ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【リテラシー】難波先生より

2013-09-07 13:22:46 | 難波紘二先生
【リテラシー】Literacyとは「識字率、教養のあること」をいう。この教養とは、「専門的知識はなくても、何が本当で何が間違っているかを判断できる力」(アリストテレス)のことだ。


 「識字」の反対が「イリテラシー」、文盲のことだ。盲人でも点字が読めれば文盲ではない。パソコンに本を読ませて「読書」していれば、文盲でない。つまり「教養」があるからだ。ヘレン・ケラーをイリテラシーとは誰もいうまい。ところが日本ではバカな「言葉狩り」の結果、「文盲」という語句が差別用語にされた。代わりに英語のリテラシーとかイリテラシーが日本語に導入されたから、本物のリテラシーのない人には何が何だかわからなくなった。


 今日、一番重要なのは、ITリテラシーとメデイア・リテラシーである。「メディア」とは「媒体」という意味で、「情報をひろく伝えるもの」だ。新聞、テレビ、雑誌、書籍などを指す。「国益」という言葉が、定義も基準もなくメディアに平気で登場するようになった。先日の麻生の「ワイマール憲法とナチス」発言といい、何だか1930(昭和5)年頃のレプリカを見ているような気がする。


 こういう時、真っ先に政治権力になびくのはメディアの政治部である。社会部や文化部はやや遅れる。メディアの内部構造と社内の派閥関係まで知っておかないと、昔のようにメディアにすっかり騙されるということが起きかねない。その点で、前にもふれた三橋貴明「疑惑の報道」(飛鳥新社)は貴重である。
 この中で「メディアが何を報じたかでなく、何を報じなかったかが重要だ」と指摘されている。メディアが意図的に報じない情報を知る必要がある。
 それを可能にするのが、ネットでの外国メディアの日本語版やYOUTUBEやブログの検索だ。だからITリテラシーは、メディア・リテラシーと並んで重要なのである。



 新聞の利点は、精読や読み直しや切り抜きができる点にある。多くの場合、見出しだけ読むが、意味不明の見出しだと記事を読む。
 8/31「中国」の「殺人事件、家出と判断」という社会面の見出しには驚いた。「共同」配信の同じ記事を「産経」も伝えているが、見出しはぜんぜん違う。(この記事は関西版の「産経」、「毎日」には載っていない。)
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130830/crm13083008090005-n1.htm


 念のために「中国」の大きな記事(4段)を添付する。(添付2)これは記事にリンクできなかったためだ。(削除されたのかも知れない。)
 「家出と判断したが、結果として殺人事件だった」という記事で、見出しだと「殺人事件(と知りながら)を家出と判断した」という意味になる。
 記事を読んで初めて意味がわかった。何でこんな見出しをつけたのか、と思った。いつものように割り付けも下手だ。
  この事件では父親の捜査願いが出された時点で、35歳の女性はもう殺されていたので、警察の判断が犯罪の予防に関係しているわけでない。
 家族にも「事件だ」という証拠を警察に示す義務がある。被害者に定職があり、男女関係もしっかりしていれば、警察も「事件だ」とすぐに判断したかもしれない。
 テレビは例によってセンセーショナルに取りあげたいようだ。
 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00252906.html


 三重の女子中学生殺しが報じられているが、あんな真っ暗な夜道を深夜ひとりで歩くなんて。親はなぜ車で迎えに行かなかったのか、と思う。


 WIKIによると、「自己意思」で家を出た場合は、「家出」として警察は扱うのだそうだ。問題は「戻らない」のが自己意思によるのか、事故か事件かがわからない点にある。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/失踪者#.E5.AE.B6.E5.87.BA.E4.BA.BA
 年間、失踪する日本人は10万人強いるという。今や、そういう社会になってしまったのかと驚く。これを警察にぜんぶ探せといっても無理だろう。
 仮に0.1%が殺されているとして1,000人である。年間の交通事故死数が4,400人くらい(即死ではない)だから、十分ありえる数値だ。もし1%なら大事である。つまり、
 A.実際の犯罪件数>B.犯罪認知件数=警察統計上の犯罪件数>C.検挙件数>D.起訴件数>E.有罪件数
 となっている。だからBの数値を減らせば犯罪検挙率(C/B)は高くなる。だから現場の警察官にはBを減らしたいという、無意識のバイアスが作用する。
 有罪率(E/D)は陪審制のアメリカと違い、日本はきわめて高い。
 
 私は「被害者学」にも関心がある。「通り魔事件」は例外として、被害者にも落ち度があるという仮定に基づき、被害者に共通するパタンを見いだそうというのが、被害者学だ。



 米留学中にスーパーの駐車場でカートを押した老婆が、発進した乗用車にひき殺される事件が発生した。運転手はどういう罪になるのかボスに聞いたら、「なんの罪にも問われない」というので驚いた。
 アメリカの駐車場では「ヘッドイン駐車」が規則である。車の乗り降りは、専用の歩道を歩いて行うことが定められている。
 この老婆は、近道して駐車場の中を歩いていた。発進する車はバックで、しかも曲がりながら後にさがるので、後が広くは見わたせない。
 もともとそこを人が歩くことが想定されていないので、ドライバーに過失はない。だから無罪なのである。
 つまり「被害者に責任がある」ということになる。


 日本でも歩行者が入ってはいけない場所がある。高速自動車専用道だ。そこに飛び出してきた歩行者をはねた場合、鹿をはねたのと同じ扱いになるのだろうか? 事例をご存じの法律家があったら、ご教示いただきたいと思う。特に日本は刑事が無罪でも、民事が有責というバカなことがあるから、知っておきたい。
 
 先日、西高屋のモールに買い物に行き、買い物袋いっぱいに焼酎、ウィスキー、おつまみ、梅昆布茶などを買った。ショルダーバッグを肩に、買い物袋を下げて、次に本屋に行った。袋があまりに重いので、文庫を数冊買った後、カウンターに本を積み、買い物袋は側の平台脇の床に置いて、新書のコーナーに行った。精算するとき、レジのお兄ちゃんと雑談して、本の袋を下げて立ち去るときに、つい買い物袋を忘れた。


 東広島市街のレストラン駐車場に着いて、車から降りるときにはじめて気がついた。バッグに、本の袋、買い物袋と三つになったので、ついひとつ忘れたのだ。急いで妻とその店に戻った。忘れてから約1時間後だ。「もう置き引きにあっているだろう」と思っていた。が、客の指摘があって、カウンターの例のお兄ちゃんが預かってくれていた。嬉しくなってまた新書を数冊買った。書店では万引きが売り上げの5%位あるのが普通だ。このモールでは本の万引きはあっても、「置き引き」はなかった。もっともカウンターの脇に置いたからかも知れない。が、私としては客の質がよいからだと信じたい。


 これなど単に私がラッキーだっただけで、仮に置き引きされていても、店には責任がない。自分のボケを嗤うしかない。
 前は財布をズボンの前ポケットに入れるのは、海外出張の時だけだったが、今はいつでも前に入れる。掏られないためだ。前だと取り出すのに時間がかかり、不便だがスリに遭ってから「しまった」と悔やむよりよい。その意味で新聞の「社会面」記事は「被害者学」を研究するのに参考になる。


 今回の「愛知県警」の事件だが、「捜索願い」を「事件性のない家出」と判断したが、結果としてはじめから「殺人事件」だったというもので、「失踪直後に殺されていた」という点では、広島市の少女リンチ・殺害事件と変わりがない。
 「犯罪」は警察の「認知」により成立し、日本の認知率が低いのは有名だ。その代わり、起訴されたら100%近く有罪になる。裁判がまともに機能していない。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/認知件数 


 ところで、行方不明者を捜しあてるには、
1)「個人番号制」を導入し、戸籍、住民票、保険証、免許証、預金通帳、クレジットカードなどの、ID番号を統一する、
 2) いまカメラの機能もコンピュータの画面認識機能も発達してきたから、町や村の至るところに、隠しカメラを置き、通行人の顔を撮影し、捜査願いの出た人物の顔写真と自動照合させる(英国はこれに近い方法を採用している。)、
 という二つの方法があるだろう。どちらも「ビッグデータ」の採用だ。生きていて自由があり、動き回れる人間なら3ヶ月間どちらにも「行動記録」が確認されないということはないだろう。3ヶ月所在が確認できなければ、「事件性がある」とするわけだ。



 これは先日の「カプラン・マイヤー法」における「消息不明」例をどう扱うかという話と似ている。近藤誠氏の意見のように、「ある期間をおいて、消息不明は死亡とみなす」作業が必要になる。しかし1)案も2)案も、ぞっとするような話だ。ジョージ・オーウェル「1984年」の世界だ。
「自由度ゼロ」の社会なら、犯罪は起こらないだろう。だがそれはよい社会ではない。自由のある社会には危険もある。そのために私は「被害者学」を勉強する方を選びたい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【本さまざま】難波先生より | トップ | ごぼう茶サンプル配布と試飲... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事