農大現代視覚文化研究会

「げんしけん」の荻上と「もやしもん」のオリゼーを探求するブログ

「私がオタクとつき合うわけないじゃないですか」について

2006年03月01日 23時51分07秒 | げんしけん
8ヶ月前からすっとこさんを悩ませ続けた「私がオタクとつき合うわけないじゃないですか」に一応の俺なりの解釈を見出したので書かざるを得ない。

まずキーポイントになるのが、恵子の「……ねぇ もう二人ってつき合ってんでしょ?」だが、これ以前のやりとりを見るに、恵子と春日部さんの両方が、笹荻が意識し合っているという事に気づいている。てゆうか読者からしたって「……まぁ3人いるとかなり楽ですけどね」なんて弱ツンデレ風に一緒に売り子やりたがっているのは見え見えなのでありまして。

そこで以前「『逃げるのやめようと思います』について」で書いたが、オギーにとって男の人とつき合うという事は、巻田くんの事件と直面するという事なのである。一緒に売り子をやりたがっているのも事実だし、笹を意識しているのも事実だが、その延長線上にある筈の、オギーが目を逸らしている「つき合う」という事をいざ恵子に言われると、巻田くんの件には触れたくないから、自我を守るために「『男の人』とつき合うわけない」 と反発する他無いのである。しかし、「『男の人』とつき合うわけない」のも結局自分に責任のある事だから(中島の責任論は置いといて)、責任はさらに他者に転嫁するしかない。そこでスケープゴートにされるのが、自分をこういう状況に追い込んだ「同類」のオタクである。巻田くんを転校に追い込んでしまったトラウマを払拭できなかったため、外に敵を作らざるを得なかったのではないか。そこで編み出されたのが「私が『オタク』とつき合うわけないじゃないですか」発言である。

以上の点を踏まえると、笹の告白の後の壊れオギーのセリフが「『男の人』とはつき合わないんです」だったり、「オタクが嫌いな荻上です、特に女オタクが嫌いです」と整合性が出てくるわけである。

ここでちょっと脱線する。オギーがトラウマを払拭する方法にはどんな方法があったかと考えると、一番いい方法は巻田くんに謝って誤解を解く事だがこれはできなかった。じゃあトラウマそのものを自分ごと無くしてしまう方法、すなわち自殺だがこれは未遂に終わった。結局オギーにはトラウマが形成されてしまったのである(ちなみに「荻上はホモ好きでクラスメートの男の子のホモ絵も平気で描く変態」という誤解をそのまま受け入れるという方法もあるが、できる筈が無いので却下)。

そこで死にそこねたらどうするか、オギーは「自棄気味になり周囲への攻撃性を強めどこでも孤立した」と表現しているその理由だが、つまりトラウマを抑圧するための犯人役(というか真犯人なんだしオギーもそれに気づいているから)に女オタク、つまり友人を設定してしまったため、友人や、ましてや女オタクの友人を作るわけにはいかなくなってしまったからではないか。単純にこれ以上友人に裏切られたくはなく、友人さえ作らなければ友人には裏切られないという思考方法も可能か。

脱線から復帰する。ここまででとりあえず「……ねぇ もう二人ってつき合ってんでしょ?」から「私がオタクとつき合うわけないじゃないですか」までの解釈が完了した。長げーよ。2ページ分でこれか。とまぁこんな紆余曲折がある事を恵子、てゆうか他の誰にもわかる筈は無く、恵子にしてみれば「あれ? なんか私やばい事言った? 地雷踏んだ?」と「???」になるのも当然である。

さて、少し舞台を戻して、「……まぁ3人いるとかなり楽ですけどね」状態のオギーにスポットを当てよう。この時はまだ笹は「頼りになる先輩」であり「やおい妄想相手」である。あ、今気づいた。やおい妄想相手とつき合うってのが、これがまたトラウマ大ヒットなんじゃん。見落としてたわ。しかし「つき合う」という意識さえなければ、この時点で笹は好意の持てる相手というポジションを得ていたわけだ。まぁオギーがつき合うという意識を抑圧している以上進展も無かった筈なんだけど。ところがその状況を動かしてしまったのが「……ねぇ もう二人ってつき合ってんでしょ?」なのである。

長々書いた通り、この一言が決定打となって、笹はオギーにとって「自我を守るために回避しなければならない存在」になった。もちろんそんなあからさまな意識は無いはずだが、そのへんは翌月の、コミフェス打ち合わせでオギーが笹を一切見ようとしない事からもわかる。では肝心の「遊んでるヒマはないな」直後の例の表情だが、これがどう解釈すべきか迷う。首が右を向いているので、帰る笹を見送っていると考えると、単純に忌避しているわけでもない。説明できないので曖昧に考えると、とりあえずの自我防衛、自己嫌悪、笹に対する罪悪感あたりが濃いと思うんだけど、この表情ばっかりは言葉で説明できねぇ。とにかく目の両脇の黒い部分(なんじゃありゃ)が無ければ、俺もこんな文章を書くほど迷わなかったんだが、なんだあの絵は、人の心を乱しやがって、あーなんか腹立ってきた。くそー。

わけのわからん素ギレはともかく、とにかくこれで39話のオギーの心象は、俺としては自分の気持ちに収まりが付いた。正解を知っているのは木尾士目だけ。どうなのか。聞きてぇ。激しく聞きてぇ。

もうちょっと蛇足で書き加えると、コミフェスの打ち合わせで大野さんが笹に原稿を見せさせようとした作戦は、以上の件から考えるとかなり妥当なものであったと思われる。そこで笹が「ぜひ見たいな荻上さん」とか言ってたら、少なくともあの場はもーちょいいい雰囲気で解散できたのではないかと思うけど『たられば』かね。いずれにせよコミフェスの笹の「満面の笑顔攻撃」が相当に強烈だったのと、中島再会&スーに原稿見せられる攻撃で、またトラウマ再生になってしまうんだが、この辺はわりと上記の繰り返しなので、あんまり詳細な説明はいいよね。

個人的にはこないだエロパロSSスレに書いた中荻のSSから、例の事件を経て、コミフェスであの態度になるまでの中島のトラウマ生成過程が出来上がってるんだけど(えーちなみに書いたSSは中荻のレズもの、んで荻が中島を振って巻田くんとノーマルカプになってしまったので、中島は巻田を遠ざけるために例の事件を、しかし効き過ぎて荻上自殺未遂、すると中島は悪いのでは私ではなく巻田と、私を振った荻上が悪い、というステキドラマがすっとこさんの脳内に、きんもー☆)、こりゃさすがにどうかと思うね。そこで木尾士目がどう決着を付けるのか今から楽しみで仕方ない。どーなるんだー。