日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

この季節の楽しみ 2015(13)

2015-07-12 22:33:59 | 野球
直前で天気予報が上に振れ、土日とも晴天に恵まれた今週末でしたが、我が家から一歩も出ることなく、高校野球の試合結果を追いかけて終了です。これはとりもなおさず、地方大会が最盛期を迎えたということでもあります。第22日目となる昨日は一挙23大会が開幕し、南北北海道と島根、高知、宮崎以外の44大会で、今季最多の337試合が戦われました。

・遠距離
昨日紹介した青森大会、岩手大会が引き続き安定した戦いぶりで、青森では八戸水産対板柳、八戸学院光星対弘前南、岩手では久慈工対西和賀、宮古工対福岡工、紫波総合対種市といったところが白眉でした。
遠隔地同士の対戦といえば、毎年注目しているのが長野大会です。この日の開幕戦は飯田風越と明科の組み合わせとなり、初戦早々本領発揮といった感があります。これに対し、お粗末きわまりないのが新潟で、近隣のチーム同士が仲良く顔を合わせる組み合わせには、毎度のことながら辟易するしかありません。しかし、長野に次ぐ第4位の広大県ということもあり、糸魚川対小出など、ごく稀に出現する遠隔地同士の対戦にはそれなりの見応えがあります。
距離では上記に勝るとも劣らないのが、静岡大会の開幕戦となった日大三島対浜松開誠館の一戦です。しかし、数字とは裏腹にさほどの隔たりが感じられないのは、東西にのみ長くて南北方向の広がりがほとんどなく、その東西方向を新幹線と二本の高速道路が貫く静岡の地勢によります。

・離島
開幕二日目にして本格的に始動した長崎大会で、全6試合に離島勢が揃い踏みしました。離島勢の揃い踏みといえば沖縄大会ですが、あちらと同様偶然の産物ではなく、移動の負担を考慮し離島勢の試合を特定日に集中させるという配慮によるものです。様々な離島勢が居並ぶところは見応えがある反面、その多くが一日にして散ってしまうところが少々残念でもあり、この日は壱岐の2校が初戦を突破し残りは敗退という結果でした。一斉に咲いて散るところは、桜のようとでもいえばよいでしょうか。これに対して離島勢が少しずつ連日登場する鹿児島大会は、さしずめ梅か紅葉と形容するのがよさそうです。
新潟では、3校ある離島勢のうち佐渡総合が先陣を切るも、終盤の反撃及ばず惜敗に終わりました。もう一校注目するのは久賀改め周防大島です。淡路島、平戸島に天草など、橋で渡れる島は離島として扱わないのがこのblogの方針であり、本来ならば同校も離島勢の内には入りません。それにもかかわらず取り上げるのは、春夏各1回の甲子園出場経験があり、うち1回は橋が架かる前の昭和30年代だったからです。選抜を制覇した洲本の影に隠れがちではあるものの、離島勢が甲子園に出場した数少ない事例の一つです。
なお沖縄では、勝ち残っていた八重山、宮古の両校が揃って勝ち、8強進出を果たしています。

・接戦
チームごとの力量差が大きく、大差の試合が出現しやすい地方大会において、ごく稀にその日の試合が接戦ばかりになることがあります。この日の福井大会がまさにそうで、6試合中3試合が1点差、残る3試合は3点差でした。

・大差
20点差以上がついたのは全国で4試合あり、愛知大会の28点差が最大でした。勝った時習館は、第1回大会から予選皆勤を続ける15校のうちの一つであり、愛知から初めて全国大会に出場した古豪でもあります。
三重で21点差の屈辱を喫したのは昴学園です。いかにも私立のような校名ながらも県立で、やはり敗れたあけぼの学園も同じく県立です。あけぼの学園といえば、部員に欠員が出て度重なる出場辞退に追い込まれたり、出場してもその都度十数点差、場合によっては数十点差の大敗を喫してきたチームで、このblogでも全国最弱のチームの一つとしてかねてから注目してきました。それが昨年、一桁失点で7回まで戦い抜くという健闘を見せたわけなのですが、今季の戦いぶりはそれを通り越して劇的と形容するにふさわしいものでした。甲子園出場経験もある日生学園第二改め青山を相手に、中盤で一時逆転に成功したばかりか、再びリードされて迎えた9回表に3点を奪って同点とし、延長戦の末に惜しくも力尽きるという展開だったのです。悲願の勝利まであと一歩に迫りながらも及ばないところが、なんともやるせない結末ではありました。しかし、敗れたとはいえ天晴れな戦いぶりです。
この日は「122点差」の伝説を作った深浦改め木造深浦も登場しています。終わってみれば9点差の大敗ではありましたが、前半で4点を先行し、四年ぶりの初戦突破かと思わせる場面もありながら、終盤の大量失点により逆転されたもので、曲がりなりにも9回まで戦い抜いての敗戦でした。
余談ながら、この日は両軍合わせて29点、36点という試合がありました。後者においては、9回表まで両軍合わせて17回を戦い、そのうち無得点は6回だけという結果です。試合数が増えると必然的に出現する大量得点差試合に対し、両軍による壮絶な打撃戦は珍しいような気がします。

・伝統校
試合数に比例して錚々たる伝統校が揃い踏みしており、藩校を発祥とするものだけでも会津、佐倉、長岡、若狭、豊浦の5校がありました。県都の伝統校も青森、盛岡一、宇都宮、県千葉、済々黌、鶴丸と多彩です。愛知では前出の時習館に加え、岡崎、津島、一宮といった県立の伝統校が相次いで登場。寛政年間創立の豊浦にはかなわないものの、防府も明治10年創立の伝統校です。山口は出場回数に比して歴代出場校の数が多い県でもあり、この日登場した12試合24校のうち、豊浦、防府の両校を含む12校が、選抜または選手権のいずれかに出場した経験を持ちます。
伝統校の話題というと、とかく公立校に偏りがちではありますが、この日は私立の二校に注目します。片や福島の学法石川、片や香川の尽誠学園です。両校にはいくつかの共通点があります。県都最古の公立校より長い歴史を有するのが一つ。昭和50年代から高校野球界で頭角を現し、県下に一時代を築いたのが一つ。その後新興勢力に押され、往年の勢いを失っているのが一つです。このような類似性は今季においても妥当し、両校とも初戦に惜敗して姿を消しました。
既出のところとしては、水戸一と小倉が三戦目に駒を進めています。水戸一は下館一との「一高対決」を制しての3回戦進出でしたが、同じ茨城大会では土浦三と古河三の「三高対決」も実現し、茨城らしい組み合わせとなりました。

・鳶が鷹
名選手を生んだ無名校も、例年初戦で姿を消す正真正銘の無名校と、そこそこ健闘しながら甲子園には及ばないところに大別されると申しました。前者の代表格として毎年紹介してきた暁星国際は、今年も初戦敗退に終わっています。しかしながら2点差の惜敗であり、毎度のように10点以上の大差をつけられていた今までとは一味違いました。今年の春季大会で、公式戦としては8年前の夏以来となる勝利を挙げ、次戦も4点差と健闘していることからして、今季のチームには近年稀に見る実力があったのでしょう。小笠原の現役中に、夏の勝利を挙げられるかどうかに注目です。
暁星国際と双璧をなす千葉の無名校といえば、巨人軍終身名誉監督の御出身校でもある佐倉一改め佐倉ですが、ロッテ高木、近鉄大塚ら、いぶし銀の選手を輩出した横芝敬愛も捨てがたいものがあります。王に756号本塁打を配給したことで球史に残る鈴木康二朗の出身校、茨城の磯原改め磯原郷英も見逃せません。鳥取の由良育英改め鳥取中央育英は、同じく甲子園未出場ながらも、今は亡き小林繁の母校として知る人ぞ知る存在です。

・よい地名・校名
古式ゆかしい東北の地名として、東北の双璧と評してきたのは岩手の不来方に福島の勿来ですが、それを冠した二校が今季はいずれも初戦で散りました。ゆかしさではこれらに一歩譲るものの、東北らしさにかけては伊保内なども捨てがたいものがあります。
関東では千葉の犢橋、西東京の八王子桑志がこの日の双璧であり、愛知の杜若も毎年紹介している校名です。組み合わせの妙という点では、福井の足羽対丹生なども捨てがたいものがありました。既出のところでは、沖縄のコザが8強進出を目前に散っています。

・古豪
草創期から長らく西高東低だった高校野球の歴史からして、古豪の話題も西日本、とりわけ近畿に偏りがちな傾向がある中、この日注目すべきは関東です。まず茨城では、全盛期のPL学園を討ち果たしての全国制覇という伝説を持つ取手二が、今年も初戦で人知れず姿を消し、埼玉では昭和30年代から40年代前半にかけて君臨した大宮と、昭和50年代の強豪上尾が揃い踏みしました。
お約束の近畿では、一昨年29年ぶりの選手権出場を果たした箕島が初戦を突破しました。敗れた紀北工は、その年の大会で9連覇を目指した智辯和歌山を下すという殊勲の星を挙げたチームです。いわば天下餅をついたのが紀北工、その餅を座りしままに喰ったのが箕島であり、紀北工にとっては借りを返す好機でしたが、接戦の末1点差に泣くという非情の結末でした。
既出のところでは、茨城の古豪竜ヶ崎一が昨季代表の藤代に大敗し、福岡工も散る一方、第1回大会の代表校久留米商は4回戦にも勝って16強入りしています。

・職業校
まずは東海地方で揃い踏みした猿投農林、安城農林、加茂農林、四日市農芸の各校に注目します。農業高校自体特段珍しい存在ではないものの、それに一文字加えるだけでも個性が出てくるものです。次いで注目するのは富山の高岡工芸、出場校の中では名古屋市工芸、大阪工芸、高松工芸などと並ぶ数少ない芸術系の高校です。
試合数が増えると必然的に多くなるのが高専で、この日は既出の北九州を含め、東北から九州まで実に15校が登場しました。鶴岡、呉、宇部など県下二番手、三番手の都市に偏るアルファーワンのごとき立地が高専らしく、私立高専、商船高専、旧電波高専といった変わり種も散らばるなど、紙面を眺めるだけでも楽しめるこの日の試合結果でした。
既出のところでは、昭和鉄道が引き分け再試合を制し、岩倉は昨日の今日で二戦目を突破しました。

なお、我が母校は二戦目にも勝ち、あろうことか第一シードと戦うことになりました。これが漫画の世界なら、猛特訓して勝ったり、あるいは善戦したりといった展開になりそうなところ、現実には五回以降まで戦えれば上出来といったところでしょうか。しかし、当の球児たちは隙あらばと狙っているのかもしれません。ともかく健闘を祈ります…

★青森大会2回戦
 八戸水産1-8x板柳
 青森7-5青森東
 八戸学院光星12-0弘前南
 青森工14-5木造深浦
★岩手大会
・1回戦
 盛岡一3-4x久慈東(延長10回)
 不来方1-3住田
・2回戦
 久慈工8-0西和賀
 宮古工3-10x福岡工
 紫波総合8-5種市
 伊保内0-10x釜石商工
 花巻北18-11大船渡東
★山形大会1回戦
 米沢工7-6鶴岡高専
 北村山15-21鶴岡南
★福島大会2回戦
 勿来工0-10x聖光学院
 保原1-2x会津
 須賀川桐陽8-5学法石川
★茨城大会2回戦
 取手二0-1鹿島学園
 古河三8-1土浦三
 藤代12-0竜ヶ崎一
 下妻二5-2磯原郷英
 下館一4-5x水戸一
★栃木大会1回戦
 那須・那須海城0-19宇都宮
★群馬大会1回戦
 板倉0-22吉井
★埼玉大会
 上尾0-1埼玉栄
 東農大三7-10大宮
★千葉大会
 千葉商5-1佐倉
 横芝敬愛14-2我孫子二階堂
 佐倉西1-8鎌ヶ谷
 県千葉1-8x検見川
 暁星国際3-5一宮商
 柏の葉7-6犢橋
 国府台2-0佐倉東
 下総1-6佐倉南
★東東京大会
・1回戦
 荒川商5-10昭和鉄道
・2回戦
 足立東・桐ヶ丘・東京農産0-9岩倉
 海城4-3國學院
★西東京大会
・1回戦
 八王子桑志0-11松蔭
・2回戦
 青梅総合13-1東京高専
★新潟大会1回戦
 村松7-6佐渡総合
 長岡大手16-3長岡
 糸魚川2-3x小出
★長野大会1回戦
 飯田風越18-0明科
★静岡大会1回戦
 日大三島7-2浜松開誠館
★愛知大会1回戦
 津島1-2清林館
 日新1-29時習館
 猿投農林3-4半田商
 一宮2-4三好
 安城農林3-5誉
 豊田6-8岡崎
 幸田0-6杜若
★岐阜大会2回戦
 加茂農林2-12x大垣日大
★三重大会1回戦
 昴学園0-21海星
 近大高専8-0神戸
 四日市農芸3-10x木本
 あけぼの学園9-10x青山
★富山大会1回戦
 福岡28-1中央農
 富山高専本郷4-5高岡南
 富山南2-4高岡工芸
 富山高専射水0-7x高岡第一
★福井大会1回戦
 敦賀工3-4羽水
 足羽4-1丹生
 金津3-4若狭
 福井高専5-4三国
 武生1-4福井工大福井
 高志0-3勝山
★奈良大会1回戦
 奈良高専4-5x平城
★和歌山大会
・1回戦
 日高12-4和歌山高専
・2回戦
 紀北工3-4箕島
★広島大会1回戦
 宮島工7-4呉高専
 広島商船高専9-0福山商
★鳥取大会1回戦
 鳥取東3-7鳥取育英
★山口大会1回戦
 西京5-0宇部高専
 萩商工3-4x下関中等教育
 豊浦7-4下関西
 周防大島0-3岩国商
 光7-2徳山
 豊浦7-4下関西
 早鞆5-1小野田工
 柳井商工0-6防府
 大島商船高専0-7光丘
★香川大会1回戦
 香川高専高松2-9x大手前高松
 坂出4-3尽誠学園(延長10回)
★福岡大会
・3回戦
 北九州高専0-10x小倉
・4回戦
 久留米商6-2福岡工大城東
 福岡工0-5福岡大大濠
★長崎大会1回戦
 対馬6-9長崎南
 島原農業6-0五島海陽
 五島0-3川棚
 壱岐2-1諫早
 口加5-6x壱岐商
 長崎東12-2上対馬
★熊本大会1回戦
 真和13-6熊本高専熊本
 鹿本2-12x済々黌
★大分大会1回戦
 大分高専4-2大分豊府
★鹿児島大会2回戦
 指宿商2-5鶴丸
★沖縄大会3回戦
 知念3-1コザ
 美来工科3-4八重山
 中部商1-6宮古
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