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ベース・ボール・ベアの湯浅氏脱退について考える

2016-09-06 22:52:57 | コラム的な何か
 ベース・ボール・ベア(以下、BBB)というバンドがいる。今、私の最も好きなバンドだ。

 これは日本のバンドで、ギターロックを主軸とした楽曲を作っている。

 BBBの楽曲は不思議なバランスでできている。

 歌詞はすごく青春でポップだが、視点は30代で、青春時代に色々な失敗をした人の世界観である。

 楽曲も複雑だ。ポップでメロディアスな一方、元ネタに気の利いた洋楽を散りばめ、ギターを重ね、テクニカルだが若々しい勢いを残すなど、インストの作りが非常に意匠の凝ったものとなっている。

 だが総じて言えば、BBBの楽曲は非常に真っ直ぐで、素直だ。複雑な構造で職人的なのに、楽曲そのものは格好をつけていない。

 結局、自分たちのリアルな音と言葉なのだ。



 そのバンドからギターリストが抜けた。ギターの湯浅氏が抜けたのだ。

 突然失踪し、メンバーとの話し合いもないまま、第三者を通じて脱退してしまった。

 多くのファンが戸惑っている。

 一体なぜ抜けたのだ、と。

 理由は不明だ。

 おそらくメンバーも確信していない脱退の理由を外野がどうこう言えるわけもない。

 しかし、私はここでその理由を真剣に考えてみたいのだ。

 なぜ今更そんなことを考えるかというと、月末にライブDVDとベスト盤が発売されるからだ。

 ライブ映像に湯浅氏はいない。

 その代り、有名かつ実力がすごいギタリストが4人登場する。

 だからこそ、今、湯浅氏の脱退を考えておきたいのだ。

 考えることで、この脱退の件は私のなかで終わりにする。

 だから、真剣に考えさせてほしいのだ。



 けれど、勝手な妄想を書いても仕方がない。

 そこで、まずバンドからメンバーが一人脱退するパターンについて考察したい。

 それを手がかりに何か言えないか、と考えたい。



 バンドから一人抜ける理由には、例えば以下の5つがある。

 1.ソロになりたい

 バンドで打ち出している音楽の方向性とは別に自我が成長し、違う音楽をしたくなってソロになるパターンがよくある。

 あるいは、お金でもめた場合もある。

 2.メンターを見つけた

 心に隙間がある音楽家の場合、メンターを求めることが多い。だが、メンターによってはおかしなことになる。

 ジョン・レノンのオノ・ヨーコならまだいいが、XジャパンのTOSHIのような洗脳では大問題になる。

 3.病気や怪我、精神疾患

 音楽というのは体力勝負であり、肉体労働である。それゆえ、肉体的な問題が生じると演奏が困難になる。あるいは、精神疾患から脱退する場合もある。

 4.アイデンティティの喪失

 「俺なんかいらないんじゃないか」「自分の演奏技術は最悪なんじゃないか」など、自分を責めてしまい、音楽そのものを続ける意思を失う場合がある。

 その代表例がウルフルズのベーシストである。自信喪失の原因は、リーダーからの要求に十分応えられなかった、などが考えられる。

 5.薬物などのスキャンダル

 ドリカムやラルクのメンバーの脱退は記憶に新しい。



 ここで注目すべきなのは、1と2の場合、音楽を続ける傾向にあるということだ。

 つまり、もし湯浅氏が音楽を続けないとすれば、1と2の理由は考えにくい(今のところ、彼は音楽活動を行っていない様子)。

 3の場合、メンバーは徐々に気が付くし、話し合いなしというのも考えにくい。

 5の場合、警察の問題なので公けになる。

 そうなると、4しかない。

 他の事例との比較から考えると、これが暫定的な結論になる。



 彼のギターは非常に独特だった。

 ものすごく透明感のある、素直なギターだった。

 音に過剰な興奮がなく、ただひたすら真っ直ぐなのだ。

 それはBBBの楽曲の真っ直ぐさとぴったりだった。

 というか、BBBの楽曲の構造が湯浅氏の音色に影響されていたのかもしれない。

 だが、それは弱点でもあった。

 透明感がありすぎ、場合によっては弱く感じてしまう。

 しかし、最後の参加アルバムとなった『C2』では、何か変化が起きそうな予感があった。

 彼は変わろうとしていたのではないか?

 ベースの音ははっきりと変化していた。ギターも変化しようとしていたのだと思う。

 でも彼はそれを達成できないまま消えた。

 おそらく頑張っていたのだ。でも、ダメだったのか。折れてしまったのか。

 もし、ここまでの仮説が正しいとすればだが、湯浅氏にはよく休んでほしいと思う。

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