帝國辺境伯のためいき。

歴史ものの感想をだらだらと綴りつつ猫・写真・歴史パロディコミックなど、脱線ぎみの節操ないブログ。

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世界悪女物語

2010-06-17 20:17:34 | 歴史もの
世界悪女物語 (河出文庫 121B)
澁澤 龍彦
河出書房新社

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 この手の本はよく出ていますが、年季の入った一冊。著者は有名な方…らしいです。
ただテーマとする女性の人生の略歴を紹介するだけだったりゴシップ的な内容に
終始するでなく、一つの物語として楽しめるいい本だな、と思いました。



● ルクレチア・ボルジア(ルクレツィア・ボルジア)

 ローマ法王アレッサンドロ6世の娘。父と兄の都合で次々と政略結婚させられ、
夫が殺されるわ、近親相姦だの色狂いだのの噂を立てられるが、彼女本人は
受け身的な女性であったと言われている…。伝聞の脚色過剰。


● エルゼベエト・バートリ(エリザベート・バートリ)

 領内の若い娘を城に誘い込んで次々に虐待した上で殺害し、生き血を浴びていた
というハンガリーの貴族。読んでいるだけで寒気がします。残酷な話に耐性がない人や
想像力豊かすぎる人には読まないことをお勧めしたいです…人間、本当にこんな所業が
できるものなんでしょうか…?嗜虐欲過剰。


 昨年のある暑い日、この章を読んでいたらふいに椅子に座ってられないほどの
目眩がしてしばらく床に倒れていたのは実話。多分貧血か、軽い熱中症。
ちょっと怖かったかな…。

「しかし彼女の血にまみれた魂は、あらゆる出口の塞がれた
 永遠の牢獄から、どこの世界に飛び立つことができたろうか?」


…本文の最後の一文が、妙に心に残りました。


● ブランヴィリエ侯爵夫人

 フランスの毒殺魔。愛人と結託し、財産目当てで次々と身内を殺していった女性。
慈善病院の患者たちを慰問するように見せかけて毒薬の実験台にしていたという…。
放火などでもよく言われますが、この手の犯罪は一度やり始めると病みつきになって
しまうのだそうで…。毒殺過剰。


● エリザベス女王

 あんまり説明いらなそうな、不幸な青春時代を乗り越えてイギリスに絶対王政を敷いた
輝ける処女王…とはいいつつも、何人もの恋人を持ち、宮廷に仕える男たちの心を
独占していたわけですな…。ドレスの装飾過剰。


● メアリ・スチュアート

 エリザベス女王と来たら、この方は欠かせないでしょう。
スコットランドの美しい女王。エリザベスは恋をしながらも自分の女王としての
優位性を守りましたが、こちらは恋に熱中するあまりにとうとう身を滅ぼし、
ライバルの元で長年の虜囚生活の末に処刑されてしまいます。
女らしいといえば、女らしい。恋愛過剰。


● カトリーヌ・ド・メディチ

 イタリアのメディチ家からフランスに嫁ぎ、王妃になった女性。
長年夫に省みられず辛い時代を過ごした後に、かわるがわる王位に就いた息子たちの
摂政として権力の座へ。「サン・バルテルミーの虐殺」として名高い事件を引き起こす。
長年の忍耐の爆発過剰。


● マリー・アントワネット

 彼女も説明不要な、断頭台の露と消えたフランス王妃。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」の人。浪費過剰。
彼女の浪費癖は結婚生活への欲求不満からきていたという…とはいえ、
ここでもやっぱり一度ついた習慣はなかなか抜けないもので。


● アグリッピナ

 古代ローマ時代の代名詞「暴君ネロ」の母親。金も色も悪も使い尽くしてやっと
皇帝の座につけた息子をコントロールして権力を握ろうとしたが、逆に息子に
殺されることになる。母と子の関係性過剰。


● クレオパトラ

世界三大美女の一角として名高い、古代エジプトの女王。自意識過剰。

「ローマにとってエジプトは、莫大な財産をかかえた
 金持の老女のようなものだった。彼女はこの宝を、ついに成り上がり者の手に
 委ねざるをえなかった。」


作中の一文。なるほど…妙に納得。


● フレデゴンドとブリュヌオー

 耳慣れない名前ですが、二人とも女性。6世紀のフランス・ドイツの王妃。
憎しみが憎しみを呼ぶ国家をバックにした果てしなき女の戦い。憎悪過剰…。


● 則天武后

 東洋枠。だいたい彼女か呂后か西太后を入れておけば間違いない。
中国史上唯一の女帝である。権勢欲過剰。


● マグダ・ゲッベルズ

 え~と、アドルフ・ヒットラーの腹心ゲッペルズの妻だそうです。
彼女のことはこの本で初めて知ったため、どこまで悪女なのかつかめませんでした。
女は男で変わる、いい例のような。熱中過剰…。





 …このそうそうたる顔ぶれのトップバッターにされてしまったルクレツィアが
気の毒になります。他の彼女たちほどワルじゃないよ…。


 日本にも歴史上悪女と呼ばれる女性たちは少なからずおりますが、
スケールの面でとうてい異国の悪女に太刀打ちできず、このテーマでものを書こうと
する作家さんたちみんなの悩みの種となるようです。
まぁ、いないほうがいいですよ、うん…。


 世間には「悪女」って言葉が好きじゃない人がいるとか。
(「悪男」って言葉は無いですから)歴史上女性が活躍する機会が少ないので、
時々男性顔負けの所業をやってのけるパワフルな女性が登場すると、どうしても
好奇の目で見られてしまいがち…。しかし、他人の評価など気にせず、極端とも言える
情熱のままに生きていける女性は、たとえ「悪」かろうと、魅力的なのかもしれません。


・・・・・・ホント、読んでて極端な人たちばかりでしたよ…。








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6 コメント

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Unknown (cucciola)
2010-06-18 02:19:26
こんにちは!

私もこの本、日本にいるとき持っていました。渋沢さんの独特の言い回しにかかるとみんなおどろおどろしい人に見えてきたものです。

そうですねえ、「悪女」という言葉は微妙ですよね。スキャンダルにまみれたセレブ、って感じの人ばかりで。
「女性セブン」や「people」マガジンがなかった時代に年代記に残った女の人たちは、ことさらに後世の作家たちに大げさに書かれちゃった気がしますね。
対応語がない・・・ (レーヌス)
2010-06-18 18:12:14
 私もこの本持ってます。たいていは知ってる人ですが、ゲルマンの二人が珍しいので貴重だと思いました。

『世界の○○がわかる本』がPHP文庫によくありますが、「美女と悪女」はあるのに、その男版はないんですね。「美女」には「美男」でいいとして、「悪女」に「悪男」はないし、「悪漢」だとかなりニュアンスが違ってきてしまいます。  --チェーザレやサン・ジュストが出てくることは目に見えてますね。
 かつてネットで「歴史を飼えた美女」という投票はあったのに、「美男」はありませんでした。(リクエストしたけど無視されました)
 「ニッポン人の好きな100人の偉人 美女編」はあったけど「美男編」はありません。
 『美少年日本史』という本の姉妹編で『美少年西洋史』が予定されているのに、ず~~~っと延期され続けています。学会で出版社が店出してるので毎年催促してるのですが。
cucciolaさま、こんばんは。 (たかのつめ)
2010-06-18 20:16:25
もう一冊、「長靴をはいた猫」という書名の童話を訳した本を持っていますが、
こちらもなんとも不気味な雰囲気がかもし出されています。

昔の人は直接本人を目にする機会もないまま憶測や想像ばかり広げて好き勝手に
噂して、書き残しちゃいますから、名誉を汚された方はたまったものでは
なかったでしょうね…はぁ。

…しかし、実はそれほど美人でないのに、後世の人々に美人だと思われて喜んでる人も、
中にはいるかも?
レーヌスさま、こんばんは。 (たかのつめ)
2010-06-18 20:24:57
みなさん、持ってらっしゃるんですね。本当に知られた作家さんなんだなぁ。
「世界の美女と悪女がよくわかる本」、持ってます。
挿絵が美しくて気に入ってます。

世間では、歴史的偉人は、男性は決して「美男」である必要はないのに、
女性は「美女」でなければならないような感があります。
女性に対する評価は美醜の比重が強くて辛いです…。
しかし、有史以来数千年来不変の価値観ですから、きっと意味があるんでしょう。

「美少年西洋史」!もし出版されたら私も読んでみたいです…うっひっひ。
「悪女」文庫が3冊? (永亭)
2010-06-27 21:08:52
「世界の「美女と悪女」がよくわかる本」と「世界悪女大全」は持っているのですが、この本は未所持でした。買います……いえ、買いました(10日遅れの遅コメなので、コメント前に行動しちゃいました(笑))。


「世界の「美女と悪女」がよくわかる本」は、表紙絵がスターウォーズ小説の日本語版表紙絵でファンになった長野剛さんだったので、つい書店で手に取りました。
ルクレツィア・ボルジアとマルガレーテ・フォン・エスターライヒが連続ページに載っていて、
「え? この2人、同年生まれなの?」
と、買ってしまいました。


「一冊の本に、そこそこ詳細な数人の列伝」という形式の本は、「物語イタリアの歴史」を今、読んでいる途中なので、読み終わったら、「世界悪女物語」に取り掛かろうと思います。
永亭さま、こんばんは。 (たかのつめ)
2010-06-27 23:21:58
「歴史をさわがせた女たち」って文庫も持って…って私、
悪女の本ばかり持ってますけど、悪女にあこがれてるわけじゃないんです!
と、一応、宣言しておきます…(滝汗)
「世界の美女と悪女がよくわかる本」の挿絵はとても美麗で気に入ってます。
全部カラーだったらいいのに。

言われてみると、ルクレツィアと狂女王フアナも1歳しか変わらないんですねぇ。
全ての国の歴史を平行して見てみると、意外な発見をして面白いですね。
西洋史と日本史を並べると、発展の遅れに悲しくなりますが…。

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