ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【献本お礼など】難波先生より

2017-09-19 12:14:42 | 難波紘二先生
【献本お礼など】
 1)「医薬経済」9/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
★高橋幸春「移植医・大島伸一回顧録⑥学会」を読んだ。1980年当時名古屋中京病院の腎移植例は50を超え、これは阪大に次ぐ第二位であったが、学会からはまったく評価されなかったという。いじめられ弾圧されて、論文を却下されたことも書いてある。
 宇和島の万波誠とそっくりだ。万波誠の市立宇和島病院では86年に、腎移植例数が100例を超えた。77年の12月21日に第一例を実施してから正味9年と5ヶ月で100例に達成している。「100例達成記念シンポジウム」に、東京女子医大・太田和夫教授を招くことにした。近藤俊文院長との事前交渉の電話で、わずか10年足らずで100例の腎移植を達成したと聞いて太田教授は、「都会の真ん中の女子医大でさえ、100例に達するのに11年かかったのに…」と絶句したという。(拙「第三の移植」原稿より)
 移植業界は狭いから、噂は一瀉千里に走ったに違いない。つまり万波誠は「男の嫉妬といじめ」により、大島伸一や阪大の高原史郞らにより弾圧されたのだと思う。
 高橋氏が田中紘一と同様に大島から「謝罪の言葉」をうまく引き出すことを期待する。

★熊本市に本拠がある化血研(化学及血清療法研究所)の不祥事と再生への過程が報じられている。たしか昔、博多であったあるパーティで、ここの理事長と懇談したことがある。化血研は旧熊本医専を母体としており、歴史的には北里研究所やパスツール研に類似している。
 二次会の席だったかも知れない。荷物は何も持たないで、必要な本はすべて暗記して手ぶらで世界を旅行し「三大陸周遊記」を書いたイブン・バツータが「私の理想だ」という話をしたら、大変興味をもたれて、後で書誌学的情報を郵送した記憶がある。
 かつて血液病理学を研究していた身としては、旧「血液銀行」、ミドリ十字、薬害エイズ事件、化血研不正事件、最近の臍帯血横流し事件と血液に関する不祥事が跡を断たないのを恥ずかしく思う。

 1960年代の終わり、医系大学院生として病院の当直アルバイトをしていた頃、「疲れたからアリナミンの点滴をしてほしい」という患者が多いのに驚いた。ニンニクの成分アリシンが含まれているから、点滴すれば鼻にツンとニンニクの臭いがする。それで元気になると思っているのだ。
 1990年代に赤道以南のアフリカに行って、もっと驚いた。ここでは「疲れたから輸血をして下さい」という患者が多いのだ。もちろんHIV(エイズウィルス)や肝炎ウイルスの検査はされていない。「これでは血清肝炎やエイズが広まるのは当たり前だ」と思った。
 本当は万一に備えて「自己血の保存」が一番重要なので、今上天皇の前立腺癌手術は「保存自己血」により他者血の輸血なしに済んだ。「臍帯血の保存」や「末梢血幹細胞の保存」以前に、自己血の保存システムの確立が重要なのに、いったん日赤の血液ビジネスが成立すると、厚労省も合理性を忘れて本末転倒になりがちだ。天皇は国民に模範を示したのに、メディアが一過性なのには困る。

★「鳥集徹の口に苦い話」が、故小林麻央の治療を担当していたクリニックの医師が臍帯血移植を無届けでやった容疑で逮捕されたことを論じている。自費診療になるので1回300万〜400万円かかるとあり、驚いた。代替医療は効果が未証明なものが多い。プラセボ(偽薬)効果はふつう30〜40%ある。「イワシの頭も信心から」といわれる由縁だ。比較対照試験で80%の患者に効いた場合、プラセボ効果を差し引くと真の薬効は「効果率40%」ということになる。
 これは人間が「考える動物」(信心する動物)だからで、マウスやラットにはプラセボ効果はない。

 ★「エンディング・ノート」に田原総一郎(1934〜)が出てきていて驚いた。「本が1万冊以上ある。自分で処分できなかったら娘に任せる」と発言している。初め作家を志望したが、石原慎太郎と大江健三郎の作品を読み、諦めてジャーナリストになったという。
 WIKIによると <『原子力戦争』の内容は、国会でも話題となり、大手広告会社の逆鱗にふれ、田原は東京12チャンネルを辞職したといわれる。>とあるが、大手広告会社は「電通」のことで、テレビ局に広告をめぐって圧力をかけ、社内上層部から退職を迫られたという。
 しかしまだ「朝まで生テレビ」をやっているというから、元気だなあ…

2)新聞コラム=従来は「産経抄」が一番面白いと思っていた。9/14毎日「余録」を読んで舌を巻いた。https://mainichi.jp/articles/20170914/ddm/001/070/170000c
 土星探査衛星カッシーニのニュースを聞いて、ヴォルテールのSF「ミクロメガス」
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1363851617
を想起し、これを「起」にして、土星の最新知見を説明し(「承」)、「転」じてカッシーニを説明。それに対する弔辞で締める(「結」)など、生たいていの才能ではできない芸当だ。おそらくこれが書ける記者は毎日でも限られており、文系と理系の常識が広くかつ深い人物だろう。
 同じく9/17「余録」はハラリ「サピエンス全史」を取り上げている。
https://mainichi.jp/articles/20170917/ddm/001/070/126000c
 これは上・下で600頁近くある大著だ。スティーブン・ピンカー「暴力の人類史(上・下)」と同様に、長い歴史の中で暴力による死は減少しているのが真実だという主張を述べたものだ。

 これだけ幅の広い読書対象をもち、理解し、執筆できるのはおそらく毎日では「ノーベル賞科学者のアタマの中」を書いた女性記者しかいないのではないか、と思う。須田桃子記者にSTAP細胞問題の根底疑惑を最初に指摘した人物だ(「捏造の科学者」P.57)。が、残念ながら新聞コラムには署名がない。
 本メルマガの読者に毎日記者もいるので、小生の推理が間違っていたらぜひご指摘願いたい。
ともあれ「産経抄」に「余録」と読むに耐える一面コラムが増えたのは嬉しい。

3)「買いたい新書」書評=いま大ベストセラーになっている、
 中野信子「サイコパス」(文春新書)
を取り上げました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1505459974
本書にはテレビ・コメンテータとして有名だった「ショーン川上」、STAP細胞事件の小保方晴子がそうであったと納得させる科学的エビデンスが述べられています。脳科学的に海馬とそこから前頭葉前頭前皮質をつなぐ神経路に障害があることが説明してあります。お勧めの一冊です。

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