裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/生命編・おしまい

2024年01月10日 09時26分27秒 | 世界のつくり

おしまい・生きる、って

最初期生命体である彼が獲得した能力は、自然界から電子を取り出すシステムだ。
この目の付けどころはすごい(目はまだないけど)。
ま、なんの食べものもないこの時代には、ジャガイモからデンプンを、肉から脂質を、なんて難しい化学(いや、むしろ手法としてはイージーなんだが)は不可能なんで、周囲に存在する元素の分子構造をいじって、最も初歩的なパズルの組み替えをするしかなかったわけだ。
とは言え、現代の高度知性を総動員しても困難極まる、こんな極限小のデストロイ&ビルドをやすやすとやってのけるとは、最初期生命も侮れないものだ。
だけど、そここそが自然特有の着想と手法なんであり、現象としての最初手なんであり、あり合わせかつ徒手空拳の生命体には、それ以外にはやりようがなかったんだ。
彼が発明したこの初手は、モダンな言い方では、呼吸というやつだ。
呼吸の役割りは、酸素や炭素を取り込んで固定する※1という二次的な利点もあるけど、究極的には、分子から電子を剥がして駆動部のスイッチングに用いる、ということに尽きる。
この作業さえ覚えれば、生きてるかぎり、システムの作動をつづけることができる。
逆に言えば、このサイクルこそが「生きる」ということなんだ。
彼は、まだまったく頼りない、微細な有機物塊だ。
だけどこの一大事件が、きみやぼくの存在へと一直線につながっていく。
彼のつくった「この世界に存在する」という概念そのものが、本当にまっすぐにきみやぼくに受け継がれてるんだよ。
まったく、信じられない奇跡だ。
ハッピー・バースデイ!生命。

おしまい

※1 もちろん、酸素が地上に現れるのは相当後の時代のことだし、太陽光の届かない深海底では光合成反応も使えない。そこで彼は、硫黄を取り込んでメタンを生成しながら炭素を固定する原始的な化学反応・・・つまり呼吸をしてたと考えられる。

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