日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

関東一円はしご酒 2015初秋 - 和浦酒場

2015-09-13 21:22:37 | 居酒屋
自力開拓も辞さずと意気込んではみたものの、結局無難な選択に落ち着きました。教祖おすすめの「和浦酒場」を訪ねます。
実は、ここへ来るまでには紆余曲折がありました。そもそも土地勘の全くない浦和で、日曜という条件まで重なった以上、これはという酒場を探し出すのは至難の業というものでしょう。そのことには少し歩いた段階で気付いたため、まずは教祖が推す「おがわ」に目標を切り替えました。教祖と組んで「全国居酒屋紀行シリーズ」を作った小川ディレクターが、引退後に自宅を改造して開いた店です。それほどの人物が自らの理想を集大成した店なら、まず間違いはなかろうと期待してのことでした。ところが、そうは問屋が卸さないということか、駅から相当離れた住宅街の一角の店舗が、外からのぞき込んでも満席と一目で分かる盛況です。これでは取り付く島がありません。
それで「和浦酒場」に入ったのかというとさにあらず。めぼしい店があれば飛び込むという方針で再び駅へ向かって歩くと、唯一期待できそうな呑み屋街が現れ、その一角に古い一軒家を使った「和浦酒場」の支店を発見。ここが開いていれば即決というところ、今度は日曜定休で振られました。仕方なしにそのまま歩くと、次に現れたのがおでんの老舗「お多幸」の支店です。自身愛用してきた新橋の店との類推からしても、十分期待はできるのでしょう。しかし、唯一にして最大の問題点は、わざわざ浦和に来た以上、都内にもある「お多幸」をここで選ぶ必然性が感じられないということでした。結局踏み切れずに「和浦酒場」を目指したところまでが第二段階です。
迷走はまだ終わりません。「和浦酒場」の店先まで行ってはみたものの、店構えが今一つ直感に響かず、一旦見送り周辺をもうしばらく歩きました。しかし、これまでの流れから予想できた通り、めぼしい店は見当たりません。そこで最後の望みをかけ、「おがわ」まで再び歩いたものの、状況は何一つ変わっておらず、元の鞘に収まったというのがここまでの顛末です。延々一時間以上歩いたにもかかわらず、徒労感だけが残る結果となりましたorz

このような経緯があるだけに、過剰な期待をしていたわけではありません。上記の通り、期待感を削いだ理由の一つとして店構えがあります。無味乾燥なビル群が並んだ伊勢丹の裏手の一角には、およそ名酒場などなさそうに見え、2階にある店舗も若い店主が造った現代的な店のようにしか見えなかったのです。しかし、ビルの古び方にしても、通りから見る店内の様子にしても、遠目には仙台で長年愛用してきた「おのちゃん」にどこか通ずるものがあります。心底感動するほどではないにしても、ほどよい種類の地酒が選べて季節に応じた肴が揃い、機転の利いた若い衆の接客も心地よいのだろうということが、ある程度予想できました。そして、この予想はかなりの精度で的中しました。
店内は外見ほど広いものではなく、10人ほど着席できるL字のカウンターを中心にテーブルがいくつかという構成で、20人少々も入れば満席といったところでしょう。カウンターには木材の風合いを活かした分厚い一枚板が奢られており、純和風とは一味違って、イタリアン、ビストロなどの洋風酒場としても使えそうな雰囲気です。高架下から最近移転してきたという割に、相応の年季が感じられることからしても、居抜きで入った店なのでしょうか。いずれにしても、ダウンライトのほどよい明かりを含め、カウンターの居心地は上々です。
品書きは日替わりの黒板と手元のメニューブックの二本立てで、筆ペンを使って大きく書かれたメニューがいかにも若い店ならではといった感があります。しかし、酒は燗上がりのするもので統一され、有名どころから無名の蔵まで、全国各地の地酒を適度な数だけ揃えています。その酒は長い時間をかけて湯煎され、上品な白磁の徳利に注がれて、同じく白磁の盃とともに供されました。和らぎ水の代わりに白湯を添えるところは、燗酒を宗とする当店流。決して大きくはない店内を4人で仕切る布陣は万全で、店長格のお姉さんによる付かず離れずの客あしらいも堂に入っています。
全国各地の中でもとりわけ個性が希薄な埼玉だけに、これが「埼玉らしい」「浦和らしい」かというと、特にそうとは思いません。「まるます家」で呑むために赤羽へ行くことはあっても、この店で呑むために浦和へ行きたいかというと、そこまでには及ばないというのが率直なところではあります。しかし、風合いのよいカウンターに向かって、話し上手な店長相手に一杯やる向きには上々な店であり、店構えから「おのちゃん」を連想した自分の直感は正しかったことになります。
次に浦和で降りるのが、何年後のことになるかは分かりません。しかし、その機会が再び訪れたときには、挨拶がてらもう一度寄ってみたいと思う一軒でした。

和浦酒場
さいたま市浦和区高砂2-7-7 セブンビル 2F
048-824-0701
1700PM-2330PM(LO)

竹泉・ひこ孫
お通し(夏野菜と厚揚げの煮付け)
鰹刺身
秋刀魚塩焼き
本日のカレー

コメント    この記事についてブログを書く
« 関東一円はしご酒 2015初秋 -... | トップ | 関東一円はしご酒 2015初秋 -... »

コメントを投稿