内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/01/19

2022-01-19 19:53:19 | 日記
胆管炎の総説
J Clin Transl Hepatol 2017; 28: 404-413

胆管炎は、1. 原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis: PSC)、2. 急性(細菌性)胆管炎(acute cholangitis: AC)、3. IgG4 関連胆管炎(IgG4 associated cholangitis: IAC)に分類される。

PSCは慢性かつ進行性の経過をたどり、胆管癌を合併することがある。またしばしば炎症性腸疾患を合併する。ACは胆管炎の原因としては最も多い。IACはしばしば膵炎を合併する。

胆管炎の治療において、胆管の画像検査(ERCP、MRCP、超音波内視鏡)と内視鏡による胆管ドレナージは中心的な役割を果たす。

PSC と AC に対しては抗菌薬治療が有効であり、IRC に対しては免疫抑制が有効である。手術は合併症が多いので、他の治療が失敗した場合に考慮する。


原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis: PSC)。

PSC は病理組織、臨床経過、治療への反応性、悪性腫瘍の発生率について不均一な病態を含んでいる。

一般には慢性進行性の経過をたどり、最終的には悪性腫瘍が生じることが多い。

近年罹患率は増加しており、北ヨーロッパでは 0.1/1000人・年である。北ヨーロッパでは圧倒的に男性が多い。あらゆる年代に発生するが、世界的に 30-70歳台での発生が多い。免疫系の異常が関与しているが、免疫抑制は有効ではない。胆管の炎症組織では制御性 T 細胞が減少しているので、免疫系の異常な活性化があるのかもしれない。

PSC 患者の 34-75% に炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎が合併する。腸内の細菌叢の異常が病態生理に関連するのではないかと考えられている。

喫煙は PSC のリスクを減らすようである。


IgG4 関連胆管炎(IgG4 associated cholangitis: IAC)。

IgG4 関連疾患として胆管炎はしばしば膵炎を合併する。高齢男性に多いが、小児でも認めることがある。

IACとPSCとはしばしば鑑別が問題になることがある。

IACはPSCよりも発症年齢が高く、膵炎を合併することが特徴である。また、IAC ではしばしば黄疸を認めるが、PSC では稀である。膵炎を合併しない場合も胆管膵管造影で膵管の狭窄を認めることがある。

血液検査では IACでは IgG4 が高値となるが、PSCでは IgM とアルブミンが高値になる。組織病理では、IACの方が細胞浸潤(リンパ球、形質細胞、好酸球)が目立ち、免疫抑制によく反応する。PSC では肝の線維化を認める。


急性胆管炎(acute cholangitis: AC)。

急性胆管炎の原因として最も多いのは総胆管結石。急性胆管炎の症状としてシャルコーの3徴(発熱、右季肋部痛、黄疸)やレイノーの5徴(シャルコーの3徴+意識障害、ショック)が知られている。

AC の診断と治療のガイドラインとして、Tokyo guideline 2013 (TG13) がある。TG13 では、臨床所見、血液所見、画像所見に基づいて診断する。また重症度(軽症、中等症、重症)に基づいて治療方針を決める。TG13 の AC の診断に対する感度は 87.6%、特異度は 77.7% と報告されている。


内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography; ERCP)。

ERCP は胆管炎の画像診断のゴールドスタンダードである。PSC に合併する胆管癌の診断に対する感度は 97%、特異度は 65% と報告されている。胆管癌は ERCP では石灰化をともなう非対称性の胆管拡張が特徴的な所見である。

ERCP は胆管炎の治療法としても重要である。ERCPガイド下の胆管ステント挿入は胆管狭窄の治療のゴールドスタンダードである。

ERCP は入院後 24時間以内に行った方が良いと考えられている。ERCP 施行が遅れると胆管炎の再発が最大で 37%増加するという報告がある。一方で、入院後24時間以内、48時間以内、78時間以内に ERCP を行った場合の死亡率と入院期間は差がなかったという報告もある。

ERCP の合併症として膵炎が 1.2-4%、胆管炎が2-2.5%ある。


MR胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography; MRCP)。

MRCP は非侵襲的に肝内胆管、肝外胆管を観察できる点が長所である。コレステロール結石も識別できる。解像度も優れる。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5719198/