日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

この季節の楽しみ 2015(14)

2015-07-13 22:56:46 | 野球
日毎に気温が上がり、蝉も鳴き出し、いよいよ夏本番といった感のある今日この頃ですが、高校野球も今がまさに最盛期です。試合数はさらに増え、昨日は今季最多の44大会447試合が戦われました。

・遠距離
広大県を擁する東北が最盛期を迎えています。まず青森大会では、直線距離でも100kmを隔てた八戸と北五津軽、西津軽の対戦が三試合出現しました。直線距離では及ばないものの、陸奥湾を隔てた大湊対金木の対戦に加え、三沢に鶴田という、往年のプロレスを彷彿させる組み合わせも秀逸でした。岩手では引き続き県南と県北の対戦に見所が多く、直線距離で160km離れた福岡対花泉がこの日の最長です。勝った福岡は、岩手県勢として最多の選手権出場10回を誇る、北東北屈指の古豪でもあります。
東西方向が多い青森、南北方向が多い岩手に対し、縦横無尽なのがこの日から本格化した秋田大会で、平成対秋田北鷹、横手城南対大館国際、能代対由利は県土の南北方向、十和田対男鹿工は東西方向を目一杯に使った対戦でした。福島大会に登場した只見は、浜通り、中通りはもちろんのこと、会津の他地域とも隔絶された僻地の中の僻地で、例年楽しませてくれるチームの一つです。
東北以上の豊作だったのが長野で、直線距離にして170km離れた阿智対下高井農林を筆頭に、大町対阿南、蘇南対野沢北、小諸商対赤穂、伊那北対長野吉田、篠ノ井対箕輪進修など、東信、北信、中信、南信の各地域を縦横無尽に跨いだ同大会らしい組み合わせが実現しました。それ以外にも軽井沢、蓼科、穂高といった旅情を誘う地名が散らばっていたり、校庭の桜並木が印象的な松本美須々ヶ丘の名が登場したりと、全11試合にそれぞれ見所がある、実に秀逸な内容でした。ちなみに、大町対阿南は、阿南が9回に4点差を逆転してお釣りなしのサヨナラ勝ちという、劇的な一戦でもありました。これらに比べてしまえば元も子もないものの、静岡で出現した小山対新居は、東西方向に長い同県の幅一杯にまたがる、直線距離にして150kmを隔てた対戦です。

・離島
九州以東では、伊豆諸島から大島海洋国際、佐渡から羽茂、小豆島から土庄が初戦に臨み、土庄だけが初戦を突破しました。土庄と対戦した善通寺一は、かつての二高なき今なお一高を名乗る、いわば「山本昌」のような存在で、同様の例としては甲府一があります。
長崎では上五島が敗退し、残念ながら離島勢のトリを飾ることはできませんでした。しかし、全8校を通じて3勝5敗と、離島勢としてはまずまずの健闘ぶりではあります。鹿児島では喜界が敗退するも、離島から唯一シード入りした大島は順当勝ちしました。沖縄では、昨日の今日で準々決勝が戦われ、八重山は興南に屈したものの宮古が勝ち残り、翌週末の準決勝に進出します。

・接戦
本来の趣旨からは外れるものの、この日は延長15回の末に引き分けず決着した試合がありました。埼玉大会の越谷北対所沢西がそれで、所沢西が9回に2点差を追いついた後膠着状態に入り、再試合かと思われた最終回に、越谷北が一挙4点を挙げ勝負を決めるという展開でした。

・大差
20点差以上の試合は全国で5試合あり、そのうち西東京の1試合は、24点取られながらも3点取り返して一矢報いるという、大量得点差試合にしては珍しい結果でした。静岡で20点差の勝利を収めた天竜は、我が国唯一の林業高校だった旧天竜林業の後身で、統合により現校名となって以来、参戦二年目の選手権初勝利を大勝で飾ったことになります。
この日最大となる33点差の敗戦を喫したのは、字面も響きもよい地名として毎年紹介している愛知の黄柳野でした。去年の選手権でも22点差の零封負けを喫しており、これで選手権は九年続けて10点以上の大差による初戦敗退、しかもそのうち4回は20点差以上をつけられての惨敗です。あけぼの学園が勝利まであと一歩に迫り、暁星国際も久々の公式戦勝利を挙げた今季、全国最弱の座は同校の手に渡ったといって過言ではないかもしれません。ただし最弱と笑っているわけではなく、負けても負けても立ち上がる気概には敬服しています。

・伝統校
県下一の伝統校といえば、旧制中学を発祥とする県都の公立校を想像しがちなところ、実際にはそうでないところも多々あります。代表格は藩校を発祥とする城下町の高校であり、この日登場した中では、山形の米沢興譲館、神奈川の小田原、宮崎の高鍋と3校が該当します。県都最古の公立校より長い歴史を持つ伝統校としては、他にも埼玉の熊谷、静岡の韮山、長野の松本深志、和歌山の耐久と4校があります。県都にあり、なおかつ藩校発祥という由緒正しさまで持ち合わせるのが、愛知の旭丘、福井の藤島、広島の修道、そして岡山朝日、鳥取西の5校です。他にも、藩校発祥の伝統校が広島の誠之館、昨季の愛媛代表でもある小松と2校あり、古都の名門金沢泉丘も加わるなど、錚々たる名門が揃い踏みした一日でした。
既出のところでは、仙台一が仙台三との兄弟対決に敗れました。3回戦に突入した岐阜大会では、甲子園出場経験校同士による星のつぶし合いが始まり、予選皆勤記録を保持する岐阜が、中京との直接対決に敗れています。

・鳶が鷹
東日本では西武岸の母校名取北と、元ヤクルト・西武石井が出た東京学館浦安が、西日本ではそれにも勝る3校が揃い踏みしました。峰山、渋谷、廿日市の各校で、それぞれ野村克也、中村紀洋、山本浩二の出身校です。
甲子園出場経験こそないものの、四年前は県大会の決勝に進むなど、しばしば上位に進出する東京学館浦安ですが、今年は無名の東総工に足をすくわれ初戦で散りました。渋谷も負け、残る3校が次戦に進出という結果です。中村を擁し、公立校としては平成唯一の大阪代表となったのも今は昔、10戦すれば7敗か8敗はする、無名を通り越して弱小といってもよい渋谷ですが、暁星国際などと違って大敗がなく、今年のような僅差の負けがほとんどなのが特徴です。これだけ善戦していれば、勝ちと負けとが五分程度にはなりそうなものだというのに、あと一歩のところで勝ちきれないのが不思議ではあります。
峰山に敗れた山城は、岐阜と同様第1回大会から予選皆勤の記録を保持する15校のうちの一つです。昨年は府大会4強、四年前も8強入りし、今なお名門の風格漂う同校ですが、残念ながら大会創設から100年の節目を飾ることはできませんでした。

・よい地名・校名
関東で印象深い地名というと千葉が多く、前日の犢橋に続き、この日も関宿、八街、匝瑳といったところが登場しました。東海地方では、前出の黄柳野に加え、各務原の両校による直接対決が実現。朝明と書いて「あさけ」と読ませる感性も心憎いものがあります。一ひねりきいた地名と、古式ゆかしい町並みを併せ持ったところとしては、富山の八尾、兵庫の出石が双璧ではないでしょうか。
しかし、この日の白眉は何といっても京都でした。朱雀、桃山、鴨沂、嵯峨野に乙訓と、どんな由来があるのか知りたくなる字面も響きも美しい地名が揃い、これぞ京都の真骨頂と感服するこの日の試合結果です。
なお、既出のところでは、山形の谷地が敗退しています。

・古豪
前出の福岡は、昭和初期から30年代までの北東北に君臨した古豪であり、韮山は選抜初出場初優勝、なおかつそれが最初で最後の出場という、「選抜無敗」の記録を持つ8校の一角です。そして無敗記録といえば、一昨年の選手権で初出場初優勝した前橋育英が初戦で姿を消し、「選手権無敗」の記録を維持するという出来事がありました。昨秋と今春はいずれも関東大会に進出しており、二戦目で敗退した昨年の選手権も、代表権を獲得した健大高崎を相手にしてのことです。このように、一昨年の全国制覇がまぐれだったわけではなく、今季も健大高崎と双璧をなす存在と見られていただけに、初戦敗退はまさかの出来事だったのではないでしょうか。しかし、これにより無敗記録は守られました。湘南、三池工を含む史上3例しか存在しない珍記録が、どこまで保持されるかに注目です。
西日本に偏りがちな古豪の話題が、東日本でも豊富なのは前日と同じで、福島では同県から初めて選手権決勝に進出した磐城が、群馬では昭和初期から40年代までの盟主桐生が、いずれも大差で初戦を突破しました。これに対して不覚を取ったのが、韮山と同様選抜無敗記録を保持する日大桜丘です。相手は春夏各2回の甲子園出場経験を持つ法政一改め法政でした。法政といえば一高以上に名高いのが、昭和30年代に一世を風靡した法政二ですが、こちらは無名の横須賀総合を相手に不覚をとり、選手権では5年ぶりの初戦敗退に終わっています。
北陸では、選手権史上初の延長引き分け再試合を戦った富山の魚津が散る一方、戦前から昭和30年代にかけての古豪、福井の敦賀が快勝しました。東海で特筆すべきは、前出の旭丘と三重の宇治山田です。旭丘は草創期の強豪愛知一中の後身であり、第3回大会では敗者復活戦からの優勝という唯一無二の記録を残しました。第1回大会から予選皆勤記録を保持する15校の一角でもあります。その愛知一中を差し置き、第1回大会に東海から唯一出場したのが、三重四中改め現在の宇治山田です。結果としてはこれが最初で最後の全国大会となり、広島一中改め広島国泰寺と並ぶ史上2例の「最長ブランク記録」を保持して現在に至っています。同大会に出場した10校の中では、本校が最初の敗退です。大会創設100年を迎える今季、10校の主将は甲子園での開会式に招かれる予定ですが、チームとともに行けるところが果たして何校現れるでしょうか。
大会の進行が遅いこともあるのか、西日本では昨日に続き思ったほど古豪に関する話題がありません。思いつくまま挙げるとするなら、伝説の大投手沢村の母校にして、戦前と昭和後期で二度の全盛期を現出した京都商改め京都学園、分校の甲子園出場として話題を呼んだ和歌山の日高中津、中国地方の商業校の双璧岡山東商と広島商、山口に紫紺と深紅の優勝旗を持ち帰った下関商、柳井両校の揃い踏みといったところでしょうか。
既出のところとしては、岐阜第一が二戦目に勝ち、小倉は連戦をものともせずに16強へ勝ち上がりました。

・職業校
名古屋市工芸が初戦を飾り、高専では八戸、一関、木更津、津山、米子、阿南、佐世保の各校に、旧電波高専の流れを汲む仙台高専広瀬を加えた8校が登場して2勝6敗という戦績でした。

・その他
茨城大会の決勝で過去7年中5度にわたり敗退している霞ヶ浦と、昨季石川大会決勝で最終回に8点差を逆転された小松大谷が、揃って初戦を突破しました。悲劇の主人公が捲土重来を果たせるかに注目です。
静岡では、片仮名のみの珍校名として昨季も紹介したオイスカが、参戦四年目にして選手権初勝利を挙げました。新参ではありませんが、神奈川では同じく片仮名のみのアレセイアなる校名もあります。
傑作だったのは学芸大付対筑波大駒場の一戦です。両軍合わせて24点の打撃戦は点取り合戦そのものであり、ある意味全国屈指の進学校たる両校らしい戦いぶりではあります。5回裏に筑波大駒場が10点差をつけ、規定によりコールドという結果でしたが、10対0ならともかく、17対7ならその後の流れ次第でどちらに転んでもおかしくはありません。そのまま打ち合えばあと何点とっていたのでしょうか。続きを見てみたくなる一戦でした。
ところで、宮城大会では今季初の不戦勝が出ました。理由は例によって対戦相手の不祥事です。部員による盗撮が発覚し、関係者のみの出場停止で幕引きを図ろうとしたところ、わずか三日後に飲酒と喫煙まで発覚し、開幕前日に急遽辞退というお粗末さでした。昨年は不戦勝が六度、うち五度までが不祥事による辞退という有様に辟易させられたものです。今季はせめてそれ以下であってもらいたいのですが。
不祥事といえば、神戸高塚の名が今季も紙面に登場しました。この七月で圧死事件から四半世紀、当時の高校生も四十を過ぎています。遺族はどんな思いで今年の夏を迎えたのでしょうか。被害者の冥福を祈り、合掌…

★青森大会2回戦
 大湊13-1金木
 三沢商14-0鶴田
 八戸高専0-10x五所川原商
 八戸工大一4-0木造
 八戸北4-3五所川原
★岩手大会2回戦
 一関工10-1軽米
 花巻東9-0大野
 高田6-9盛岡中央
 遠野緑峰8-2一関高専
 福岡13-0花泉
★秋田大会1回戦
 平成0-5秋田北鷹
 横手城南8-3大館国際 
 十和田3-4x男鹿工
 能代6-2由利
★山形大会
・1回戦
 新庄北12-5米沢興譲館
・2回戦
 谷地1-3天童
★宮城大会2回戦
 名取北11-1宮城農
 東北不戦勝-不戦敗気仙沼向洋
 仙台高専広瀬0-13気仙沼
 仙台一1-8x仙台三
★福島大会2回戦
 磐城農0-10x磐城
 尚志4-2只見
★群馬大会2回戦
 前橋育英3-5樹徳
 榛名1-11x桐生
★埼玉大会2回戦
 熊谷2-1栄東
 越谷北6-2所沢西(延長15回)
★千葉大会
・1回戦
 流山・関宿4-5x薬園台
・2回戦
 東総工3-1東京学館浦安
 匝瑳7-0君津青葉
 成田西陵0-10x木更津高専
 八街4-1柏陵
★東東京大会2回戦
 城東9-2大島海洋国際
★西東京大会2回戦
 頴明館24-3松蔭
 法政5-3日大桜丘
 学芸大付7-17x筑波大駒場
★神奈川大会1回戦
 横浜旭陵0-17小田原
 法政二4-5横須賀総合
 アレセイア5-4霧が丘
★新潟大会1回戦
 羽茂0-13新発田商
★長野大会1回戦
 大町8-9x阿南
 蘇南0-18野沢北
 軽井沢・屋代南0-12松本深志
 小諸商10-6赤穂
 蓼科0-11須坂
 伊那北0-3長野吉田
 松本美須々ヶ丘1-5岡谷南
 穂高商12-4茅野
 篠ノ井7-3箕輪進修
 北部2-12x豊科
 阿智1-11x下高井農林
★静岡大会1回戦
 韮山12-1誠恵
 小山10-2新居
 浜北西5-7オイスカ
 浜松湖東1-21天竜
★愛知大会1回戦
 黄柳野1-34南山
 豊田北3-4x名古屋市工芸(延長10回)
 刈谷北14-3旭丘
 足助0-24豊川
★岐阜大会3回戦
 各務原0-2各務原西
 大垣北1-8x東濃実
 関商工4-5x県岐阜商(延長10回)
 岐阜第一2-7大垣西
 中京10-4岐阜
★三重大会1回戦
 宇治山田0-2桑名工
 志摩2-12x朝明
★富山大会1回戦
 高岡商11-3魚津
 滑川12-5八尾
★石川大会1回戦
 大聖寺1-4金沢泉丘
 小松大谷10-0松任
★福井大会1回戦
 敦賀11-0丸岡
 武生商1-4藤島
★京都大会1回戦
 桂6-0朱雀
 嵯峨野8-12久御山
 鴨沂5-14桃山
 京都教育大付0-11乙訓
 京都学園2-8花園
 山城1-3峰山
★大阪大会1回戦
 大阪青凌3-0渋谷
★兵庫大会1回戦
 尼崎小田6-2出石
 甲南3-7神戸高塚
★和歌山大会2回戦
 耐久3-2南部
★岡山大会1回戦
 津山高専2-13岡山理大付
 岡山朝日4-0岡山城東
★広島大会1回戦
 竹原0-10広島商
 府中1-3修道
 尾道北0-7誠之館
 油木1-8廿日市
 沼南0-32三次
★山口大会1回戦
 下関商11-0香川
 聖光1-5柳井
★鳥取大会1回戦
 鳥取工0-10x鳥取西
 米子高専1-4倉吉東
★香川大会1回戦
 土庄5-0善通寺一
★徳島大会1回戦
 阿南高専12-1つるぎ
★愛媛大会1回戦
 小松10-0南宇和
★福岡大会4回戦
 小倉8-2宗像
★長崎大会1回戦
 上五島1-2波佐見
 佐世保高専10-16諫早農
★宮崎大会1回戦
 宮崎第一6-3高鍋
★鹿児島大会2回戦
 喜界1-5薩南工
 川辺0-7x大島
★沖縄大会準々決勝
 宮古4-0具志川商
 八重山0-3興南
コメント