裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

まぬけなひと

2012年02月20日 22時43分10秒 | Weblog
坊ちゃん文学賞の発表式のとき、審査員長の椎名誠さんは総評でこう切り出したんだ。
「震災があってから、文学の潮流ははっきりと変わった」って。
殊に、坊ちゃん文学賞はのんきな青春小説が受賞するべき賞だったんだけど、応募作を見るとまったく顕著に、完全に潮目が変わってて、苦悩、艱難、痛切、心の闇、精神のゆがみ、そんなこんなばっかで、とてものんきなものを選んでる場合じゃなくなっちゃった、んだってさ。
その時点で、つまり発表式がはじまって40秒くらいのとこで(受賞作発表のはるか前に)、のんきすぎるものを描いたぼくの受賞の目はなくなったのでした、ちゃんちゃん。
それきりらち外に置かれたぼくはもう、その場をたのしむことしかアタマになくなって、壇上に座ったまま、トイ面のプレスのカメラの砲列やら、審査員席やら、受賞者がトロフィーをもらう様子やらを撮影することで気をまぎらわしてたさ。
考えてみればマヌケな話で、被災地をはるばると訪れてがれきを運ぶ一方、書き物やマンガの仲間・後輩たちには「被災地を見なきゃだめ。これ以前と以後とで日本のルールが根本から変わるんだ。なにも知らん、じゃものが書けなくなるぞ」と酒を片手に口角泡を飛ばしてたわけだけど、自分がそのワナに落ち込んでたわけね。
なかなか自然体に、かつ臨機に応じて感性をそよがすというのは、できあがっちゃった感のあるこの歳になるとむずかしいね。
さて、今度はなに書こうかなあ。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園