日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

この季節の楽しみ 2015(16)

2015-07-15 22:13:56 | 野球
日中の酷暑は相変わらずながらも、日が落ちてから多少なりとも過ごしやすくなったのが助かります。明日の予報は終日雨、数日来続いた暑さがこれでようやく一段落するかもしれません。今夜は32大会274試合が戦われた昨日の高校野球を振り返ります。

・遠距離
連日楽しませてくれた青森大会で試合がなく、岩手、秋田、長野の数試合が目立つ程度でした。もう一試合の注目は近大新宮対和歌山東です。直線距離で測れば100kmのところ、陸路をたどれば紀伊半島を半周以上、延々200kmにも達します。加えて鉄道も高速道路も貧弱な地域だけに、移動の労苦は北海道の比ではありません。新幹線と構想道路日本が県土を貫き、数字ほどには遠く感じられない静岡に対し、島根、高知、宮崎などと並ぶ、数字以上に広く感じる県の代表格が和歌山です。

・離島
前日は一試合もなかったため、これが二日ぶりの登場です。東東京では大島が散り、3校ある離島勢では八丈が最後の砦となりました。新潟では佐渡が散り、今季は離島勢3校がいずれも初戦敗退に終わっています。鹿児島では古仁屋が大敗で、奄美が延長戦にもつれ込んでの惜敗で、いずれも姿を消しました。

・接戦
新潟大会で、延長15回の末に決着した試合がありました。高田商対三条東がそれで、1対1となった5回以降長い膠着状態を経て、高田商が15回表に1点勝ち越し均衡を破ったのも束の間、その裏に三条東が2点を奪って逆転サヨナラ勝ちという、何とも劇的な幕切れでした。

・大差
20点差以上は4試合あります。最大得点差は埼玉の31点差です。大阪で21対0の大勝を収めたのは、春8回、夏6回の出場経験を持つ強豪関大北陽でした。常々申している通り、強豪校が無名校を完膚なきまでに粉砕する試合は、ありそうでなかなかありません。しかし関大北陽は、昨年も初戦に21点差の零封勝利を挙げており、五年前には44対0などという試合もありました。歴然とした実力差があろうとも、常に全力で勝負するのが同校の伝統なのでしょうか。ちなみに、今回辛酸を舐めた府大高専は、東東京の産業技術高専、兵庫の神戸高専と並ぶ、全国3校しかない公立高専の一つです。

・伝統校
藩校を発祥とする高田、和気閑谷、山口、萩、大村の各校が揃い踏みを果たしました。長崎の猶興館も、旧平戸藩主の私塾を発祥とする創立135年の伝統校です。大分では、県下一の名門大分上野丘が、苦戦しつつも初戦を突破しています。今年創立130周年を迎える伝統もさることながら、一昨年は県大会の決勝に進出し、昨年も4強に入るなど、県都の伝統校の中では青森、静岡、桐蔭、鳥取西、松山東などと並んで上位を狙えるチームの一つです。

・鳶が鷹
川西明峰と市尼崎が、兵庫大会で揃い踏みを果たしました。前者は古田、後者は池山と、平成一桁のヤクルト黄金期を支えた中心選手の母校である両校ですが、川西明峰は春、市尼崎は夏に、それぞれ一度とはいえ甲子園出場を果たしているという点でも共通します。川西明峰は、第1回大会の代表校にして予選皆勤記録を保持する神戸二中改め兵庫に敗れて姿を消しましたが、市尼崎は大勝で次戦に進みました。
球史に残る名捕手の母校としては所沢があります。西武黄金時代の司令塔にして現ロッテ監督の出身校として知る人ぞ知る同校ですが、高校野球界においては全く無名の存在です。それもそのはず、在学していたのは定時制四年のときであり、寝業師の異名をとった当時の西武監督が、囲い込みのため転校させたのでした。よって、名捕手の出身校として扱うことには疑問が残るところであり、今まで紹介してこなかったのもそのためです。しかし球歴には、名門熊本工と西武の間に、一年だけ在籍した同校の名が今なお明記されています。
既出のところでは、西武岸の母校である宮城の名取北が、仙台三に敗れて姿を消しました。

・地名・校名
まず注目するのは盛岡四です。一高、二高は数多あり、三高も探せばいくつか存在する中、同じ町に四高まであるのは盛岡だけではないでしょうか。同じ町という条件を度外視しても、五高まである東海大の付属校と、五商まである都立の商業校しか思い当たりません。西東京では、それらの一角である四商が、初戦を大勝で飾っています。
真打の京都では、菟道の校名が秀逸です。どんな由来があるかと調べてみれば、「菟道稚郎子」なる古墳時代の皇族にちなんでいるらしく、それを校名にする風流さには脱帽するしかありません。
風流、もとい風変わりな校名として、岡山県共生を挙げておきましょう。あたかも県立高のような校名でありながら、実は私立という紛らわしい存在で、逆の例としては埼玉の伊奈学園、三重のあけぼの学園、昴学園などがあります。
校名ばかり取り上げましたが、地名では新潟の分水に注目です。越後平野に開削された大河津の分水路にちなんだこちらの地名、関東平野でいうなら利根川と江戸川とを分ける関宿と同様、なぜか旅情を誘います。越後平野で花見をした四年前、ここで眺めた桜並木は印象的でした。組み合わせの妙という点では、岡山の邑久対美作も捨てがたいものがあります。
なお、前日延長の末引き分けた岡山南が、再試合を制して次戦に進みました。

・古豪
近畿地区が前日に引き続いて豊作です。前出の兵庫に加え、関西学院、神戸一中改め神戸、和歌山中改め桐蔭と、予選皆勤記録を保持する15校のうち4校が一堂に会しました。これらのうち、兵庫は第1回大会の代表校であり、関西学院と神戸は全国優勝の経験を持ち、桐蔭は第1回代表校と全国優勝いずれの栄光にも浴しています。兵庫との直接対決に敗れた昨年に続き、神戸はまたしても初戦で姿を消したものの、残る3校は貫禄勝ちで次戦に進みました。いずれも兵庫県勢歴代3位となる春12回、夏7回の出場を誇り、その後35年ご無沙汰の滝川も、快勝で初戦を突破しています。
第1回出場校としては、秋田が苦戦しつつも初戦を突破しました。同じ秋田大会では、昨季代表の角館が初戦で散り、宮城二強の一角である東北も無名校に足をすくわれています。初戦は相手の不祥事による不戦勝だったため、実質的には初戦敗退に等しい、同校にとっては屈辱的といってもよい結果です。しかし、東北がつまづいても、双璧のもう一方である仙台育英が控える以上、なんだかんだで予定調和に終わるのかもしれませんorz
平成初頭に始まる私立全盛時代は、高校野球界を長らく牽引してきた公立の商業校の弱体化により到来したといっても過言ではないでしょう。この日はかつて甲子園を席巻した商業校が各地で登場しました。まずは千葉の銚子商です。春8回、夏12回の出場はいずれも千葉県勢歴代1位で、全国制覇を果たしたのも同校と習志野の両校しかありません。昭和60年以降、台頭してきた私立勢に押されながら、10年の節目毎に代表権を獲得してきたのは、古豪の面目躍如といったところでしょうか。しかし、30年目にあたる今年は東海大浦安に惜敗し、神話はついに崩れました。
神奈川では、Y校こと横浜商が初戦に快勝しました。春9回、夏7回の甲子園出場は、いずれについても神奈川県勢最多の横浜には譲るものの、合わせて16回の出場のうち、8回で8強以上に進出し、通算でも六割超の勝率を残しているところは、古豪の風格に充ち満ちています。習志野、市神港、下関商、高知商などと並ぶ「最強の市立校」の一つです。
市立の商業校といえば、もう一つ忘れてはならないのが鹿児島商です。昭和初の選手権に鹿児島から初出場して以来、県下の高校野球界を牽引してきたのが同校であり、春夏合わせて25回の甲子園出場は、樟南、鹿児島実の両校と並ぶ歴代1位の記録として今も残ります。選手権は20年前、選抜は8年前を最後に遠ざかってはいるものの、5年前には県4強入りしており、この日の初戦にも快勝しました。
なお、選抜無敗記録を保持する大宮工と観音寺中央が、いずれも初戦で散りました。既出のところでは大宮が敗退しています。

・職業校
この日は岡谷工に注目します。春夏合わせて5回の甲子園出場もさることながら、今なお記録に残る戦前の校名「岡谷蚕糸」が秀逸で、毎年注目しているチームの一つです。高専では、群馬、長岡、舞鶴、鹿児島の各校に加え、前出の府大高専、さらには全国に4校、出場校の中では3校しかない商船高専の一角、愛媛の弓削商船高専が登場しています。

★岩手大会2回戦
 山田6-4平舘
 一関修紅14-0雫石
 盛岡四8-9盛岡工
★秋田大会2回戦
 横手城南3-6能代西
 男鹿工9-10秋田
 角館3-4能代
★宮城大会3回戦
 名取北2-12x仙台三
 泉4-1東北
★群馬大会2回戦
 群馬高専6-1尾瀬(延長12回)
★埼玉大会2回戦
 深谷1-32久喜北陽
 鷲宮5-4所沢
 所沢商4-1大宮
 所沢中央2-1大宮工
★千葉大会2回戦
 成田23-1芝浦工大柏
 東海大浦安6-5銚子商
★東東京大会2回戦
 王子総合5-2大島
★西東京大会2回戦
 東京農1-12四商
★神奈川大会2回戦
 横浜商7-2横浜商大
★新潟大会2回戦
 佐渡0-3新発田中央
 栃尾0-10x長岡高専
 高田商2-3x三条東(延長15回)
 分水5-6x柏崎工
 高田2-4三条商
★長野大会2回戦
 野沢南5-7岡谷工
 佐久長聖9-0阿南
 下伊那農16-9小海
★京都大会2回戦
 京都八幡6-0舞鶴高専
 菟道0-10x洛陽工
★兵庫大会2回戦
 武庫之荘総合5-7関西学院
 川西明峰4-10兵庫
 明石清水9-2神戸
 市尼崎11-0兵庫県大付
 生野3-9滝川
★和歌山大会2回戦
 近大新宮4-5x和歌山東
 和歌山北0-9桐蔭
★岡山大会1回戦
 和気閑谷3-7東岡山工
 邑久1-8x美作
 玉野光南10-0岡山県共生
 玉野0-3岡山南
★山口大会1回戦
 響2-3x山口
 萩1-4下関工
★香川大会2回戦
 観音寺中央0-3丸亀城西
★愛媛大会1回戦
 弓削商船高専3-7松山北
★長崎大会1回戦
 大村11-1平戸
 猶興館0-6大村工
★大分大会2回戦
 大分上野丘10-8国東(延長10回)
★鹿児島大会2回戦
 古仁屋0-27川薩清修館
 鹿児島高専6-7曽於
 鹿児島商7-1国分
 奄美2-3x出水商
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