世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

放蕩者の死①

2018-05-09 10:56:52 | 風紋


泥棒には泥棒なりのやり方というものがある。

境界の岩を超えてはならないという、先祖の教えを破れば、すぐにおもしろい場所が見つかる。人間がこうだと決め込んでいることの裏をかけば、嫌な奴が生きることのできる道もできるのだ。それがオラブの考えだった。

オラブは放蕩者だった。子供のころから、親の言うことなどほとんど聞かなかった。生まれた時から醜く、親にさえも嫌な顔をされて見られることがあった。それがひねくれた原因と言えばそう言えるかもしれない。

まだ腰布もつけない子供のときから、人の物を盗んでいた。人の物を見る目だけはすばらしくよかった。三軒隣の家の子供が、親から栗をもらったのを、誰よりも早く見つけるのだ。そしてその子供がそれを食べる前に、巧みに盗む。

気付かれないこともあったが、気付かれることのほうが多かった。盗みがばれると、親にしこたま尻を叩かれた。罰だと言って、食事を抜かれることも多かった。親は半ば愛情があって、オラブの盗み癖を何とかしてくれようとしていたのだが、オラブはそんなことなど気にもかけなかった。嫌だった。何もかもが。みんなが、自分より美しい。自分よりいい子だ。

(おれは生まれた時から、みんなに嫌われていたのだ。醜いからだ。何にもしないで、人の物ばかり盗むからだ。そんなことは知ってる)

アルカ山の奥の洞窟で、トカゲを噛みながら、オラブはぼんやりと思っていた。腰布に使っている破れた鹿皮が少し湿っている。昨日、川を泳いだからだ。濡れたまま干しもしないで身につけたままなので、まだ乾かない。



ジャンル:
小説
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