日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く - 増毛小学校

2015-09-22 12:01:00 | 北海道
國稀酒造に勝るとも劣らない名建築が増毛小学校です。ただし、國稀と違うのは、この校舎が現役ではないということです。三年前に閉校となった高校の校舎に小学校が玉突きで入り、戦前に建てられた木造校舎は空き家となったのでした。
木造校舎が貴重となりつつある中、これほどの立派な校舎が全国にいくつ残っているのでしょうか。U字型をした二階建ての本館を中心にして、裏手に体育館、脇に平屋の別棟を置き、渡り廊下でつないだというのが全体の造りです。いずれも無塗装の羽目板で仕上げられ、特に本館と体育館の威容には感嘆させられます。ただ大きいだけではなく、正面の左右と中央に三角形のファサードを造り、左右のファサードには明かり取りの窓を、中央のファサードには校章と丸時計を配するといった意匠が秀逸。二重になった木のサッシと、側面から立ち上がるコンクリート製の煙突からは、日本海の風雪の厳しさが偲ばれます。
かくも立派な校舎ではありますが、今では訪れる人もなく静かに眠っており、中央の玄関と向かい合う大木だけを話し相手にしているかのようです。一段下がった場所にある校庭は草むし、片隅にある職員用と思しき住宅はもぬけの殻。まさに「兵どもが夢の跡」というべき光景です。
これだけの名建築を、風雪にさらされ朽ちて行くままにするにはあまりに惜しく、どうにか活かす手段がないものかと考えたくなるのは人情です。そうしたいのはやまやまながら、あまりに巨大すぎて維持できないのでしょうか。だからといって、なまじ観光地化されてしまえば、この校舎の価値も減じられてしまうわけです。朽ちて行くのは惜しい、しかし下手に変わってほしくはないという、何とも複雑な心境にさせられます。

コメント    この記事についてブログを書く
« 晩秋の大地を行く - cafe de ... | トップ | 晩秋の大地を行く - 留萌本線 »

コメントを投稿