oil 30x40cm 2009
ブグローは当時のフランスの画壇にとって長老格であってその頃出現し始めた印象派の絵を総じて未完成の絵画とみなして取り合わなかった。僕は彼の完璧主義を学ぶつもりでいたが、それがとても難しくて手に余るので、damn Bouguereau, damn Bouguereauと何度も毒づいたものだった。夢にまで出てきて夢の中で喧嘩をしていたことも覚えている。
2006年にポルトガルに渡ってポルトガル人の妻と新生活を始めたころ、彼女からブグロー作品の模写を求められて初めて模写を試みたのがこの作品の一部だったのだけど、とても満足できるような代物ではなかった。ブグローの時代には新しい絵画運動としての印象主義が台頭を始めたころで、ブグローはそれに対抗する伝統的アカデミックの権威であったのだから、それを自己流で油絵を始めてまだ3年にもならない自分に簡単に模写ができるわけがないのだった。それでもその美しさには圧倒されたので、どうかしてブグローのような画家になりたいものだと夢見てブグロー作品の模写ばかりするようになった。件数にして50点は模写をした。自分が最も影響を受けた画家はこの人だと言えそうだ。
油彩 100x80cm 2007年作 摸写
Song of Angels study after W. Bouguereau (1825-1905) French
oil 30x40㎝ 2017
2017年にあまり期待もしないで国立西洋美術館を訪ねたら大好きなブグロー作品がリストに入っていて心躍らせて入場したらなぜかお目当てのこの絵が展示されていなかった。それでも予想よりも充実したコレクションだったので、一日美術鑑賞を堪能した。高齢者の入場料が無料だったのに加え、館内写真自由撮影だったので世界の美術館事情に数歩近づいたかと喜ぶことができた。ところがコロナが明けてから再び訪ねてみたら今度は入場料を請求された。今や世界の美術館は特別展を除いては入場料を取らないのが常識となりつつあると思っていたので、この国立西洋美術館の時代逆行は残念であった。また神戸の王子動物園も県民高齢者は無料だったのが今ではお金を請求するようになった。宝塚市の市民プールも同様である。本当にこの国は心が貧しくなった。世界の常識から遠ざかるばかりだという気がしてならない。こんなことを考えるのは自分だけなのだろうか。
油彩 40x60㎝ 2024年12月16日 制作番号19
これはまさに出来立てのホヤホヤです。毎日一時間だけ制作に充てていたのですが、16日ぶりに何とか筆を置くことができました。不満はあるのですが、そんなことを言い出したら底がないので後期高齢者としてはこれで満足するのが無事であると思いました。もう修行よりは楽しむことが一番大事だという年齢に達したのだと思います。かっては年間300枚の油絵に挑戦していたこともあるのですが、今年は夏の猛暑にやられたこともあり、やっと19番目の制作となりました。しかしまだこうして絵筆を持つことができるだけでもうれしい限りなのです。