一人の貧しい中年男が油絵を学ぶために世界中の名画を模写し始めた。20年後にはそれが千枚に達した。これが彼の人生ではとても有益だった。彼にはこの愉しみがあったので晩年も退屈せずに過ごせた。
僕はフグの調理法を発明した人も尊敬して止まないが、波を最初に絵画に現した人の努力も凄いものだと思っている。今でこそ波はきれいに分解されて誰でもその真似ができるようになっているが、最初の頃はそうでなかったと思う。あんなに複雑に絶え間なく姿を変える波を静止させ分解し絵画に定着させた多くの先達の画家諸氏に尊敬の念を捧げたい思う。
外国ではopen air paintingと言って特殊な箱型イーゼルをすえて風景画を描く人々がいるが、日本でこれを見たことはない。せいぜいが水彩画のスケッチ程度を描いているグループを見るくらいで個人で描いている人も見かけない。このブログ村でも多くは写真によるスタジオ制作が多いようだ。かくいう自分も屋外で油絵で風景を描いた経験はたったの一度しかない。あとはみんな写真からの制作か模写にとどまっている。春の好日にイーゼルを立てて一日がかりで風景画を描くのはきっと豪勢な楽しみに違いないと思いながら模写どまりであるのは哀しい。以下はすべて模写作品である。