日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

寄る年波 2015盛夏(2)

2015-07-30 23:10:21 | 旅日記
文字ばかりのblogを綴っている関係上、言葉遣いについては一家言があり、以前それについて語ったこともありました。そのような一家言に照らし、最近やたらと耳に付く表現があります。職場で飛び交う「近しい」という表現です。
「近しい」とは「親しい」とも書き、読んで字のごとく、親密さを表す言葉だと辞書にはあります。ところが、職場で飛び交う表現は、本来の用法を明らかに逸脱しているのです。親密さとは異質の、単なる近さを表現するのに「近しい」の表現が用いられており、とりわけ空間的な近さというより、概念的、数量的な類似性、共通性を表現する際、この言葉が好んで用いられる傾向にあります。身近なところで例えれば、「早稲田実と日大三の実力は近しい」「神奈川大会と愛知大会のチーム数は近しい」といった具合です。日常会話の中というより、比較的かしこまった場で多用されるのは、「近い」というより「近しい」といった方が高尚に聞こえると考えてのことなのでしょう。
もちろん、上記の通り高尚な表現でも何でもなく単なる誤用です。他人様のことについては極度なまでに無関心な自分も、この表現に関してだけは度々注意を喚起しています。しかし、言われた側にとっては偏屈者の小言にしか聞こえないのか、一向に聞き入れられる様子はなく、誤用が堂々とまかり通っているのが現状です。「異常も続けば日常になる」という通り、この用法がいずれ辞書にも掲載される時がくるのでしょうか。些細な言葉遣いに目くじらを立てるようになった近年、自分が歳をとっただけなのかもしれません。
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