Myselves

言葉と音楽に隠された魔法を探して放浪中。
そんな『自分自身』たちの旅の様子は?

ウェストサイド物語

2008-01-25 23:51:26 | 舞台
今年最初の舞台。

まず、高2のとき見た映画版とはだいぶ違うなあという印象。
『クール』『クラプキ巡査どの』の位置が違う、『アメリカ』は女性オンリー、など。まあどっちでも良いんだが、『クラプキ巡査どの』は前半に歌う曲かなあとちょっと思う。
訳詞は相変わらず「……」だが、まあ仕方ない。音楽は良いので良いとしよう。しかしオーボエ&アングレ少ないな。

話について。
現代版『ロミオとジュリエット』というより、『移民差別』というほうが印象に残る。ジェットもシャークもWASPじゃないからこそ、というか。それに思春期という独特の時期が加わった話というか。移民に限らず、差別や思春期の心っていうのは普遍的なものだと思うから、今でもうけるミュージカルになりえたんだろう。
だからか、悲劇の要素をすごく感じる。居場所を求め続けた少年少女たちの悲劇、という印象。
そんなわけで、トニーとマリアよりリフ、ベルナルド、アニタに注目した。ま、役者が良かったというのもあるが。

印象に残った場面は決闘の場面とアニタがドックの店に行く場面、そして最後。
決闘はレミゼを思い出した(結局それか)。不良とはいえ所詮10代の子どもたち。たぶん「死ぬ」ってことは身近に感じなかったんじゃないかなと思う。トニーの「そんなつもりじゃなかった。たぶん、君の兄さんも」という台詞がそれを裏付けてる。ナイフや銃を使えば人は死ぬ。怪我をする。最悪の形で実現して初めて「死」とはすぐそばにあるものだと感じたんじゃないかな。これはレミゼの学生たちにも言えることで、エポニーヌの死を見て初めて「死」とは何か、ひとを殺すとは、殺されるとはどういうことかを実感したのだと思う。できればもっと違う形で「死」を理解できたら悲劇は起こらなかったのにね。
アニタがドックの店に行く場面はたぶん女性にはちょっと辛い場面だと思う。初めて見たときは「アニタが嘘をつかなかったらトニーは死ななかったのに」と思ったけど、今回ちょっと見方が変わった。もちろんアニタの嘘はトニーの死につながるんだが、その前がひどすぎる。エニィ・ボディズが目を閉じ耳をふさいで隅にうずくまっていたのが印象的。アニタは誇り高い(と思う)から、その場で死んでも良いと思ったかもしれない。でもマリアとの約束もあるし、死んだらそれこそ恐ろしいことが起こるかもしれない。でも誇りを傷つけられたからただでは帰れない。ぎりぎりのところの選択が「嘘」になったんじゃないかな。
最後の場面、マリアが「あんたたちみんながあの人を殺したのよ」というのが切ない。冷静に考えれば習慣も考え方も違う人種がうまくやっていけるかというと難しいところもある。だけど……。

ところで、トニーはお母さんがポーランド人なのね、はじめて知った。何かで「イタリア系のジェット団」と読んだからてっきりイタリア人だと思った。
全員がプエルトリコ人のシャーク団に対してアイルランド人とかポーランド人がいるんだね、ジェット団は。
で、クラプキ巡査がジェットに肩入れしてるのは本人も移民の子どもだからだと思う。アングロサクソンの名前じゃないもんな。もしかしたら同郷の人がいたのかも。ま、純粋に肌の色の問題ともいえるが。
……肌の色の違いってそんなに大きな問題なのかね??
あと、いくらなんでも「マリーア」「アニータ」はないだろう。その方が原語に忠実なのはわかるが、日本では「マリア」「アニタ」で十分。

役者さんについて。
リフ役松島勇気さん、ベルナルド役加藤敬二さんがとにかく上手。魅せる。トニー役阿久津陽一郎さんは今一歩。背も高いしかっこいいけど、微妙に音域が違うのか歌がちょっと辛そう。マリア役花田えりかさんは歌の声は綺麗だけど台詞がいかにも「台詞しゃべってます」って感じの……うまく言えないけど、同じ調子というか。ちょっと聞いてて疲れるところもある。個人的にはドック役緒方愛香さんがまあよかったと思う。
アンサンブル?はアクション役大塚俊さん、ロザリア(かな? 眼鏡の子)役の玉井明美さんが目を引く。すごく華があるとか抜群にうまいわけじゃないんだけど、「魅せ方を知ってる」というか。逆にチノ役玉城任さんはおいしい役なのに埋もれがち。ちょっと残念。ほかのひとも、まあ衣装が似たような感じだからってのもあると思うけど、個性がいまひとつ。ちょっと残念。
今回もっともよかったと思うのはアニタ役増本藍さん。誇り高く愛情深い、かっこいいアニタでした。ただオレンジのコートを着てるときはちょっとおばさんぽいのが残念。それ以外はよかった。


総括:一度は観るといいかも。だけど、映画版の印象を強く持ちすぎると返って楽しめない。

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