世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

放蕩者の死⑧

2018-05-16 04:56:24 | 風紋


オラブは何も考えず、のっそりと立ち上がった。そしてのろのろと洞窟を出た。外に出ると、梢を透く光が明るい。風はなく、ひやりとした空気はもう冬がそばにきていることを教えている。

オラブはぼんやりと風景を見ていた。何かが、昨日と違っているような気がした。

アシメックが何も言ってくれなかったということが、まだ心の隅にひっかかっていた。

かん高い鳥の声が聞こえた。あれはキジの声だ。捕まえればうまいだろうが、すばしこくてオラブにはできない。彼はチエねずみの巣がありそうな木を探した。

何本かの木の皮をはいでみたが、ネズミは見つからない。腹が鳴った。なんでもいいから食いたいが、体があまり動かない。

「こっちにきて」

ふと、声が聞こえた。女の声だ。まさかと思いつつ、オラブは顔をあげた。少し離れたところの木の陰に、きれいな女がいる。

アロンダ?



ジャンル:
小説
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