ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

5-29-2014鹿鳴荘便り/難波先生より

2014-05-29 13:59:20 | 難波紘二先生
 梅雨前のよい天気が続いている。前庭にはすっかり緑の壁ができた。もうサンサーラも国道を走る車も見えない。庭木のヒノキが黄色い花粉を沢山つけている。遠くから見ると黄色の樹に見える。埃といえば白いが、町の埃は煤煙で黒く、田舎の埃は土埃、ここでは花粉が主体だから季節により色が変わる。


 眼鏡を受け取ってきた。掛けてみると両眼視力が1.5もあり、驚いた。昔、眼科医の病院長に、「眼球のマッサージをするとよい」と教えてもらったことがあるが実行しなかった。先生は朝、寝床の中で全身のマッサージと眼球マッサージを実行しているとの話しだった。独特の循環生理学の持ち主だった。ご遺体は遺言により私が解剖した。


 裸眼でも文字を大きくすればパソコン画面が読めるが、左眼の乱視がつよいので「.」が「..」と二重に見える。昔、東大の皮膚科の教授に「私は左が近視で、右が遠視だから、眼鏡が不要だ。本は左目で読み、車は右眼で運転する」という人がいたが、乱視さえなければ、私もそれに近い状態になってきた。
 家内は「網膜黄斑円孔」のため、右眼の中心視力が欠損しているが、テレビは左眼で見ており、運転も支障がないそうだ。私も糖尿病を糖質制限食でコントロールし、糖尿病性網膜症や白内障を予防すれば、OW ホームズの「完全な馬車」(L トーマス『歴史から学ぶ医学』, 思索社)のように、「ある日突然に、全部分の寿命がつきる」ことができるかも知れない。


 私は病理学者だから自分の病気を楽しみつつ観察できる。久し振りに診療所に行って来た。ナースに採血法の指導をしている。やっとアルコール綿の正しい使い方、採血針を刺しても、後で皮膚表面に血が出ない刺し方を憶えたようだ。これだと、蚊が刺したの同じで、パッチを貼る必要もないのだが、他のお年寄りが不安に思うのか、パッチを貼ってくれた。前は綿球をテープ止めしていたから、これも改善された。表在静脈を浮かす方法もまだコツが分かっていない。つまり、技術習得がマニュアル化していて、理屈がわかっていない。これが「専門家」だ。
 調剤薬局も入口が階段になっていて、薬局のドアと最上段の階段部分に落差があり、出るときに階段に転げ落ちる危険性があるので、改良を申し入れていたが、改められていた。年寄りはとっさの姿勢反射が鈍っており、転倒すると大腿骨頸部骨折を来すことが多い。


 便秘薬が切れた。いま2ヶ月処方も可能になっているが、月に一度くらい主治医に会っておかないと、急場の往診にも支障がでる。この医師は外科系でイヌに噛まれたときの対処法は見事だった。
 プルゼニド4錠を30日分出してもらった。「医者からもらった薬がわかる本」(法研)をみると、なんとメーカーはあの「ノバルティス社」で、本体は薬草センナ(Senna)から抽出されたセンノシド(Sennnosid)。
 センノシドは「廣川薬科学大辞典」、「メルク・マニュアル」にも載っている。分子量863のアントラキノン配糖体で、A型とB型の立体異性体がある。
 インド産のセンナにはAとBが含まれているが、エジプト産のルバーブにはAが多い。
 一般名としてPursennid(プルセニド)が書いてあり、これはセンナ(Senna)由来だから、「プルセニド」が正しいと思われるが、ノバルティスはドイツ語読みして「プルゼニド」にしている。
 「メルク・マニュアル」にLD50が書いてないから、常用量の倍の4錠を服用しても、害はないと判断した。
 コールタールの主成分がアントラセンで、ベンゼン核が三つ横に並んでいる。真ん中の亀の甲の1と4の位置に酸素がついたものが、アントラキノンで、これに糖が結合したものが「アントラキノン配糖体」。元は毒だが、毒は薬になる。


 先発はノバルティスだが、特許が切れており、ジェネリック薬品が14社から出ている。これが「薬局で買える薬がよくわかる本」(法研)に入っていない理由がよくわからん。
 腸管壁は「内輪外縦」といって、筋層が二重になっていて、内側はリング状に外側が筋細胞が腸管に沿って縦に走っている。筋層の間には神経細胞群と自律神経線維がある。だから「腸は考える」(藤田恒夫)のである。この神経細胞群は「アウエルバッハ神経叢」と呼ばれていて、腸管の蠕動運動を司っている。
 「ヒルシュプルング病」ではこの神経叢に欠損または形成不全が起きている。
 プルセニドを飲むと、この神経叢が刺激され、腸管運動が盛んになるとともに、水分の吸収が抑制され、便の軟化が起こる。
 プルセニドは本来「緩下剤」として開発されたものだが、倍量飲み、コーヒーをがぶ飲みすると、理論的には「峻下剤」的な効果を期待できるので、実験してみた。
 服用1時間で腹鳴が起こり、


 渡辺淳一『麗しき白骨』(集英社文庫)が届いたので、目を通したが「骨移植」の話で、骨髄移植の話ではなかった。1981年の作品だから、札幌医大整形外科講師をやめ、1970年に東京で作家専業になってから大分たってからのものだ。
 川西政明の「解説」によると、骨移植は渡辺淳一の学位論文のテーマだったのだそうだ。日本で最初の「異種骨移植(牛の骨を移植)」を実施し、T大教授のポストを射止めたい東都大学整形外科の可知教授とその講師風間。名誉と医師のモラルと愛欲の物語だが、面白いページに出くわした。
 自分の骨盤の骨を使う「自家移植」なら拒絶反応は起こらない。同じヒトの骨なら、拒絶反応は少ないが、遺族に無断で系統解剖や病理解剖の死体から取るわけに行かない。
 骨の入手先に困っていると、真野助教授が「悪性腫瘍で脚を切断した症例の骨の端を使えばいい」というアイデアを出す。「大丈夫ですか」というと、
 「病理の横山助教授にきいたところでは、その骨を植えて悪性腫瘍が移る、という心配はまずありえない」と答える。
 なんだ、これって「修復臓器移植」ではないか。


 だから渡辺淳一は「修復腎移植」擁護の発言を週刊誌(「週刊朝日」2006/11/24号)でする前に、ちゃんと下地があったのか。
 修復腎移植(腎動脈瘤)の第1例は、1991年1月だから、アイデアとしてはこの小説の方が先行している。
 『昭和文学史』(講談社)を書いた川西の解説がくどくどしく、『麗しき白骨』をろくに読んでいないのがみえみえなので、つまらない小説かと思ったが、意外な発見があった。
 「病理の横山助教授」というのは、たぶん免疫病理学の大家、札幌医大現名誉教授の菊池浩吉先生がモデルだな…


 今回は、
1.【自動車事故】=欠陥舗装について、
2.【STAP報道検証8】=論文撤回と「集合知」について
3.【修復腎移植裁判、証言3:海外の評価】=完結です
 について取り上げました。
 これについては、NATORONという移植学会関係者らしき人物の書き込みへの回答も加えた。


 6月1日(日)に宇和島市で「修復腎移植を求める会」の総会があるそうだ。6/22(日)には松山市で「愛媛移植者協議会」の総会があると、近藤先生から連絡があった。
 3回の証言連載はそういう資料になるように作ってあるので、つないでパンフにして利用して下さい。河野さん、近藤先生と連絡をとってみて下さい。武田さんもよろしくお願いします。
 ご盛会を祈ります。
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