ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

誰も知らない黄昏どき

2020-01-24 21:57:03 | 2015年4月以降の詩
誰も知らない黄昏どき
湾の奥から滑るように船が出る
あなたはじっと前を見たままで
広々とした船室に座る

船室にはだれもいない
私は壁にもたれて
あなたの後ろ姿を
見るともなく見ている

昼間のうちに何度も肩を抱き
湾口の島への船着き場を探し
巡航船は燃料を満たして
船橋に行き先を表示する

港のカフェの窓際のソファに
二人で腰を掛け
入り江を眺めて

背後の山脈に陽が落ちるころ
一緒に店を出て
浮桟橋まで歩く

   ※

魚市場のネオンサイン
海に揺らめく赤や青の光
魚市場はベイサイド
朝には
キラリと光る魚の肌が
湿ったコンクリートの床を埋め
夜には
がらんと何もない

船室にはだれもいない
私は壁にもたれて
あなたの後ろ姿を
見るともなく見ている

西の山脈に陽が落ちるとき
水面の反射光が船を照らし
あなたの右頬を明るくする

一瞬で陽は落ち
夕映えが徐々に消えて
前方の大洋は徐々に暗くなる

桟橋で
あなたは迎えの車に乗り込み
わたしは帰りの船に引き返す
あなたは振り向かない

一瞬
車のなかからこちらを見た
かどうかは分からない
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