽曲解説を執筆しました。CD Disc1とLP収録曲は同一ですが、解説は一部違った内容としています。

曲を堪能いただければ、それでもう十分。その中で気になる曲と出会った時に、ちょっと解説に目を通してくれたら、とっても嬉しいです。


   ***


突然、『原稿ご相談:高橋幸宏』という件名で担当者の方からメールが届いたのが、8月10日。今回の幸宏さんリイシュー・シリーズの入門編コンピレーションアルバムの全曲解説を8月末までに書いて欲しいという、まったく予期せぬ依頼でした。当然ながらその時まで、幸宏さんの80年代初期作品(平たく言えば、アルファ期+キングレコードの『音楽殺人』)がリイシューされるという情報すら知らなかったのです。

そして何よりも、まさか自分が幸宏さんの作品に関われるなんて想像だにしていませんでしたから、本来は嬉しくて小躍りするような話のはずなんですが、あまりの事の大きさに、喜びはほとんどなく、責任超重大な仕事の依頼に『うわぁぁぁ……』と気が重くなったというのが、実のところ正直な感想でした。しかもその想い(と重みと、ある種の怖さ)は、日を増すごとに増大していきました。

でも一方で、これは一世一代の大仕事、何がなんでもやるしかないと覚悟を決めて、そこからは、これまでバカみたいに繰り返し繰り返し、何度も聴いてきた幸宏さんのアルバムを、改めて深掘りして連日聴き返すと共に、そこまで深くは聴いていなかった、幸宏さんが関わった他アーティストの作品(幸宏さんが作曲や編曲、プロデュースした楽曲。つまりは、CDのDisc2)を聴きまくる日々。

同時に、過去の幸宏さんのコメントや作品レビュー記事の収集を開始。まあそうは言っても、僕はファン歴40年ですから、重要資料の類は既にそこそこの量は持っています。が、それらを「整理しなきゃしなきゃ」と思いつつも、この十数年に渡って未整理だったのです。それが何と、本当に偶然ですが、それらの雑誌・書籍を、この夏に整理し終えていたので(それまでは、単に山積みにしっ放しだった)、まずは自身で所有している物をすべてチェック。整理できていたおかげで、この作業に随分と時間が節約できました。やっぱり整理整頓は大切ですね。

ただ、それらの資料を改めてチェックすると、あることに気が付きました。70年代後期から80年代前半の幸宏さんインタビュー記事って、実はかなり多いんですが、そのほとんどがYMOの事を語っている物であって、幸宏さんご自身の作品について語っている記事が、意外にもとっても少ない。作品によっては、まったくコメントを見つけられなかったものすらありました。

そこで、既に所有している資料を再チェックし、今回の執筆に必要な物をセレクトした後に、当時、幸宏さんが受けた取材リストを作り、その中で重要情報が載ってそうな雑誌をリストアップ。それを日々、ヤフオクや中古本屋さん通販サイトとにらめっこしつつ、神保町の古本屋を歩き周って、結果、必要としていた情報の7割方の雑誌を入手できました。

もちろん、その間に他の仕事もこなしつつ、手に入れた資料の中身をチェックし、いよいよ原稿執筆に取りかかったのが、締切(月末)の一週間前……のはずが、こういう時に限って突発的な仕事が飛び込んでくるあるあるで、本格的に執筆できるのようになったのは、8月27日頃……だったかな?

依頼されていた原稿の文字数的には(普段の仕事を考えると)何てことのない文量なのですが、これがなかなか進まない。どういう状況だったか説明するのが難しいのですが、「何を書けばいいのか分からない」という気持ちと、「書きたいことがたくさんあり過ぎてこんな少ない文字数ではまとめられない」といった気持ちが同時に沸き上がってくるような、何とも不思議な状況に陥ってしまいました。

それでも締切はやってくるもので、試行錯誤の末、1曲目の「School Of Thought」と次の「Numbers From A Calculated Conversation」、つまりは『音楽殺人』の2曲を書き上げたところで、ようやく執筆の方向性が見えてきました。その段階で、これはCDとLPで違う解説文にしようというアイデアが浮かびました。

実は、レコード会社からの発注は、CDとLP共通の楽曲解説(つまり、どちらにも同じ文章が載るというスタイル)で、ぶっちゃけて言うと、ギャランティもそれに準じた条件での額面でした。でも、絶対にコアなファンの方は、CDとLPの両方を買うに違いない。その時に、両方に同じ解説が載ってたら、自分ならつまんないなと思ったんです。

ただ、もちろんどちらか一方しか買わない方も多数いるはず。だから、どちらかだけでも話が完結するように解説をまとめる必要がありますし、楽曲に関する基本情報はどちらにも入れておかなければいけない。そのうえで、両方を手に入れても読んでもらえるもの。

そこで僕の独断で、CD用では1曲ごとに解説をして、LP用には盤面(Side A、B、C、D)ごとにまとめた文章にしました。そして、CDは、あくまでも「入門編コンピレーション盤」ですから、幸宏さんの作品に初めて触れる人でも満足できるように基本的な情報でまとめて、ちょっとマニアックな情報はLPの方に持っていくようにしました。ただし、CDのDisc 2の収録曲に関してはCDのみになりますから、これには少々マニアックな情報も含めた解説文としました。

そうこうしながら、ギリギリにCD Disc 2に収録曲が1曲追加されたりもして、CD Disc1用とLP用の原稿を仕上げたのが9月1日の朝。すぐに校正が戻されて、手直しなどをしつつ、残りのCD Disc2用原稿と、修正原稿を納品したのが9月3日の早朝。

その日は朝から取材が入っており、ほぼ寝ずに取材に望み、仕事が終わった後に、ぼ~っとしながらラーメン(朝食兼昼食)を食べていたら、何と本作のリリース情報でSNSが賑わっていることを知り、「うわぁ、まだ原稿が仕上がってないのに、もう告知されてる!」とビックリしたものです。そのくらい、割とギリギリのタイミングでした。

そこからも、校正や修正原稿の戻しを数回やり、最終的に僕担当の作業が終わったのが、9月17日。ようやくほっとひと安心でしたが、ここからアルバムの発売までが、これまたドキドキの連続で。一カ月ってのは長いですねぇ。そんなドキドキのまま、本日を迎えたわけです。

こうした状況でしたので、実は自分用のCDとLPの予約をすっかりし損ねていて、危うく特典のスクエア缶バッチがもらえないかも!という一大事に陥りそうな状況に^^;;;結局、ネットでの予約は諦め、発売日の本日、タワレコまで行って無事に買って帰りました(缶バッチももらえました・笑)。最近はネット通販ばかりで、アルバム発売日に実際にショップに行くワクワクは久しぶりでした~。




そんなこんなで、やっと発売されて、しかも現物を手にし、中身を目にし(昨日フライング・ゲットされた方の方が、僕より先に現物を手にしていたわけです・笑)、僕の楽曲解説はともかく、アルバム自体は、砂原まりんさんによるリマスタリングされた音質や、CD Disc2の収録曲が評判よろしいようで、本当に嬉しい限りです。


……とは言え、今だに喜び以上に、正直な感想を言うと


   つかれたぁ~~~~!!!(@_@;)


ってな感じ^^;;;


これが喜びに変わるのは、まだまだ先になりそうですね。





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そしてこれらの本は、楽曲解説執筆のためにチェックした必要文献たち。過去にこれらを取材・執筆・編集された皆さま、ありがとうございました。



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