日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

この季節の楽しみ 2015(31)

2015-08-01 19:58:14 | 野球
昨日限りで地方大会が閉幕し、全国各地の無名校、伝統校、古豪の戦いぶりを追いかけてきた毎日が終わりました。甚だ僭越ではありますが、最後は「大会講評・私の場合」と題し、去年と同様独自の視点から地方大会を総括します。

★北海道
北海道らしい地名が散らばる地区予選の楽しみは例年通りとして、今季特筆すべきは小樽潮陵の二年連続となる上位進出でした。北北海道の遠軽に一時ほどの勢いが見られない中、最終盤まで勝ち残った健闘ぶりは、本大会における唯一にして最大の収穫といっても過言ではありません。

★東北
白眉は何といっても青森でした。広い県土に散らばる様々なチーム同士の対戦は、例年通り紙面で眺めるだけでも楽しいものがありました。そして極めつけだったのが決勝戦です。延長12回に及ぶ投手戦の末、サヨナラ振り逃げというまさかの結末を迎えた一戦でしたが、記録の上では暴投扱いながらも、その危険を承知で落ちる球を投げ込み、狙い通りに空振りさせた八戸学院光星バッテリーの攻めは見事でした。返球があと少し低ければ、本塁憤死で13回突入もあり得たのではないでしょうか。まさに紙一重の戦いです。それを含めてシード校4校を撃破し、全7試合を勝ち抜いた三沢商には、最大級の賛辞を送らなければならないでしょう。

★関東
大会創設百年の節目に、初代出場校から早稲田実が一番乗りを果たしましたが、京都二中改め鳥羽の神懸かり的な強運の前には、それとて色褪せてしまいます。今季の関東ならではの話題といえば、やはり悲願の初出場を決めた霞ヶ浦、次いでまさかの初戦敗退により選手権無敗記録を保持した前橋育英ではないでしょうか。個人的には学芸大付対筑波大駒場の乱打戦も印象に残っています。

★甲信越
美しい地名と校名が散らばり、紙面で追うだけでも楽しめる長野大会の秀逸さと、一転して何の面白味もない新潟大会、そもそも存在感すらほとんどない山梨大会という、それぞれの特徴が表れた今大会でした。今季の話題を一つずつ挙げるとするなら、長野では松商学園の準決勝敗退、新潟では県都の伝統校の4強進出、山梨では甲府一と甲府西の兄妹対決といったところでしょうか。

★東海
静岡の圧倒的な強さが目立った今季でした。平成に入って以来3度しかない公立校の全国制覇があるとすれば、最も近い位置にいるのが同校かもしれません。
趣味的な見地からは、高山の伝統校斐太の決勝進出と、三重大会で過去惨敗を繰り返してきたあけぼの学園の、かつての甲子園出場校を相手にしての大健闘が印象に残っています。

★北陸
細々した話題はいくつかあっても、今振り返って思い出すのは、昨年の石川大会決勝で悪夢の逆転負けを喫した小松大谷が、雪辱を期しながらも惜しいところで果たせなかったことだけです。去年の印象がそれだけ強烈だったということでしょう。霞ヶ浦が悲願の選手権初出場を果たした今、悲劇の主人公の座は同校に移るのでしょうか。

★近畿
一も二もなく、鳥羽の京都大会制覇に尽きます。一昨年も府大会決勝に進んでおり、当然ながら運だけで勝ち上がってきたわけではありません。しかし、大会創設百年を迎える今季、初代覇者は神通力と形容すべき人智を超えた力を持っています。この余勢を駆って頂点に駆け上がれば、それこそ永遠の伝説となるでしょう。

★中国
初代代表校であり、大会初勝利も挙げた鳥取西が、決勝まで進出しながら敗れたのが惜しまれます。

★四国
去年に続いて実現した小松と松山東の藩校対決と、徳島城南の決勝進出が双璧でした。高専としては極めて異例の、阿南高専による延長引き分け再試合と、かつての盟主松山商の儚げな散り際も印象に残ります。

★九州・沖縄
全国区の強豪が多々ありそうに見えながらほとんどなく、印象に残りにくいのが九州の高校野球ではありますが、その九州から出た数少ない全国区の強豪小倉が4強入りし、古豪健在を示したのが特筆されます。
九州の見所といえば、長崎と鹿児島の離島勢です。儚く散る運命の離島勢ではありますが、今季は徳之島が8強進出を果たしました。昨年初日で全滅した沖縄の離島勢も健闘し、宮古が4強、八重山が8強まで勝ち残ったのは見事でした。

以上をもって、42日間にわたった地方大会の記録は完結となります。全46回にも及んだ去年には届かなかったものの、今季も実に31回、我ながらよく書き連ねたものだと思います。
熱心な読者の方はお気付きの通り、記事が掲載されるまで、表示上の日付から一週間ほどかかるという状況が、地方大会開催中には常態化します。要は分量があまりに多すぎ、一晩では到底まとめきれなくなって、その分未処理の記事が積み上がるということです。最盛期ともなれば字数にして五千字から六千字、これだけの記事をまとめようとするなら、最低でも五、六時間を注ぎ込まなければなりません。平日にそのような芸当ができるはずもなく、週末を朝から晩まで注ぎ込んでも、一日につき二日分を処理するのが事実上の限界です。一週で四日分しかまとめられない以上、残りの三日分は持ち越しとなるわけで、それが二週続けば結果的に一週間遅れというわけです。
このような状況だけに、速報性は全くありません。一週間前の試合結果を載せられても六日の菖蒲、十日の菊であり、他人様にとっては何の意味も持たないでしょう。訪問者の数が激減する傾向からしても、時間をかけて綴った記事が読まれている可能性は、きわめて低いと思われます。それにもかかわらず、来る日も来る日も試合結果に目を通し、膨大な時間をかけてblogに綴っているのは、旅の記録と同じ効果が、高校野球の記録においても存在するからに他なりません。
写真に頼らず文字だけで表現しようとすることで、旅先での一場面をより具体的に記述する動機が生まれ、それが結果として印象を深く刻む効果を持つと以前申しました。それと同様、紙面に載るわずか一行だけの試合結果から、その背後にある各地の風土、文化、人々の気質といったものに思いを致し、それを綴って行くことで、高校野球という風物詩が、自身の中でより深く印象に刻まれるという面があるわけです。blog開設以来、そのような一見無為とも思える作業を積み重ねることにより、高校野球は自身にとって欠かすことのできない年中行事の一つに昇華された感があります。来季の戦いも楽しみです。

それでは最後に、長らく楽しませてくれた球児たちへの感謝で締めくくります。また来年…
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