霊魂が籠る山:弥谷寺を後にして一路、弘法大師逸話の残る“捨身が嶽”を目指す。
岸壁に彫られた磨崖仏が至る所に見られるが…
“イヤダニマイリ”を済ませた信者は、教えの通り、後ろを振り返ることなく、一目散に山を降る。
縋りつこうとする霊を振り切るように…
強風が竹林を横切る時、カラカラ パリパリっと、乾いた響きだが、ビックリするような大きな音がする。
竹林を抜ければ、霊山:弥谷山ともお別れである。
間もなく遠方に独特の山容をした、捨身が嶽が姿を現す。
弘法大師出生の地と伝わる処。
一生懸命歩みを進めるが、目的地はかえって遠ざかる感じ、手前の尾根に“捨身が嶽”が隠れてしまう。
「これが歩き遍路の醍醐味だ!」などと、強がりを言いながら歩くが、気分はポキッと折れてしまいそう。
世界遺産登録を目指すと云われる“へんろみち”だが、道路や土地開発でズダズダに寸断されている。
つい先程まで、姥捨て伝説の山を歩いたいたことが信じられない。
そうこうするうちに“捨身が嶽”は目の前に近づいてきた。
山腹に建てられた霊場も、くっきりと目に入る。
お大師様は幼小時の名前は「真魚=まお」という。この地で誕生したと伝わる。