人間賛歌・もっちゃん4649

無気力・無感動・無関心の (追憶の日々)


新設された第三中学校へ春休み中に移転しました


23億円の建設費だったそうです

地域の人の理解と協力で 池を埋め立てて運動場を確保してもらったり

素晴らしい環境を整えてもらえ 子どもは地域の宝!ということを肝に銘じて

教師も生徒も 良い伝統のある学校にしようと燃えました


その年は3年担任でした

学級に一人だけ燃えない生徒がいました

朝の会にはいつもいなくって その席は暗くぽっかりと穴が開いていました


お昼前にノッソリ教室に入り 黙って椅子に座ります

めったに声を発しませんし 弁当も食べないのです


手ぶらで ポケットに両手を入れたスタイルで 靴のかかとを踏んづけて

登校するのでした


精気のない青白い抜け殻のような顔なのです

1、2年と同じ学年に所属していたのに 初対面と言う印象で

全く未知の生徒でした


1学年が13組までありましたからね

申し訳ないけど その程度の私でした


家庭訪問が終わるまでは 何も注意は深くは出来ないし

観察期間だと思っていましたから 一番気がかりなT君の家からスタートしました


母親は小学校4年の時に亡くなって 母親の母が 3歳の妹を育てるために

同居となったそうです


伺ったときは父親が会社を休んで 応対してくださいました

実直な父親と言う感じで 幼子を残し妻に先立たれて さぞかし大変だったろうと

同情の念を覚えました


真面目に仕事に取り組み 子どもの学校行事にも協力的な父親の姿に

子どもは大きく道を外れることはないと安心したものです


「母親っ子でしたから 寂しさを内に閉ざし 無表情なやつになってしまった」

と 父は言います


不憫なやつだということですが 家族みんなが明かりのない暗い中で

うごめいているだけと言う感じを受けました


話し声も笑い声も起きない家だと感じました


おばあちゃんの言うことも すべて無視!

起きたい時に起き 食欲がないから~と本当に何も食べずに

ふらふらっと登校してくるようです


無気力・無感動・無関心の三拍子が揃った

覇気のない生徒の意味がわかりました


自分の進路を切り開いていかねばならない時に お昼前にだらだらと

やってくるなんて許せん!

気合を入れてやろうと思いました


東京の養護施設の話をしました


「家があり 祖母がいて 父親は元気に真面目に働いてくれ

かわいい妹がいるT君!

自分だけ不幸だといつまでうじうじしているんだ


お兄ちゃんの姿を見て 妹は 格好良いお兄ちゃんだと慕ってくれるの?
 
悲しみに沈んでいたら いつか嬉しいことがやってくるとでも思っているの?

五体満足なあなたが 生きる希望をなくして 今にも消えてなくなりそうに

している姿を見て 母親は喜んで安心してくれるのかしら~?


学校で私はあなたの保護者です!

T君の陰口や悪口を聞きたくもないし 腹が立ちます

妹のKちゃんのために良いおにいちゃんにゆっくりでいいから変わっていこうよ!」


妹の名前を言うと小さく頷き 反応を示すので

妹に対しては優しい気持ちを持ち合わせていることを発見しました


私との出会いはTには願ってもないぴったりの出会いだったと思います

保護者だということは母親ですからね


非行に走る元気もなく 生きる希望も見つからない毎日で

妹が小学校2年生だから、妹が帰ってきたときに家にいるのはいやだと言う

ただそれだけの理由で 学校には毎日手ぶらでブラ~と来て

 終わりの会まで過ごして帰るのでした


欠席はありませんでした

遅刻は毎日です


午前中の勤務で授業のない時は家庭訪問をし 起こして連れ出します

本当の母子のような感情が湧いたのは やはりまぶしい顔で

心から笑っている写真を見たときでした


「T君の笑い顔も 大きな声も聞いたことがないんだけど

小さい頃の写真があったら先生に見せてくれないかなあ~?

笑顔のない赤ん坊っていないから 一度見たいわね~」


6月の終りくらいになっていたと思うけど 素直さを示すようになってきたので

アルバムを見せてくれるように言ってみました


「いいよ~!」と出して見せてくれました


息子と同じような丸顔で 何がうれしいのか 大笑いしている写真がありました


「わあ~~、かわいい~」って本心から出た言葉に 母親を感じてくれたようです


それがきっかけでした


遅刻は極端になくなり 学級の一員に生まれ変わってくれたのです


T君を卒業させて4年が過ぎたときに 思いがけなく放課後の職員室前の廊下で

運動場を眺めているT君に気づきました


「高校は卒業できたんだよねえ~」と真っ先に聞きますと

専門学校に今行っているという返事でした


久しぶりだねえ~と 廊下の窓辺に行き並びました


良い若者に育っていました


「今日は何か用事~?」と聞くと

「妹が今度中学校に入学なんです

先生に頼んでやると言ったものだから よろしくお願いします~」と

ぺこりと頭を下げていました


不思議なご縁で その年から学年主任になる予定だったのです

おとなしい素直な 物静かな妹に育っていました

もちろん3年間は 妹の母親の代理も務めましたよ


明日から第3章 癒しの出会いに入りますね~

続きは明日



椿・意宇の里です






PS

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